怖いけれど美しく、おかしいけれど悲しい 莫言「白檀の刑」(上下)

昨夕は雷と雨、風が荒れ狂った。
さあっと、白い雨が吹き飛ばされて急に明るくなったように見える、まことに痛快。
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雨が小止みになったところで「しろいし」に。
歩数が足りないので40分ほど遠回りをする。
ひっきりなしにフラッシュをたくような雷、スマホを構えたが稲妻を撮るのは難しい。
雨も降っているから傘をクビで抑えて、、背中が濡れて冷たい。
さかんに救急車のサイレンが鳴って、目の前を通過していく。
ごろごろ、どっかん、音と光が花火よりずっと迫力あり。
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玉川の花火大会が中止になり、落雷で怪我した人もいたと後で聞いた。
昔、知人が白昼、駅頭で腕時計に落雷して亡くなった。
カミさんは雷が怖いという(バスでしろいしに)、それが普通の感覚かも知れないけれど、ぼくは爽快・痛快なのだ。
「しろいし」でシャツを脱いでタンクトップ一枚で燗酒を飲んだ。
日本酒はうまい。
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帰りはいつもの店でカラオケ、雷が効いたか4曲目から急に声が出て「青葉城恋歌」「喜びも悲しみも幾年月」「こいさんのラブコール」「花」とほかの客がいないのを幸いに、がなりまくった、泣きなさい、笑いなさい!
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清朝末期、山東省に進出、暴虐を尽し鉄道を敷設するドイツ人総督が袁世凱にいう。
中国はなにもかも遅れているが、刑罰のみはもっとも先進的である。中国人はこの方面に特別な才能を有する。最大の苦痛に耐えて、はじめて死を与える―これぞ中国の芸術であり、中国政治の精髄である。
西太后に処刑人として最高だと言われた首席処刑人・趙甲は、987人の罪人を処刑、その方法も多彩を極める。

腰斬、斧で真っ二つ、アラ、残った上半身が踊りだした。
だが、これではあまりに死ぬのが早すぎる、もっと苦痛を、もっと長く。
凌遅、別名魚鱗切り、処刑柱に立たされた罪人から五百刀で均しい大きさ重さの五百の肉片を切り取り、その間生かし続ける。
美女を凌遅するのこそ、この世でいちばん凄惨な美の表現でな。あり様は、それを見物する人間のほうが、執刀するわしらよりも残酷なのじゃ。
ドイツ人の暴虐により妻子・隣人を殺された猫腔(マオチャン・猫の衣装を着て猫の鳴き声を合いの手に歌う地方劇・作者の創造)の名人座頭・孫丙は義和団に参加して鉄道建設現場を襲撃する。
それを内心の相克と戦いながらも、逮捕した県知事・銭丁、その不倫相手の天然美女・眉娘は孫丙の娘であり処刑人・趙甲の息子・小甲の妻でもあり、小甲が落とした犬や豚の料理を売る。

ドイツ人のために趙甲は、孫丙を「白檀の刑」で処刑する。
白檀を尻から首の後ろまで串刺しにして十字架にかけて五日間生かし続ける。
小甲を後継ぎにすべく助手とする。

猥雑にして哀切、壮絶にして滑稽、フアンタジックにしてリアリステイック、ローカル色あふれる普遍、さすがにノーベル賞の物語だ。

吉田富夫 訳
中公文庫

Commented by unburro at 2017-08-20 14:59
ヒエ〜ッ
『白檀の刑』とは、そういう話なのですか…
『地獄八景』も裸足で逃げ出す恐ろしさ…
鬼より閻魔より、生きてる人間の方が酷い事をする。
そして、その中に滑稽やファンタジーがあるのならば、
そりゃあ、村上春樹に勝ち目はなかったですね。

読もうかな、怖いな、どうしようか…
Commented by cocomerita at 2017-08-20 15:29
ciao saheiziさん
イタリアではものすごい苦しいこと、残酷なことを

ひえーこれじゃあ tortura cinese トルトウーラ チネーゼ ( 中国の拷問 )だよ。と言います

こう言う事の出来る人って、それが快感になってますますエスカレートしていくのでしょうね
中国の纏足も残酷そのもの
こちらの東洋美術館で目にしましたが、あんなに小さいとは思いませんでした。
あのちっちゃな、ちっちゃな靴を見てるだけで痛みが伝わってきます。
Commented at 2017-08-20 19:36
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Commented by tona at 2017-08-20 21:47 x
こんばんは。
今、雷が鳴って雨が降ってきました。
お知り合いで亡くなった方がいらしたのですか。
雷は遠くだと怖くないですが近くで落ちると恐怖感がつのります。
外であまり遭ったことはないですが、鹿島槍から下がったところで雷に遭ったときはとても恐ろしかったです。
からおけに嵌りましたか。お酒にからおけ、楽しいことがいっぱいみたいです。
Commented by saheizi-inokori at 2017-08-20 21:54
> unburroさん、水滸伝にも匹敵する面白さです。
奥沢の古本屋に感謝です。
Commented by saheizi-inokori at 2017-08-20 21:59
> cocomeritaさん、この小説の主人公の一人、眉娘は纏足をしないで育ち、劣等感をもつのですが、県知事は大足を愛するのです、ややエロテイックに。
Commented by saheizi-inokori at 2017-08-20 22:00
> 鍵コメさん、ぜひ!近くなったら連絡ください。
Commented by saheizi-inokori at 2017-08-20 22:04
> tonaさん、なぜか昨日もあまり怖くはなくて爽快でした。
カラオケは誤嚥性肺炎を予防するために喉のトレーニングです。
COPDのなりかけで咳が気になるのです。
薬を飲んだりするより楽しい予防です(酒はいけないのでしょうが)。
Commented at 2017-08-21 08:07 x
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Commented by saheizi-inokori at 2017-08-21 09:13
> 鍵コメさん、私は30年前に一日百本吸っていた煙草をやめました。
それで軽症ですんでいるのかもしれないです。
お酒はやめられないですねえ。
そちらこそお大事に。
Commented by sheri-sheri at 2017-08-22 11:01
残酷すぎて、恐ろしいです。
Commented by saheizi-inokori at 2017-08-22 12:08
> sheri-sheriさん、原爆の残酷さに比べたらどうということはないです。
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by saheizi-inokori | 2017-08-20 11:29 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(12)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori