幽霊と友達になれ 上原正三「キジムナーkids」

今夜から天気が崩れるという、暖かな小春日和、ドイツでは「老婦人の夏」と(ドイツ語で)いうらしい。
今の老婦人て、いくつからだろう。
そう言えば僕は老人であることに間違いないのだが、老人を見ると自分より齢をとっているように見える・感じる、そう見える人を老人と感じるのかもしれない。
ついいたわり口調になって、「お若いですねえ」かなんか愛想のひとつも云うつもりで齢を尋ねると年下だったりすることもままある。
他の人もみんな自分は若いと思っているのだろうか。
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散髪してきたサンチ、こいつももう老犬なのだろう(9歳7カ月)、甘えっ子の老人。
自分より若い犬だとなついていく、ぼくにはどっちが若いのか見分けがつかないのに。
若い娘が好きなのは同じだなあ。
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南部の激戦地には一坪に六発の砲弾が撃ち込まれた計算になるという沖縄の地上戦。
修羅地獄を生き抜いた子供もいる。
目の前で母や姉が「死んで辱めをうけてはならない」と父に殺されて、自分も殺されそうになっていやがったために父が許して自分は自害、それから口が利けなくなった子供。
兵隊たちの食糧を確保するために口減らしで本土に疎開させられたために「ひめゆり学徒」として死なずに済み、戦後死んだ友だちの幽霊に会う娘もいる。

幽霊を見て震えていたら、お父さんが「友達になりなさい、自分も幽霊にあった、この戦争で10万人の民間人が死んだのだ」と諭してくれてから怖くなくなった。
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生き抜いても食うものがないから、アダンでもソテツでも何でも工夫して口に入れる。
蝉はうまい。
それでもいつも腹の虫が泣いている。
「ギブミー」とアメリカーから菓子をねだるのは親に叱られるから、アメリカ兵の車や基地にしのびこんで「戦果」をあげようとする。
ハブがうじゃうじゃいる「ハブ谷」にはアメリカーがゴミ(ハダカの女も!)を捨てるので戦果を探しに行きたいがハブが怖い。
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ぼやぼやしてたら食っていけない。
親も芋を作り、鶏やヤギや兎を飼う。
こうなったら警察署長の父より部下のホンカンのたくましい知恵が頼りだ。
女性たちがレイプされても犯人を逮捕できずに歯噛みしている父。

死んでしまった人のことを考えると悲しいけれど、まずこの空腹をなんとかしなくてはならない。
悪ガキ同志でチームを組んで生きて行く。
食うだけじゃない、大きな夢もある、孤児院を作るんだ、だから密輸でもパンパンでも何でもやる。
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ところどころ、自分の幼い頃を思い出しながら一気読み。
沖縄の言葉でしゃべる子供たち、今頃は80歳?
沖縄の80歳は若かろうて。
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キジムナー、妖精のこと、臆病者の主人公はキジムナーを信じている。
御嶽のガジュマルの上にキジムナーハウスを作って戦利品を蓄え食う。
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現代書館
Commented by sheri-sheri at 2017-11-29 15:45
今日は。さへいじさん。まったくです。同じことがあります。私も知能指数や能年齢は別として、なんだか年をとっているという自覚があまりありません。それどころか、年々、女学生だった頃の精神年齢に戻って行っているような気がします。不思議です。鏡をみればそれは、もう立派に年相応です。なぜ、こんなになってしまったか?まず、子供を育て上げ、責任から解放されて以来、自分を生きようとどこかで決意したこと。ちょっとくらいおめでたくていいのだと、手綱のようなものを離してしまったのではないかと。でも今の気分はいいです。自分は若いつもり。人様に迷惑をおかけしなければ、ちょっと地球の片隅に置いてほしい・・それくらいです。長々すみません。キジムナーkids・・・ともすれば、忘れそうになる戦争、そして地獄のような沖縄戦。まぎれもない本当にあった事実ですね。そして普通の市民がこういう目にあった・・・しかと胸に刻まなければなりませんね。・・サンチちゃんが可愛いです。       
Commented by HOOP at 2017-11-29 20:51
今日の国会答弁、麻生太郎が老人の定義が如何に変わったかを話していた。

55歳の老婆が車に轢かれ、という新聞の見出しを見咎めたのは当時の朝日新聞社主の妻55歳であり、以後その表現は65歳以上に使うようにしたのだったと。言いたいことは、55歳はもはや老婆ではない、と定義し直したのは政府ではなく朝日新聞であったと言いたいのだ。

そんな答弁を許す質問者もどうかしていると思った。
Commented by saheizi-inokori at 2017-11-29 22:55
> sheri-sheriさん、なるほど、そういうことかな。
私の場合はいつまでも精神年齢が肉体年齢相応に熟していないせいかとも思ったりしてました。
いつまで経っても幼稚なんです。

