「安倍晋三の時代」は、国民の歴史観、政治観、人間観の劣化を意味する記号になる 保阪正康「ナショナリズムの昭和」

こうやって見るとよくもこんなに厚い本を読む気になった、しかも全部読んだのだ、まだまだ持続可能な隠居だ。
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ナショナリズムの定義は難しいと著者も言うが、その根っこに故郷(心の、も含め)を愛する心があること、そういう心の拠り所・共同体が存在することが”健全なナショナリズム”の条件ではないか。
それが著者のいう所のナショナリズムの下部構造、そして国家をどうたらこうたらが上部構造。二つの構造がバランスよく存在していればいいのだが、えてして上部構造が下部構造を抑圧したり吸収してしまう。
昭和10年代の軍部のように最低限のナショナリズムも失くし、ひたすら自己保身、軍人のための権力奪取に走ったこともある。
このときは天皇制も空洞化した。
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ナショナリズムなき偏狭な空間をいっさい放棄し、下部構造のナショナリズムの再生こそが「戦後」の尺度として求められるべきであった。
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「天皇制下の民主主義」をめざした昭和天皇がなくなり「民主主義下の天皇制」へと舵を切った平成天皇に変わったときをもって「戦後」は終わったと著者はいう。
平成という時代のシステムは、好むと好まざるとにかかわらず、昭和20年8月の敗戦、以後6年8カ月続いたアメリカの占領、そして東西冷戦の枠組みからは解放され得たのである。そのときこそ「戦後」の実質を見直したうえで、形式や固定観念に決着をつけることができたはずだと私は思うのである。
平成に入ったとき、占領下に持ち込まれたアメリカン・デモクラシーを乗り越え、「戦後」という語を形式から解放し、普遍的な民主主義体制をめざすべきであった。この労を惜しんだツケが、年々加速度的に肥大していると言えるのではないだろうか。孫崎亨の「戦後史の正体」を多くの人が手にした事実は、その証左に思えてならない。
と。
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「普遍的な民主主義体制をめざす」どころか、戦前に回帰しようとする安倍に対する危惧。
安倍は現憲法は占領下で制定されたから改憲すべきだというが、
たとえ良策でも、占領下でなされたことは日本の国益にならず、勝者を利したにすぎないという考えを安倍は貫いている。
他国との相克である戦争を自国の理屈のみで捉えると、一面しか見えてこず、独善的な歴史認識になる。
安倍の歴史認識には自覚なき致命的な欠陥がある。
その一つは「不敬」につながる。
吉田茂をはじめ当時の首相、および彼らを支えた有力者、またメデイア、国民いずれもが「日本の魂を売った」ことになるのである。
とすれば「象徴」を受け容れた昭和天皇も、戦勝国アメリカに「日本の精神を売った」反国家的存在たり得る。
もう一つは国際問題に発展する恐れを孕む点である。
歴史を寸断、否定して別の価値観を掲げ、汚名を晴らそうとする姿勢にある。(略)安倍が独善的な認識を鼓吹すればするほど、アメリカなど連合国の歴史観に反した「偏狭なナショナリズム」として敵視される事態に陥り、同盟関係もほころびていく、、。
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(「もう少し散歩しようよ」と玄関の前で座りこむ)
内閣総理大臣安倍晋三の時代は、将来の日本社会において、国民の歴史観、政治観、人間観の劣化を意味する記号になるのではないだろうか。

歴史の寸断、否定は、自省の封殺をもたらす。歴史を客観視する姿勢が失われれば、ナショナリズムの均衡も保てなくなり、敗戦に至ったような奔流に、一気に呑み込まれることになると、私は危惧しているのである。
俺も危惧している。
一刻も早く安倍政権を打倒する、その世論を盛り上げなければ我々も同罪だ。

Commented by hanamomo08 at 2017-06-12 16:07
>内閣総理大臣安倍晋三の時代は、将来の日本社会において、国民の歴史観、政治観、人間観の劣化を意味する記号になるのではないだろうか。
本当にそのとおりだと思いました。
私たちも同罪にならないように、しっかり考えて行動するべき時ですね。
ラジオ深夜便で保坂さんの『昭和史を語る』という特集があって母と聴いておりました。
今の流れを変えなければと思います。

空を見上げているような紫陽花の写真 梅雨の感じがよく出ていていいなあ~。
Commented by saheizi-inokori at 2017-06-12 21:31
> hanamomo08さん、共感していただき嬉しいです。
それだけでも力になると思います。
さすがのNHKでも内閣支持率が下がったと伝えていました。

紫陽花、これも嬉しいお言葉!励みになります^^。
Commented by j-garden-hirasato at 2017-06-13 05:54
行政機関が政府の言いなりだからなあ…。
そのシステムを何とかしないと…。
Commented by そらぽん at 2017-06-13 07:01 x
きょうの記事、ありがとうございました!
「歴史認識に自覚なき致命的な欠陥」には、ぞっとします。

アベの支持率、実は20代が一番高い(68%)というニュースと
若い人達の述べる理由に、寒気を感じたところでした。
 
  youtube 内閣支持率 荻上チキ 大宅映子
Commented by saheizi-inokori at 2017-06-13 07:54
> j-garden-hirasatoさん、その政府が何をしているか、が問題ですね。
Commented by saheizi-inokori at 2017-06-13 07:55
> そらぽんさん、愚民化政策、いやな言葉ですが、思い浮かびました。
Commented by unburro at 2017-06-13 09:45
先日の法事で、久しぶりに会った甥(30代銀行員)が、
安倍的発言を得意げに連発しており、暗澹たる気分になりました。
自分の幼い娘に対しても幼稚性強権的で、日本の将来をつくづく憂いました。

元々、本も読まない、映画も見ない、テレビゲーム大好きの大学生だったのですが、こういう輩が、現政権を支えているのだ…
と、実感した次第です。
ああ、情けない(泣)
Commented by ikuohasegawa at 2017-06-13 09:57
「歴史を寸断、否定して別の価値観を掲げ、汚名を晴らそうとする姿勢にある。」
「歴史を客観視する姿勢が失われれば、ナショナリズムの均衡も保てなくなり、敗戦に至ったような奔流に、一気に呑み込まれることになると、私は危惧しているのである。」

俺も危惧している。私も危惧しております。
Commented by saheizi-inokori at 2017-06-13 10:18
> unburroさん、自尊するべきものをもたない者がまやかしでもいいから強い者についていくことで自分まで強くなったような気がするのかもしれない(甥御さんがそうかは知りませんが)。
強い者について行くだけならまだしも、弱い者をあしざまにいうのは迷惑な噺です。
Commented by saheizi-inokori at 2017-06-13 10:20
> ikuohasegawaさん、そんなやり方をしても「汚名を晴らす」ことなんかできないのにね。
むしろますます馬鹿にされ汚名の上塗りなのに。
国内の一握りのネトウヨ系、体制迎合派の票だけが頼りかな。
Commented by そらぽん at 2017-06-13 18:58 x
憎むべき「愚民化政策」の汚濁に
未だ開眼の可能性のある「ぼんず」や「じょう」が 
どっぷり漬かっている。この惨状。。。
一刻も早いアベ政権の打倒を! 
Commented by saheizi-inokori at 2017-06-13 19:49
> そらぽんさん、同感です、倒せ安倍内閣!
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by saheizi-inokori | 2017-06-12 10:59 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(12)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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