そうか幽霊になるという手があったなあ 能「融」狂言「蜘盗人」@国立能楽堂
2017年 06月 30日
「融」を観たのは、もう6年近く前のことだ。
先達に導かれて友枝昭世などという、今も昔もとても手に入らないチケットを取っていただいて、いろんな曲を観た。
夢中になって事前に詞章を調べて、当日は一挙手一投足を見逃さないように目を凝らし(メモもし)、帰ってからも詞章を読み直して感想を書いた。
今思うと恥ずかしいような能の見方だったと思う。
勉強は必要だけれど、当日はメモなんか取らないでひたすら舞台に集中すればよかったのだ。
すべての言葉が聴き取れなくても、そこに流れる情趣を味わえばいいのだ。
とくにきのうのような蝋燭の灯りのなかで観る能は声・音・仕草・装束が醸す空間をそのものとして受け取り、そのなかでうっとりするほうがいいと思う。
月、心も澄める水の面、秋の夕べ、塩釜、音羽山、深草山、曲水の盃、、汐汲みの老人・じつは融大臣と旅の僧のあいだで交わされる言葉の流れが、かつて融大臣が栄華を極めた頃に六条河原に作らせた・今は見る影もなく荒れはてた塩釜の今昔の光景、それを哀惜する心を共にさせる。
知己のように僧の肩を抱いて、四方の名所を案内する老人と僧の掛け合いの妙を感じるのもまた楽しい。
久しぶりに聴く一噌幸弘の笛と若い前川光範の太鼓が融の亡霊を勇ましく呼び出す。
(初めて観る前川、掛け声も音吐朗々テノール)
大鼓の亀井忠雄は前より声は細くなったが、小鼓・鵜澤洋太郎とともに、笛と太鼓を励ます。
融は往時を偲び舞い踊り、旅の僧と「宵の月はなぜ光も弱く形も小さいのか」などと「よゐこの科学」問答をしたりする。
三日月は水中の魚にはどう見える?「釣り針」
雲の上を飛ぶ鳥には?「弓の影」
なんて謎々もする。
そうして満足して消えていく。
また出ておいでよ、融君。
経を読むこともしなかった旅の僧が一人残ってしみじみ月を眺める余情。
先にやった、狂言「蜘盗人」。
連歌の会を覗きに忍び込んだ男・シテ・山本東次郎が蜘蛛の糸に絡まって捕まる。
作り物の覆いをとると、シテが巨大な蜘蛛の糸のなかにいるのには大笑い。
アド・有徳人がシテの歌の知識に感じて命を助けるばかりか、太郎冠者次郎冠者もいれて酒宴の運び。
歌い、舞い、「やんややんや」主客のだけでなく客席との垣根を越えて愉しむのだ。
今日も中休みの時間に「能楽入門」展を見た。
なんども見て少しづつ覚えていければいいのだが。
まあ、その時だけ納得すればそれもよしとしよう。
先達に導かれて友枝昭世などという、今も昔もとても手に入らないチケットを取っていただいて、いろんな曲を観た。
夢中になって事前に詞章を調べて、当日は一挙手一投足を見逃さないように目を凝らし(メモもし)、帰ってからも詞章を読み直して感想を書いた。
今思うと恥ずかしいような能の見方だったと思う。
勉強は必要だけれど、当日はメモなんか取らないでひたすら舞台に集中すればよかったのだ。
すべての言葉が聴き取れなくても、そこに流れる情趣を味わえばいいのだ。
知己のように僧の肩を抱いて、四方の名所を案内する老人と僧の掛け合いの妙を感じるのもまた楽しい。
大鼓の亀井忠雄は前より声は細くなったが、小鼓・鵜澤洋太郎とともに、笛と太鼓を励ます。
三日月は水中の魚にはどう見える?「釣り針」
雲の上を飛ぶ鳥には?「弓の影」
なんて謎々もする。
そうして満足して消えていく。
また出ておいでよ、融君。
経を読むこともしなかった旅の僧が一人残ってしみじみ月を眺める余情。
連歌の会を覗きに忍び込んだ男・シテ・山本東次郎が蜘蛛の糸に絡まって捕まる。
作り物の覆いをとると、シテが巨大な蜘蛛の糸のなかにいるのには大笑い。
アド・有徳人がシテの歌の知識に感じて命を助けるばかりか、太郎冠者次郎冠者もいれて酒宴の運び。
歌い、舞い、「やんややんや」主客のだけでなく客席との垣根を越えて愉しむのだ。
今日も中休みの時間に「能楽入門」展を見た。
なんども見て少しづつ覚えていければいいのだが。
まあ、その時だけ納得すればそれもよしとしよう。
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unburro at 2017-06-30 15:43
音羽山、深草山、曲水の盃…
あら、ウチのご近所ばかりです。
昔は風流な土地柄だったのですが、今は…
あら、ウチのご近所ばかりです。
昔は風流な土地柄だったのですが、今は…
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saheizi-inokori at 2017-06-30 21:37
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そらぽん
at 2017-06-30 21:48
x
「 蝋燭の灯りのなかで観る能
声・音・仕草・装束が醸す空間。。。」
すごい美学ですね。
連綿とこの文化芸術が存在してることにも感動します。
想像の欠片を集め乍ら、解説を楽しく拝読させて頂きました。
声・音・仕草・装束が醸す空間。。。」
すごい美学ですね。
連綿とこの文化芸術が存在してることにも感動します。
想像の欠片を集め乍ら、解説を楽しく拝読させて頂きました。
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saheizi-inokori at 2017-06-30 22:00
そらぼんさん、融大臣もおボッチやまですが、今法律なんかないも同然にワガママする安倍たちとはまるで品格が違います。日本は退歩しているようです。
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doremi730 at 2017-06-30 23:17
「蝋燭の灯りのなかで観る能」
素敵ですね~!観てみたい♪
素敵ですね~!観てみたい♪
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saheizi-inokori at 2017-07-01 07:23
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ginsuisen
at 2017-07-01 09:25
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私が初めて融を見たのは、近藤乾之助さんの。
ホールだったのに・・感動し、近藤先生に惚れました。
幸弘君の笛で見られたなんて、最高でしたね。ロウソク能。
いつもそうなら、謡本を見る人もいなくなる?
その分、寝ちゃう人増えたりして・・
ホールだったのに・・感動し、近藤先生に惚れました。
幸弘君の笛で見られたなんて、最高でしたね。ロウソク能。
いつもそうなら、謡本を見る人もいなくなる?
その分、寝ちゃう人増えたりして・・
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ikuohasegawa at 2017-07-01 09:37
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saheizi-inokori at 2017-07-01 12:31
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saheizi-inokori at 2017-07-01 12:38
> ikuohasegawaさん、私はローマ字入力ですから、WとIを同時に入力してゐ、々は「繰り返し」、金子みす「ゞ」が面倒でIMEパッドの世話になります。
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ikuohasegawa at 2017-07-02 10:46
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saheizi-inokori at 2017-07-02 11:40
> ikuohasegawaさん、あ、おなじ、そうきたか、ありがとう。
by saheizi-inokori
| 2017-06-30 14:54
| 能・芝居
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