本のない人生なんて 紀田順一郎「蔵書一代 なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか」

きのうは現役時代の友人と渋谷三魚洞でたらふく飲んだ。
五時から始めて、もう一本もう一本と五本ばかり、三匹の魚ならぬ爺、飲むのは僕ひとり。
本のない人生なんて 紀田順一郎「蔵書一代 なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか」_e0016828_11310101.jpg
すっかり世事に疎くなっている僕にあの人この人の、ここだけの話、なるほどねえ、面白いと云やあおもしれえけど、、変わり映えしねえなあ。
世の健全なる爺さんたちのものの見方、懐かしいといえば懐かしい。
帰宅して歯を磨いていたら、サエから電話で明日行ってもいい?いいとも。

起きようとしたらふらつく、そうだよ、アンだけ飲んだんだから、今頃足に来てやがる。
しまった、こんやはサエたちが来るんだ、たらふく飲むんだが、でえじょうぶか。
横になっていたら、「疲れがでたのか風邪を引いたらしく、また日を改めて」との知らせ。
がっかりしつつもホッとする。
本のない人生なんて 紀田順一郎「蔵書一代 なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか」_e0016828_11293494.jpg
1935年生まれの希代の蔵書家が3万冊を超える蔵書を一括古書市場に送り出す「永訣の朝」の感慨から
蔵書の意義とは何かという問いかけを中心に、私がささやかな蔵書持ちであった四十年間に、供給源たる出版界や古書界はどのように変質したのか、多様化する社会のなかで個人蔵書をどのように位置づけるか、さらに既存の蔵書をどのように活用すべきか、といった問題をもあわせて考えて、、
我が蔵書との半生をしみじみふりかえりつつ、面白くもほろ苦い思いも味わいつつ読んだ。
ほろ苦い、というのは
私は親しくなった(神保町の古本屋)店主から、毎年夏休みになると地方の中学校からリュックを背負った教師がやってきて、勉強のための本をどっさり買っていったという話を聞いたこともある。その教師は棚の前に立つと「ああ、勉強しなければ。勉強したいなあ」と胴振るいしながらつぶやくのが常だったという。(略)
十何回か夏が過ぎ、年中行事のように通ってきた教師も定年になったのか、姿を見せなくなった。その頃から世の中は変わった。
長野から東京に出てきてすぐに生協で校章入りのナップサックを買って、神保町に行き、手当たり次第に古本新本買い込んで寮の机の上の本棚を埋めて、胴振るいするような気になった。
もっとも、そのあとすぐに巷に出て、酔っ払って帰ってきたのだった。
いつもそう、そうしてとうとう勉強しないままに今となってしまった。
本のない人生なんて 紀田順一郎「蔵書一代 なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか」_e0016828_11280949.jpg
なんどかの転勤のたびに職場や独身寮に読んだ本を寄贈し続けてきた。
そして「いつかは」これらの本を居心地の良い部屋にずらっと並べて、ゆっくり読もうと思っていた本(百科事典や全集類も含めて)をトラック二台分(広くもない社宅のどこにあったのか)を処分したときの寂寥感と解放感。
「いつか」は来ないのだ、と腹の底から観念した永訣の朝だった。
本のない人生なんて 紀田順一郎「蔵書一代 なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか」_e0016828_11273666.jpg
名だたる蔵書家のエピソード、図書館考など、ブログ友だちの顔(拝顔したことはないのだが)を思い浮かべた。
戦時中に日比谷図書館の蔵書が学者などから買い上げた本を含めて40万冊を西多摩郡田西村の土蔵などに疎開した話には胸を打たれる。
木炭自動車ですら調達できない中で、都立一中などの学生が背負ったり大八車を押したりして悪路(雪も積もった)をときには五日もかけて運んだという。

江戸川乱歩がどのように蔵書を増やし、守り続けたかを詳しく紹介して
何よりも乱歩の蔵書は創作に劣らない”業績”である。作家の全体像を窺うには蔵書に如くものなし。その蔵書を(散逸させずに)守るということは文化を守ることであり、蔵書の第一の意義がここにある。
と書いている。
文化?どこにある?
Commented by koro49 at 2018-02-22 14:03
>saheiziさん
お誕生日おめでとうございます♪
そしてお孫ちゃんもおめでとう!!
これからどんな未来を歩むのか、想像するだけで私は楽しくなります。
もちろん、辛い事も哀しい事も含めて。
こちらはもう色々経験済みだから、後はゆっくり恐山に向かって歩むだけ。
それでも今は、本を読める目もあり時間もある。
だから大切に過ごしたいですね。


Commented by cocomerita at 2018-02-22 15:40
Ciao saheiziさん
お誕生日おめでとうございます
お元気で幸せで楽しくて美味しい一年をお過ごしください!
Commented by pallet-sorairo at 2018-02-22 16:25
学生時代に地方から出て来ていた友だちを下宿に訪ねたら、
やおらたんすの引き出しを開けて見せてくれて…
引き出しの中には本がびっしり詰まっていてびっくりしたことを思い出しました。
すっかり忘れていた懐かしい記憶、思い出させてくださってありがとうございました。
そして、
お誕生日おめでとうございます、ますますお達者で!
Commented by kogotokoubei at 2018-02-22 18:29
ハッピー、バースデー!
三魚洞は前夜祭でしたね。
福田蘭童も、空の上でから眺めて、きっと祝ってくれていたことでしょう。
Commented by ikuohasegawa at 2018-02-22 19:19
自分のルールをおしつけない 22日 すてきなおとなに育ってね!

