過去が蘇る

２０年前にガン病棟に見舞って以来の再会だった。
余命半年と言われたその後も再発・転移を繰り返し、目下心臓の脇に出来た大きな癌を抗がん剤で治療中だというのに僕たち夫妻より明るく元気だった。
２０年間、ガンとの闘病よりもどう生活していくかの戦いの方が大変だった、借金まみれのご主人を支えた由。
それがかえってよかったのかもしれないと笑う。

治療中にいったん丸坊主になったのに、また生えてきたときれいな白髪、中ジョッキを10杯飲んでカラオケで大きな声で歌って帰って行った。
初めて会ったのは50年前、会津へ単身赴任の僕が、しょっちゅう入り浸っては酒を飲んでいた職場の男の家にいた少女が10歳、僕が25歳、それから会えばいつも「おじちゃん」、昨日も「おじちゃん」。
なんで20年も逢わずにいたのか、話は尽きずあっという間に5時間が過ぎた、ほんとにステージ４なのか。

10歳といえばはあちゃんと同じ年、彼もこんなにいろいろ観察し覚えているのだろうか。
その頃のことからその後の30年間の彼女一家と我が家一家の付き合いのいろいろを話してくれた。
え？そんなことあったの！？の連続。
年を取ると最近のことは忘れるが遠い過去のことを覚えている、なんてデタラメ、みんな忘れてた。
色鮮やかに過去が蘇った。
それだけ自分の人生が膨らんだような気がする。

近く、いっしょに会津に行ってお父さんに会おうと約束した。
会うまで、どんなかと心配していたのに、あまりの元気で圧倒されほっと一安心もしたが、別れてみると、やはり心配だ。
あの頃、彼女の小学校に入ったばかりだった弟は、日曜日に「おじちゃん遊ぼ」とやって来て、竹ひごで凧を作ってやって一緒に遊んだ。
駒沢公園で凧あげを見て、そのことを思い出したばかりだった。
過去を蘇らせる。
こっちの映画は、利休が作っていない利休茶碗を作る。
面白かった。
フエイクの過去、これも歴史修正か。
井伏鱒二にも『珍品堂主人』なんてのがあったなあ、映画を見たかどうか忘れた。
追記（１９日）、テレビを見てたら、よく似た事件、「何でも鑑定団」に出された窯変天目茶碗を国宝級・２５００万円だと鑑定したら中国のオバサンが、あれは私が作ったものよ、あの模様は窯の中で出来たんじゃなくて私が描いたもの、値段も２５００円だと名乗り出た。
笑っちゃうなア。