9・11に

30年も前の今時分、秋風が爽やかな白川郷の近くで泊まったことがある。
なぜか当時はやっていた赤い小さな車が野道のあちこちを走っているのを、赤とんぼみたいだと思った。
神社に多くの幟が上がっていてお祭りだった。

夕飯をすませると布団を敷きに来てくれたおばさんが、遠くから聞こえるお囃子の音を「あれが聞こえると悲しくなる」という。
家を出ていった息子がどうしているかと、数年前まではお祭りには帰ってきたのに、と。
いぜんはお囃子の音が聞こえてくるともうすぐ帰って来ると楽しみだった、と。
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お祭りに帰るべき故郷を持っている人は幸いだ。
まして首を長くして待っていてくれる親たちがいる人はその幸せに感謝しなければならない。
待てども来ない子どもを思って切ない親たちのことを思いやらなければならない。
反省するよ、ぼくは。
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引揚者用のバラックに住んでいた僕たちには自前のお祭りがなかった。
いつも近所の部落の祭りの音を聞くだけ、たまにどこかの神社に連れて行ってもらうと嬉しかった。
今のようにいろいろ屋台があったろうか、綿菓子を食べたことがあるなあ。
アセチレンガスの臭い。

社会人になって、東京で育った、たとえば深川の男が祭りを大事にする気持ちが自分のアイデンティティを守るがごとくであることに驚いた。
今、桜新町で「はじめ」やクリーニング屋の大将たちがそうであっても、もう驚かない。

今の都会の若者たちにお祭りに参加する人が増えているようだ。
神輿をかつげると聞くとどこにでも出かけていく娘たち。

この人たちや多くの子どもたちが祭りを喜ぶ気持ちは、遊園地に行く楽しみと似たものかもしれない。
幼いぼくと同じだ。
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テロや戦争(=テロ)は、故郷を破壊し、親も帰るべき息子や娘たちも殺す。

Commented by ikuohasegawa at 2017-09-11 10:51
ぼくも反省しております。
毎年欠かさなかったとはいえ、夏休みと正月の数日しか帰省しませんでしたから。
Commented by jarippe at 2017-09-11 14:33
今日は 9.11でしたねー
毎月の11日 
あの地震からの年月の意識の方がやはり大きいです
Commented by テイク25 at 2017-09-11 14:35 x
図書館で借りて読み始めた「思想としての朝鮮籍」を期限内に読み切れなくて、購入して今やっと残り数ページの所に来ています。「故郷を破壊し、親も帰るべき息子や娘たちも殺すテロや戦争(=テロ)」の残酷さを経験した人の心の奥底にある苦悩の塊に打ちのめされながらもう少しで読み終わります。
Commented by tona at 2017-09-11 16:54 x
そうでしたね。すっかり忘れていました。9.11。
この間あそこの前のホテルに泊まりましたのに。
お祭りに顔出すような故郷、有るけど無いに等しいです。
このようにお祭りと故郷を考えたことがないです。
子孫に伝えるべきこと、いっぱいありますね。
Commented by saheizi-inokori at 2017-09-11 23:23
> ikuohasegawaさん、学生時代もともかく社会人になってからの成績が悪いのです。
アメリカの小説などを読むとクリスマスだとか誕生日だとか家族みんなで集まるのを読むとちょっと厳しい。
Commented by saheizi-inokori at 2017-09-11 23:27
> jarippeさん、震災と原発、テロ、人間が少なくすることができるのは原発とテロですね。
今逆に動いています。
Commented by saheizi-inokori at 2017-09-11 23:28
> テイク25さん、北朝鮮の「異常さ」もその淵源を知れば少しは同情する余地が出てきます。
Commented by saheizi-inokori at 2017-09-11 23:31
> tonaさん、ひと頃お祭りが亡くなろうとしていた時代がありました。
商業主義に後押しされているものも少なくないけれど復興するのは嬉しいことだと思います。
Commented by doremi730 at 2017-09-12 02:42
東京で生まれ育っていても、下町でないと
そんなに地元のお祭りの記憶はありません。

大学になって神田明神や浅草の祭りに誘われて行って、
先輩達が担ぐのをみて、へ~と驚きました。
先輩はアメリカにも担ぎに行き、神田っ子であることを
誇りにしていました。
Commented by j-garden-hirasato at 2017-09-12 06:37
9.11の映像は、衝撃的でした。
これが現実に起こっていることなのか、
しばらくは理解できませんでした。
Commented by テイク25 at 2017-09-12 07:55 x
そう思います。
Commented by saheizi-inokori at 2017-09-12 08:28
> doremi730さん、家の商売などによって日頃から信仰の厚い家もあるし、ほとんどそういうことが形骸化している家もありますね。
我が家などは後者ですが、なんとなく何ごとがおはしますか、手をあわすことはすりこまれています。
そのこととお祭りは結び付かないけれど。
Commented by saheizi-inokori at 2017-09-12 08:30
> j-garden-hirasatoさん、今毎日流される世界の難民や戦争の映像には慣れっこになっていてもNYの摩天楼がぶっ壊れるのは衝撃でありシンボリックでした。
Commented by kotoko_s at 2017-09-12 16:28
あの日、久しぶりの帰省で、夜中にひとりテレビを見ていて、突然、飛行機がビルに突っ込む映像にしばらく何が起こったのか理解できませんでした。
その後、友人、知人たちと、アメリカが報復しないよう、連鎖が起こらないよう、なんとかしてニューヨークタイムスに意見広告を出そうとメールを転送し続けました。
あのとき届いた、息子を失ったひとりのアメリカ人の言葉が忘れられません。
「わたしは祈り続けます。怒りではなく、祈りです」
祈りは届かず、私たちは非力で、現実は最悪の方向へ向かってしまいましたが。

親のいる幸せをかみしめなければいけませんね。
親はいつも祈ってくれているのですね。
Commented by saheizi-inokori at 2017-09-12 21:09
> kotoko_sさん、あの映像はアフガニスタンの、イラクの、シリアの映像とセットで映されなくてななりません。
今の今も親が殺され子が殺され、一人ぼっちで餓えています。
この世界を見ると、かえってテロリストの心情に寄りそいたくなります。
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by saheizi-inokori | 2017-09-11 10:08 | よしなしごと | Trackback | Comments(15)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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