孫子のためにも安らかに逝こう 里見清一「医者の逆説」

田中龍作のブログ【ロヒンギャ難民キャンプ発】 虐殺の村 「赤ん坊たちは生きたまま炎に放り込まれた」は、凄まじい。
そんな地獄から命からがら逃げてきた難民をしゃにむに帰還させても悲劇は終わらないだろう。
ミャンマー政府を支援して早期の強制送還をしようとする日本政府(河野外相)はどういう成算をもっているのだろうか。
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久しぶりに夕方の散歩、月や残り雪を眺めながら、いつものカフエに行く。
8歳くらいの女の子を連れたママが入って来て、何食べたい?チーズケーキ、たいした感動もなく答える子、そんなにカロリー摂らなくても十分にお肥り(ママも)になっている。
ココアも飲みながら、ママが話す、その話がパパの家系がいかにセレブかということ、おじさんが音楽評論家だから、音楽の先生がみんなにも親切なんだよ、悪く書かれたくないもんね、などと大きな声で話すからイライラして本に集中できないのが残念だった。
母や姉妹が犯されて殺され、自分は火の中に放り込まれる子と、妙にマセタ会話をしながら当然のごとくに淡々とケーキを食う同じ年頃の日本の子。
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散歩に出る前に読み終わった、本名國頭英夫、1961年生まれ、国立がんセンター中央病院、日赤医療センター化学療法科部長を経て、杏林大学教授の、医者の「正論」。

新しい薬が開発されると、いままで諦めていた患者や家族は希望を持つ。
新しい薬がなくとも、できるだけのことをして(あげて)欲しいという人は多い。
それまで親不孝だった人に多い、せめてもの罪滅ぼしか、自分や世間への言い訳か。
でも新薬(ex・オプジーボ)であってもほんとに効き目があって「治る」ことは少ない。
うまくいって癌の進行を抑えられても治療の副作用や合併症で本人のQOLは悪化し介護する家族の負担が長く続くことも多い。
その医療費は莫大なものになって、保険適用、高額療養費制度となれば、本人負担はわずかで現役世代の払う保険料と税金が負担する。
オプジーポは、薬価が引き下げられたが年間1750万円かかる。
肺癌患者だけで単純計算しても、トータルで数千億もしくは兆の単位になる。
このままのやり方を続けると国民保険制度は破たんする。
そこで筆者が提起したのは
75歳以上の高齢者へは高額薬剤による延命治療を差し控え、その代わり、対症療法・緩和医療を充実させるべきだ。
僕はまもなく75歳になるが、賛成だ。
60歳のころ、肝臓がんになったかと思い(そうではなかった)、ホスピス入院を考えたくらいだから、それから15年、十分に生かしてもらったと思う。
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ところが、この提案を含めた原稿を依頼した読売は「異見が出かねない」との理由で訂正を要求、受け入れなかったので、結局掲載されなかった。

この話から、延命治療を続けることとQOL(生活の質)の維持・レベルの比較・測定について、その考え方、難しさなどを様々な角度から考える。
「他人事」感覚が支配する無責任な・紋切り型のメデイア、「嫌われたくない」人たちの同調圧力、きれいごと「正論」の限界、二代(今となっては三代)続けてダメな知事を選んだバカな東京都民が「一票の差」というバカさ、メデイアを始めブラックな超過勤務は糺せない、、など、世間のお噂に鋭くも面白おかしく切りつける。
山本夏彦、佐伯啓思の教えがときどき顔を出す。
落語がお好きらしい、志ん朝が好きで「イリュージョン」などと言い出した談志を批判するのは我が党の士だ。

三笠宮寛仁が聖路加の集中治療室で100歳で亡くなった時に駆けつけた日野原重明院長が「本当に最後まで頑張られた」とコメントしたのを朝日新聞がそのまま?掲載した。
筆者は「最後まで頑張ったあげくに集中治療室で死ぬ」ことがいかに悲惨(本人にも家族にも)であるかを詳述し、日野原さんや朝日の常識を疑う。
僕はさいごまで頑張りたくもないし、集中治療室にはいるなんざまっぴらご免だ。
あ、外科以外で救急車で運ばれるのも、ね。

新潮選書

Commented by byogakudo at 2018-01-28 18:17
わたしも即、ホスピスを考えます。家族の看とりは、1ヶ月が
精神的な限度ですし。
Commented by cocomerita at 2018-01-28 18:39
Ciao saheiziさん
田中龍作さんのサイト見ました
人間ってどこまで残虐になれるのでしょうかね
世の中は 非人道的と呼ぶにはあっさり過ぎて全然充分じゃあない、理不尽な暴力であふれています
そしておばかで浅はかで卑怯だからその分狡い日本の政府は 卑怯者の典型的な行為を国政で行使する
つまり 強いものにつけ。
強いものについていた方が分け前に与れると言う実に情けない彼らの本性は、息をするに等しく きっと彼ら自身でも認識できないのだろうが、
安倍さんが息をするように嘘をつくのと同じく