この本、学校で読ませたらいいのにと思います。
中学以上なら面白がって読むんじゃないかな。
Commented by saheizi-inokori at 2017-11-29 22:57
> HOOPさん、世間話?
意味が分からない、韜晦ですかね。
Commented by sweetmitsuki at 2017-11-29 23:02
こんな話をすると変な人だと思われてしまうので誰にも離したことがないのですが、私も幽霊に憑かれたことがあります。
近所に中島飛行機の工場跡があって、そこは今はきれいなショッピングモールになっているのですけど、その片隅に記念碑のようなものがあって、そこに触れてしまったのがいけなかったみたいです。
幽霊というより、空襲で亡くなった人の怨念が凝り固まったようなもので、別に怖くはないのですが変な災いを招かれても困るのでお祓いする方法を探したのですが、幽霊のいる部屋は泥棒に遭わないから祓わないほうがいいという意見もあってそのままにしてあります。
そういうわけなので、今も幽霊に憑かれたままで、今も気配を感じることがあります。
Commented by saheizi-inokori at 2017-11-29 23:15
> sweetmitsukiさん、妻が亡くった時は誰でもいいから幽霊が出てこないか、そうしたらあっちの話もきくことができるかと思ったことがありました。
お化け屋敷には入ったことはないのですが、びっくりさせられるのがいやだなあ。
Commented by j-garden-hirasato at 2017-11-30 05:53
自分はまだ50代ですが、
テレビで見る同じ歳の人に比べれば、
見た目若く見える、
とカミさんには言われます。
中身が子供のままなんだと思っています。
Commented by HOOP at 2017-11-30 08:31
私も説明不足でしたね。つまり高齢化が進行していて、年を取っても働かなければならなくなってきた。高齢者の定義も変わってきているが、「政府はその時その時の都合で定義を変えているのではないか」という指摘に対して、政府の都合というよりも時代の要請であるという反論を麻生はしたつもりなのでしょう。
Commented by haru_rara at 2017-11-30 08:51
この本、地元の図書館に入れてもらって読みたいです。
雪になると街まで行けなくなるので。
地元の若いひとたちも読めるといいなあ。

知らないことがいっぱいあって、教えてもらえる喜びに素直に感動できるような若々しいおばあちゃんになっていきたい。
Commented by saheizi-inokori at 2017-11-30 09:55
> j-garden-hirasatoさん、そうですね、みんな老成しているように、自分が子供っぽいように感じることも多いです。
じっくり話してみると、相手も迷い多き老人であることがわかってほっとすることもあります^^。
Commented by saheizi-inokori at 2017-11-30 09:57
> HOOPさん、しかも、あの朝日の社長の妻が(総理の妻ならぬ)言った言葉に左右されtれいるじゃないか、というようなカラカイでしょうか。
Commented by saheizi-inokori at 2017-11-30 09:59
> haru_raraさん、年を重ねるほど、知らないことの多さに気づきます。
それが齢をとるということなんかも知れないです。
知ることの喜びもいや増さります。
Commented by HOOP at 2017-11-30 12:56
>カラカイでしょうか
そうなりますね。
Commented by sheri-sheri at 2017-11-30 16:26
さへいじさん、おんなじです。私の場合も精神年齢が肉体についていきません。いつまでたっても幼稚なのです。そこはさへいじさんと一緒ですが、違いは知能指数と頭。聡明で知的なさせへいじさんのブログにお邪魔させていただいて、いつも光栄だなぁとおもっているんですよ。それと、両親を失った時、本気で幻でもいいから現れて欲しいと思っていました。今は、いつもそばにいてくれていて、なにかいいことがあると、また助けてくれたんだと思い、ことあるごとにありがとうと言ってます。
Commented by cocomerita at 2017-11-30 17:30
Ciao saheiziさん
キジムナーのある世界は優しいから好きです
昔の日本人が慎み深くそしてやさしかったのは、そういう目に見えないものたちにも心をかけたからじゃあないかと思うのです
沖縄の方達にはそういうやさしさがありますよね
イタリアにはキジムナーはありません
だから時々 この国の空気のカラっとし過ぎてるところに物足りなさを感じます
人間は肉体だけで生きてるわけではないのですから、キジムナーの存在はむしろ普通のことで
ちなみに私は未だにキジムナーの世界に住んでおり、うちにもいろいろいらっしゃったりしますから、仲良く暮らしています
そういう世界がある事で、私はこのなんだか目まぐるしく みんながキリキリしててわけのわかんない世界の中でホッと息抜きします
Commented by saheizi-inokori at 2017-11-30 23:49
> sheri-sheriさん、こちらこそ、しょっちゅう来ていただいて光栄です。
幼くても年は取るんだからしょうがないですね、受け入れて生きていきましょう。
Commented by saheizi-inokori at 2017-11-30 23:51
> cocomeritaさん、宮沢賢治や柳田國男などの世界ですね。
私はまだキムジナ―を見たことはないのです。
信じないと姿を見せないのかな。
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by saheizi-inokori | 2017-11-29 11:31 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(17)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori