詩のある日々 映画「パターソン」

奥会津に180cmの雪がつもり、インフルエンザが猛威を振るい、セーヌ川があふれそうになり人も鼠も恐慌をきたし、トランプがグッゲンハイム美術館からゴッホの絵の貸し出しを断られて代わりに黄金の便器を貸してやろうと言われ、ロヒンギャの難民は早期帰還に怯え・反対し、キムヨナは南北選手の統一行進にスポーツの力を感じた(10歳の時)と語り、近所の家が道の真ん中に雪をのけたから凍ってしまってみんな難儀をしたり、、いろんなことがあるけれど、僕は映画を見に行った。
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40人で一杯になる映画館アップリンク、座椅子やデッキチエアにゆったり座って古い映画をみた。



ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ、ぼくは知らなかった詩人を主人公は愛し、まるでその詩のような暮らしを送る。
大好きなマッチ箱、もしいなくなったら自分で心をズタズタに引き裂いてしまうだろうような愛しい妻、サンチの親友になれそうな賢くいたずら好きなブルドッグ、バスの運転をしながら聞く乗客たちの会話、公園の瀧を前にベンチに座って食う妻の作った日替わり写真入りの弁当、黒人のマスターとパターソン出身のルイ・コステロなどを語り別れ話で悲しみ騒ぐ常連の二人のことを少し心配しながら飲む一杯だけのビール、職場の同僚の毎日尽きることのない愚痴、、、そして毎日少しづつ詩を作り秘密のノートに丁寧に書き留める。
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リフレイン、しかし(気をつけていたら)驚きと奇蹟に満ちた繰り返しだ。
月曜日の出がけに寝ぼけ眼の妻が語った双子が、その後の一週間にいったい何組出てくるのだろう。
マーケットで売れたら商売ができるとたくさんのケーキを作り、260ドルもの売り上げがあったから、ご褒美にと古い映画館をねだり「白黒の映画は好き」と喜ぶ妻は200ドルでギター(教則本、取り換え用の絃などがついている)を買ってもらいウエスタン歌手の夢もある。
毎日、カーテンや洋服、壁などをモノトーンに塗ったり切ったり纏ったり、シンプルだけどキヌアを使ったり新しいパイを考案して食事を(パターソンが喜ぶのを)楽しみ、、なんといってもパターソンの詩をリスペクト、愛している、、ニンフのような女だ。
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はじめのうちは退屈だったが、その繰り返しの中に現れる模様の変化(川の流れや寄せては退く波をみるようだ)に惹きつけられて終わってみるとしみじみと感動が湧き上がってきた。
さいごに傷心のパターソンの前にウイリアムの詩集(日本語と英語)をもって現れる日本人詩人こそ、ミューズの遣わした天使、ちょっと違和感はあるけれど。
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金時鐘の詩人としての厳しい生き方を読み書いたら、こういう詩人に会えた。
こういう生き方も詩、会えたことも詩。
Commented by ginsuisen at 2018-01-27 13:57 x
パターソン。いけたのですね。よかった!ジムジャーミッシュの感性。いや~。なんども見直したくなる映画だなーです。
あの白黒に染まっていくマフィンの数々、インテリア。
そうそう。ふくよかさんにおすすめしたけど見に行ったかな~。
私的には、最後の永瀬はカットしたかったけど・・
永瀬・・ジムと仲良しで一生懸命、宣伝しているから、ま、OKとしました。
Commented by saheizi-inokori at 2018-01-27 14:25
ginsuisenさん、ことしは見る映画があたり続けです。あの映画館の雰囲気にもマッチしていました。
永瀬、たしかに、天使とでもしないと収まりが悪い。でも違和感は消えない、あはっ、ですね。
Commented by urontei at 2018-01-28 06:17
僕も長瀬の突然の登場には違和感を感じた一人です。
ただ、そう感じるのは僕らが日本人だからかもしれなくて、欧米の人たちからすると、あの茫洋とした存在感に東洋的な 「何か」 を感じるのかもしれない・・・
などと、勝手に深読みをして楽しんでおります。(笑)
Commented by j-garden-hirasato at 2018-01-28 08:31
東京でも、
まだまだ雪が残っていますね。
大寒波、恐るべし、です。
Commented by k_hankichi at 2018-01-28 09:34
「パターソン」、これは観たい映画です。アメリカの少しうらぶれた街。郷愁をそそります。
Commented by saheizi-inokori at 2018-01-28 09:51
> uronteiさん、そうそう、東洋の神秘みたいな、ね。
それなら老人の方がいいのかも。
監督と永瀬の縁らしいですね。
Commented by saheizi-inokori at 2018-01-28 09:52
> j-garden-hirasatoさん、日の当たらない・車が通らない裏道は滑って怖いです。
Commented by saheizi-inokori at 2018-01-28 09:53
> k_hankichiさん、去年の夏ごろの封切ですから、そろそろ見られなくなりますよ。
Commented by rinrin1345 at 2018-01-28 10:18
家に籠っていないでそういう選択もありですね。詩と言えばNHKのカルチャーラジオ、文学の世界(毎週木曜日)1月から3月まで「詩と出会う、詩と生きるです」ネットでも聞けます。賢治も光太郎も出るようです。最近は聞き逃しで選んで聞いています。
Commented by kotoko_s at 2018-01-28 12:51
これも観たい映画ですね。いいなあ。
ジム・ジャームッシュ、大好きなんです。
毎冬、雪の落ち着く頃、「この冬もがんばったで賞」ということで郡山へ映画を観に行くのですが、その頃にはとうに終っていますね。

奥会津の雪もどうやらひと休みのようです。
今朝は思わぬ青空が広がり、とてもきれいです。
いらっしゃるなら今です(笑)
Commented by saheizi-inokori at 2018-01-28 13:21
> rinrin1345さん、その時間、夜は食事中、朝はFMで音楽を聴きながらブログを読んだり書いたりしてます。
来週、視聴してみましょう、ありがとう。
Commented by saheizi-inokori at 2018-01-28 13:25
> kotoko_sさん、去年の夏に封切られたので、私の見た映画館は見逃した古い映画などを上映するところです。
高井戸、飯田橋にもそんな映画館があったけど。
ああ、行きたいなあ、でも今降ってなくても、、この季節は本選沿いが安全なのかな。
Commented by hanamomo08 at 2018-01-29 10:27
>近所の家が道の真ん中に雪をのけたから凍ってしまってみんな難儀をした
東京のあのくらいの雪でもそういう方がいることに呆れました。
こちらにもいるんですよね。
自分の屋敷内だけきれいになればそれでいい・・・・。

我が家は隣もお向かいも高齢の人のお住まいです。
夫はまだ若い方なのでそれとなく雪かきボランティアをしているようです。
でも二本後ろの通りのお宅の近所ではそれにお礼としてお金を上げるという変なことが始まってご近所仲たがいしているとか・・・。
そんなこと必要ないんですよ、ありがとうと言うだけで十分なんですから。

この映画館魅力的ですね。
ここで見るのは古い映画がいいなあ~。
Commented by sheri-sheri at 2018-01-29 17:15
素敵なストーリーの映画ですね。世の中、不条理なことばかり起きるので、もうこの頃はメルヘンのような世界に、に引っ込みがちです。
Commented by saheizi-inokori at 2018-01-29 23:10
> hanamomo08さん、屋敷内というのではなくて家の周りというほどのことです。
もしかするとすぐに溶けると思っていたのかもしれないです。
やっと今日溶けました。
人の親切をお金で返そうとするっていやですね。
映画館、すっかり気に入って今日も行ってきました。
休憩室で映画を見るような気分也。

Commented by saheizi-inokori at 2018-01-29 23:17
> sheri-sheriさん、ストーリーってのがあるようなないような、それがまたいいのでした。
パターソンのように詩を感じて生きていきたいと思います。
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by saheizi-inokori | 2018-01-27 11:12 | 映画 | Trackback | Comments(16)

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