日めくりですか 気になります。どこのかなあ。
Commented by stanislowski at 2018-02-22 19:25
にゃー、にゃー、にゃあ、の猫の日でしたか!
おたんじょうびおめでとうございます。
魚座仲間♪
Commented by saheizi-inokori at 2018-02-22 21:31
> koro49さん、ありがとう。
本を見る目も時間もある、あるうちが花、ほんとに大切に過ごしたいです。
Commented by saheizi-inokori at 2018-02-22 21:32
> cocomeritaさん、ありがとう。
You too!
Commented by saheizi-inokori at 2018-02-22 21:36
> pallet-sorairoさん、ありがとう。
地方からの同室の寮生5人同士、本棚の中身を競っていました。
ちゃんと読むわけではないのですが。
作り付けの木製のベッドと机、その上の本棚に壁際の収納棚、それだけが家具でした。
Commented by saheizi-inokori at 2018-02-22 21:38
> kogotokoubeiさん、ありがとう。
石橋エイタローも23回忌をすませたとか、おかみさん元気でしたよ。
Commented by saheizi-inokori at 2018-02-22 21:45
> ikuohasegawaさん、大野隆司のエンドレスカレンダー「軽い励まし系」。
一生涯使える、元気のない方を励ましたくて個人で作ったとあります。
カミさんが病気になった時頂いたもので、もう5年近く毎日めくっています。
表は木版画、うらはイラスト、とぼけていて楽しいです。
Commented by saheizi-inokori at 2018-02-22 21:47
> stanislowskiさん、ありがとう。
にゃーにゃ―の日より、こっちの方が古いのです。
魚座仲間、ソリャ嬉しい。
Commented at 2018-02-22 23:57
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by Takeo at 2018-02-23 01:57 x
わたしは人がいったい何のために本を読むのかがわからないのです。




Commented by j-garden-hirasato at 2018-02-23 06:15
二日酔いとは、
まだまだお元気な証拠ですね。
Commented by saheizi-inokori at 2018-02-23 09:27
> 鍵コメさん、いらっしゃいませ、ありがとう。
ああ、高円寺でしたか阿佐ヶ谷だったか、劇を見たときのことかな。
懐かしいなあ。
Commented by saheizi-inokori at 2018-02-23 09:33
> Takeoさん、え、マジすか!
あなたは原発の反省をしなければとおっしゃっていましたが、本を読まないでどうしたら過去の反省、しかも原発問題みたいな社会経済歴史物理、、いろんな分野の知識や事実を探索しなければ問題のありかも見えない問題の反省なんて、私にはとうてい考えられませんよ。
Commented by saheizi-inokori at 2018-02-23 09:35
> j-garden-hirasatoさん、それが不思議なことに、飲んでいる間飲み終わって帰宅して就寝するまでは、あまり酔った感じがしなくてぐっすり寝たのですが、朝になってふらつきました。
こんな酔い方は怖いです、加齢のせいかな。
Commented by at 2018-02-23 14:32 x
春を感じさせる酒肴ですね。いつものことながらお写真がきれいです。
Commented by saheizi-inokori at 2018-02-23 22:06
> 福さん、ぶり大根を三人に取り分けてくれる店でした。
Commented by Takeo at 2018-02-24 00:07 x
こんにちは、佐平次さん。

わたしは佐平次さんから見ればおそらく「反・知性主義者」だと思います。
なにが「事実」でなにが「真実」であるのかは、いくら学んでも到底人間には知り得ないという考えだからです。

バートランド・ラッセルは、最晩年に「生涯を掛けて研究・思考した結果、神は存在しないという結論に至った」と言っています。けれどもそれは普遍的な「事実」であり「真実」でしょうか?

わたしは不可知論者であり懐疑主義者です。真実はすべて「藪の中」=(『羅生門』の原作)だと思っています。

ただわたしは、好き嫌いの問題として、つまり絶対的に「主観的な問題」として、社会の問題と対峙する以外にないのです。

Commented by urontei at 2018-02-24 07:15
近ごろは本も高くなったので、買うのはもっぱら文庫ばかりですが、本屋さんが好きで、欲しい本がなくても外に出たときはとりあえず本屋をのぞきます。
そこで 「勉強したい」 なんて思ったことは、一度もありませんが (^^;
Commented by saheizi-inokori at 2018-02-24 10:06
> Takeoさん、私もデータや知識がすべてを明らかにするとは思っていません。
人間は謙虚でなくちゃとも思います。
でも本を読むのが好きで、そこに書いてあることをすぐに信じてしまう、私の方が知性がないですね^^。
Commented by saheizi-inokori at 2018-02-24 10:18
> uronteiさん、小さな本屋がいいですね。
気難しそうなオジサンが睨んでいるような。
そういう本屋がどんどん無くなってしまい、散歩の楽しみが減りました。
Commented by Takeo at 2018-02-25 00:15 x
佐平次さん、ご気分はいかがですか?
体調不良はわたしのコメントのせいかと気を揉んでおります(苦笑)

とはいえ、いま、この国に生きて、全く屈託のない毎日を送れるということがそもそも普通じゃないですよ。

朝日の記事、ひどいですね。この調子じゃいざ戦争という時になると「見よ我が国の底力!」とか書きそうですね。

個々人はともかく、現在マスコミはオリンピックの名のもとに挙国一致ですね。誰かが言った「およそオリンピックと戦争には反対したことのない我が国のマスコミ・・・」という言葉が思い出されます。

今日のような投稿、個人的には好きです^^

Commented by saheizi-inokori at 2018-02-25 10:49
> Takeoさん、ご心配なく、体調不良でもないですし。
オリンピックはそろそろやれる国が亡くなりそうですね。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by saheizi-inokori | 2018-02-22 13:01 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(26)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31