自己否定の旅で自分を解放しよう つげ義春「貧困旅行記」

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世の中の関係からはずれるということは、一時的であれ旅そのものがそうであり、ささやかな解放感を味わうことができるが、関係からはずれるということは、関係としての存在である自分からの解放を意味する。私は関係の持ちかたに何か歪みがあったのか、日々がうっとうしく息苦しく、そんな自分から脱(の)がれるため旅に出、訳も解らぬまま、つかの間の安息が得られるボロ宿に惹かれていったが、それは、自分から解放されるには”自己否定”しかないことを漠然と感じていたからではないかと思える。貧しげな宿屋で、自分を零落者に擬そうとしていたのは、自分をどうしようもない落ちこぼれ、ダメな人間として否定しようとしていたのかもしれない。
シュテルナ―の「唯一者とその所有」は読んだことがないので孫引きだが、
「完全な自己否定は自由以外の何物でもない」
ということばに私は納得させられる。自分を締め付けようとする自分を否定する以外に、自分からの解放の方法はないのだと思う。
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ぼくのぶらり旅もいくらかはつげ流貧困旅に似ているのかもしれない。

山陰の海っぺり、トラックがガンガン走っていくような道路に忘れられたようにたっている居酒屋で、忘れられたようにして生きている女がけだるく出してくれる酒を呑んで黙っている。
そんな旅をしたくてぶらり旅になんどか出たがそんな居酒屋があったとしても(まずない)、そこにたどり着くには車がなければどうにもならないし、車では酒を飲めない。

でもこの間、伊那で一泊2200円の宿に泊まったし、その前は名古屋駅裏で4000円の宿、そうでなくても大体6000円前後の宿だから宿賃だけで言えば、少しはつげ門下生と認めてくれるかな。

飯田の居酒屋でジモティとカラオケで盛り上がったのなんかは、自己否定願望が中途半端だと言われるかも。
はい、修行します。
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相手が誰でもいいから結婚しようと家出して九州に行きストリッパーとイイコトして、結局東京に帰ってきたという小説のような旅から始まって、あとは関東付近・東北中心の貧困旅日記。
ぼくも行ったことがある(つげのように泊まったわけじゃない)のは、大原、冨浦、湯河原、箱根、鎌倉、伊豆松崎、養老渓谷、八幡平蒸けの湯、大多喜、会津只見、湯野上、、。
つげさんには遠く及ばない。
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古い写真や漫画、スケッチがとてもとてもいい。
彼が夢中になって旅行した昭和40年代にぼくは旅らしい旅をしていない(出張ばかり)。
本書を読んだり見たりするとその頃はまだ味わいのあるボロ宿があったのだなあ、となんだか損した思いがする。
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Commented by ginsuisen at 2017-06-03 11:33
この本持ってます。鄙びた街の旅館を旅する。つげ義春・・大好き!
Commented by jarippe at 2017-06-03 16:04
完全な自己否定ってどこまでできるか分かりませんが
出来切ってしまえば自由なのかもしれませんね
開放されたい 解放されたい その想いが生きる力になっているかもしれないです
Commented by saheizi-inokori at 2017-06-03 21:36
> ginsuisenさん、もう一度マンガを読んでみようかと思いました。
Commented by saheizi-inokori at 2017-06-03 21:37
> jarippeさん、否定って頑張っているうちはまだまだなのでしょう。
でも仮初であっても自己解放の旅っていいです。
Commented by maru33340 at 2017-06-04 07:53
少し体調が戻ってきたので、こんな旅がしたいなあと思っていました。
この本読んでみようかなあ。
Commented by saheizi-inokori at 2017-06-04 09:32
> maru33340さん、彼はビバルディの「四季」を聴きながら旅をしたことを書いています。
まるさんは?
Commented by tona at 2017-06-04 10:15
この本は何度も図書館で目にするのですが、遂に借りずじまいでした。哲学がいっぱい詰まっている感じですね。
わー、大山街道の道標が!私も見たはずです?
Commented by maru33340 at 2017-06-04 10:44
僕はの旅のお供はやはりバッハの「マタイ受難曲」でしょうか。
少し自己劇化し過ぎかなあ…
Commented by saheizi-inokori at 2017-06-04 12:09
> tonaさん、等々力にあった道しるべでした。
ここが大山街道ということを知らずに散歩していました。
Commented by saheizi-inokori at 2017-06-04 12:12
> maru33340さん、なるほどなあ、私は実際はCDなどを持って歩かないのですが、昔は軽音楽のテープを聴きながら本を読むことが多かったです。
車内の雑音をカットするために。
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by saheizi-inokori | 2017-06-03 09:53 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(10)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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