私はまっぴらごめんだけど
集中治療室で 看護され安心していたい という人もいるかもしれないし、それならそれでもいいのです
でも、新聞も医者も 患者が自由な選択ができるべく、選択できる全ての可能性は 等しく公にするべきだと思います
異論のない社会ほど恐ろしいものはない、それは洗脳 誘導の社会ですからね
医者はそういう意味で 「長生きしたければ、、」という脅しを言外に含ませて 高額治療を薦めるべきではないと、それはこれで先祖は救われますよと高額な壺を売りつける悪質なセールスマンとなんら変わりがないと思います
Commented by そらぽん at 2018-01-28 18:55 x
日野原某のコメントは ブラックユーモアの域ですね
皇室は国民保険に加入できず、治療費実費で家計は火の車と
雑誌の対談で、三笠ヒゲ殿下が語っていたのを思い出しました。
Commented by sweetmitsuki at 2018-01-28 21:04
このままでは国民保険制度が破たんするから75歳以上の後期高齢者には高額な薬剤の投与を差し控えるべきなんですか。
それは世間から異見がでるでしょうから、読売は掲載を控えて当然だと思います。
少なくとも私は反対です。
私は100歳まで生きたいです。
Commented by saheizi-inokori at 2018-01-28 21:24
> byogakudoさん、私は亡妻を最後はホスピスで一か月一緒に暮らしました(同じ病室で)。
それがなかったら私が狂ったかもしれません、癌研の治療のひどかったこと。
Commented by saheizi-inokori at 2018-01-28 21:28
> cocomeritaさん、医師の側にも問題はあるかもしれないけれど、何でもいいから手を尽してくれという患者または家族にも問題がありますね。
75歳以上の高額な延命治療は保険適用や高額医療の制度の対象にしないというのはいいことだと思います。
Commented by saheizi-inokori at 2018-01-28 21:31
> そらぽんさん、皇室には人権がないというのはそこにもあったのですね。
家で家族に囲まれて最期を過ごすことが皇室なるがゆえに許されず集中治療室で苦しみながら死んでいくというのもヒドイ噺です。
Commented by saheizi-inokori at 2018-01-28 21:45
> sweetmitsukiさん、高額な延命治療に対する保険適用を控えるということです。
異見があるならそれを掲載するなり読売自体の意見を載せればいいのであって、根っこから載せないのは、屁みたいな異見ばかりを載せたり書いている主要メデイアらしいですね。
長生きしたい人は多いでしょうが、その(ダメ元みたいな)医療費をあとの世代の人の負担に任せ、保険制度が破たんしてもいいのかといえば私はそれに反対です。
どうしても高額治療を受けたい人は自費負担をする、でいいでしょう。
75歳で区切るのがいいのか、ほかに条件を付けた方が(例外を認める)いいのか、それこそ意見があるならそれを掲載するのが読売の仕事、異見が予想されるから掲載しないというのは言論の自由を標榜する資格なしです(と里見も怒っています)。
最大の問題は里見の意見をきちんと議論しないと国家財政も破たんするのではないでしょうか。
Commented by doremi730 at 2018-01-28 23:24
主人のようにポックリ逝くにはどうしたらいいのだろう、、
いい人でいてはいけないというのだけは解かる(^^;
Commented by saheizi-inokori at 2018-01-29 09:41
> doremi730さん、?悪い人はウマく逝ける?
Commented by sheri-sheri at 2018-01-29 17:07
さへいじさんの御意見に共感します。人にはそれぞれお考えがあり、死と向き合う姿勢も様々ですね。ロヒンジャの人々の苦しみ,慟哭。対して、人の痛みが分からない、そして居住まいを正すという美意識みたいなものが持ち合わせていない傲慢な?人々も実際にいるというカフェでの情景。私も人様に言える立場ではありませんが、少しでも居住まいを正せたらと思います。
Commented by saheizi-inokori at 2018-01-29 23:15
> sheri-sheriさん、ありがとう。
相槌を打っていただけると嬉しい年頃になりました^^。
Commented by sweetmitsuki at 2018-01-30 04:56
誤解のないように今一度確認させていただきたいのですけど、私は自分が長生きするために保険制度のツケを次世代に負わせてもよいといってるのではありません。
高齢者の命を天秤にかけるような議論は、言論の自由という枠内に収まるものではないと思うのです。
財源がないというなら、余所から持ってくればいいじゃないですか。
辺野古の米軍基地、対DPRK迎撃ミサイル、もんじゅ・・・
百害あって一利ないことに莫大な国家予算がつぎ込まれているのですから、それらをなくせば解決する問題ではないのですか。
本を読まないことにはこれ以上のコメントをするわけにもいかないので、一読の後、再びコメントさせていただきます。
Commented by saheizi-inokori at 2018-01-30 09:42
> sweetmitsukiさん、そうしてください。
Commented by ikuohasegawa at 2018-01-30 16:33
まっぴらご免という意思を尊重してもらいたいですから、紙に認めております。
Commented by saheizi-inokori at 2018-01-30 18:16
> ikuohasegawaさん、紙ねぇ、そろそろ書かにゃとは思いつつ先延ばしにしてます。
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by saheizi-inokori | 2018-01-28 13:16 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(16)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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