2017年 05月 07日
「ソウル」が恋しくなる 金石範「火山島」Ⅳ |
「火山島」第四巻が届いた、今回も細字二段組み560頁、楽しみでもあり覚悟も必要な読書だ。
日本植民地から解放されたのに、それを喜ぶ間もなく、アメリカは旧日本軍の統治システムをそのまま踏襲、建物も組織も使って南朝鮮を支配する。
親日派の連中は復讐や追放の憂き目にあうどころか再び支配側に廻る。
済州島、日帝支配下の1919年3月1日に爆発した3・1独立運動の28周年記念行事において、警察と米軍当局は一切の屋外集会を禁止、我慢できないデモ隊に銃撃を加え、少年を含む6名の死者を出す。
その後、陰湿凄惨に続く北からやって来た極右・暴力集団・西北のテロ、貧困のなかで李承晩・アメリカ傀儡による南だけの単独国政選挙に反対して1948年4月3日、済州島では武装蜂起が起き島内各地ではゲリラが優勢をしめる。
ゲリラと軍は4・28平和協商を結ぶが、蚊帳の外におかれた警察が陰謀でひっくり返し、ゲリラは猛攻撃を開始、本土から増援を得た軍・警察と真っ向からぶつかり合おうとしている。
政府高官や現地討伐部隊の司令官は、祖国の独立のためには済州島民30万を犠牲にしてもよいと公言、その司令官を暗殺した23歳の中尉以下19歳から25歳の下士官は軍法会議で銃殺刑が言い渡される。
いよいよ済州島は地獄になろうとしている。

どんどんつらい話に突き進むのだ。
共産党の楽天的、観念的、ヒロイズムに流れる闘争方針について行けず、度重なる入党勧誘にも首を縦に振らなかった李方根(イ・バングン)はソウルに”逃がした”妹がビラ貼りで逮捕されて釈放(裏から手を回し)されるのを受け取りにソウルに向かう。
厳しい展開の続く小説のなかでときおり描写されるグルメな場面が一息つかせてくれる。
釈放前夜、叔父とともに食べた武橋洞(ムギョドン)の店の嬰鶏(ヨンゲー)・若鶏料理。
これは、サムゲタンだな、
もしかすると昼間ソウル駅前で仰いだ太陽が悪さをしているのかと僕は思う。

その翌日叔父の家で叔母がつくってくれた朝食。
半島危機のこと、そこにいる若者たちのことなどを考えながら読んでいる。
いぜんなんども行った地蔵通りの「ソウル」、今は閉店してしまったが、あそこのママは済州島の出身だ。
営業しているなら出かけて行って、この小説のこと、出てくる料理のことなど話して、できることなら作って欲しかった。
日本植民地から解放されたのに、それを喜ぶ間もなく、アメリカは旧日本軍の統治システムをそのまま踏襲、建物も組織も使って南朝鮮を支配する。
親日派の連中は復讐や追放の憂き目にあうどころか再び支配側に廻る。
済州島、日帝支配下の1919年3月1日に爆発した3・1独立運動の28周年記念行事において、警察と米軍当局は一切の屋外集会を禁止、我慢できないデモ隊に銃撃を加え、少年を含む6名の死者を出す。
その後、陰湿凄惨に続く北からやって来た極右・暴力集団・西北のテロ、貧困のなかで李承晩・アメリカ傀儡による南だけの単独国政選挙に反対して1948年4月3日、済州島では武装蜂起が起き島内各地ではゲリラが優勢をしめる。
ゲリラと軍は4・28平和協商を結ぶが、蚊帳の外におかれた警察が陰謀でひっくり返し、ゲリラは猛攻撃を開始、本土から増援を得た軍・警察と真っ向からぶつかり合おうとしている。
政府高官や現地討伐部隊の司令官は、祖国の独立のためには済州島民30万を犠牲にしてもよいと公言、その司令官を暗殺した23歳の中尉以下19歳から25歳の下士官は軍法会議で銃殺刑が言い渡される。
いよいよ済州島は地獄になろうとしている。

共産党の楽天的、観念的、ヒロイズムに流れる闘争方針について行けず、度重なる入党勧誘にも首を縦に振らなかった李方根(イ・バングン)はソウルに”逃がした”妹がビラ貼りで逮捕されて釈放(裏から手を回し)されるのを受け取りにソウルに向かう。
厳しい展開の続く小説のなかでときおり描写されるグルメな場面が一息つかせてくれる。
釈放前夜、叔父とともに食べた武橋洞(ムギョドン)の店の嬰鶏(ヨンゲー)・若鶏料理。
これは、サムゲタンだな、
内臓を抜いたあとへ朝鮮人参や栗、棗をいれて水炊きにしたもので、立ちのぼる湯気から甘辛いこくのある漢方薬のようなにおいが鼻を衝いて、胃に届くようだ。七、八品の小料理が添えられてきたが、キㇺチが二、三種類、大根とせりを浮かした水キㇺチがあるのがよかった。わらびなどの山菜の和え物、桔梗(トラジ)の唐辛子味噌漬け、蟹や明太(ミヨンテ)のはらわたの塩辛、雑菜(チャプチエ・春雨の炒めものなどで食膳が埋まった。そのあと、東京留学時代の学友にして表面的転向後、ソウルで再逮捕、拷問によって左手の自由を失った作家・羅英鎬(ナヨンホ)と偶然にあった李方根は、彼が体制迎合的になっているのに気づき悪い酒を重ね、酒豪にしては珍しく酩酊する。
李方根は腿肉を素手に取って食べた。喰い入る歯を深々と締めて柔らかくちぎれる口中の感触と味は、甘い渋みが沁みこんでいて、ただの水炊きよりはかなりうまい。
もしかすると昼間ソウル駅前で仰いだ太陽が悪さをしているのかと僕は思う。

何よりも二日酔いの胃袋にチャリ膾(フエ・すずめ鯛の朝鮮式刺身)と、それを冷やしスープにしたムㇽ膾(水膾)がよかった。膾を冷たいスープ式にするのは済州島だけの調理法だが、チャリの他に胡瓜や韮、青唐辛子などを刻み、それをいろんな薬味でまぶして酢をきかせたスープを、硬い小骨を脂の乗った身といっしょに噛み砕きながら胃に送るのはたまらない。内臓の細胞のすみずみから古いアルコール分が洗い落とされるようで、食欲がなくともこれは胃袋が惹かれるのである。朝からわざわざチャリ膾を作るために南大門市場まで行ってきたという。

いぜんなんども行った地蔵通りの「ソウル」、今は閉店してしまったが、あそこのママは済州島の出身だ。
営業しているなら出かけて行って、この小説のこと、出てくる料理のことなど話して、できることなら作って欲しかった。
by saheizi-inokori
| 2017-05-07 11:57
| 今週の1冊、又は2・3冊
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Comments(10)
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うちの近所の焼肉屋さんの、おばちゃんも、済州島の人です。
悲しい話を、チラッと聞いた事があります。
悲しい話を、チラッと聞いた事があります。

ほんまもんを食べてみたい。って、結構、タイのほんまもんを食べてるわ。
> unburroさん、悲しい話の原因は日本人だと思うとつらいですね。
> 蛸さん、そうでしょう、タイに行きたいと思えどもタイはあまりに遠い。
GWも終わり、
今日から仕事です…。
気持ちが復帰できません…。
今日から仕事です…。
気持ちが復帰できません…。
> j-garden-hirasatoさん、フアイト!

凄い内容の本ですね。
済州島も行きましたが、そんな時代の後の島だったのですね。
二日酔いって全然食べられないわけでなく、治す食べ物や飲み物があるのですね。
済州島も行きましたが、そんな時代の後の島だったのですね。
二日酔いって全然食べられないわけでなく、治す食べ物や飲み物があるのですね。
tona さん、全七巻です、読みでがあります^^。
二日酔いの程度にもよりますね。
食べ物のことを聞くだけでも気持ち悪くなるような二日酔い(一週間酔い)になったこともあります。
二日酔いの程度にもよりますね。
食べ物のことを聞くだけでも気持ち悪くなるような二日酔い(一週間酔い)になったこともあります。
先日図書館で借りた「ルポ 思想としての朝鮮籍」を読んで、「火山島」を是非読まなくてはと思いました。図書館に第一巻をリクエストしてありますが、遅読の私は2週間では読み切れないだろうなぁ~。
「ルポ 思想としての朝鮮籍」も2週間で読み切れなくて4分の一ほど読み残したので購入することにしました。恥ずかしいことに戦後の朝鮮半島の歴史をほとんど知りません。沖縄の戦中、戦後のことも・・・。
「ルポ 思想としての朝鮮籍」も2週間で読み切れなくて4分の一ほど読み残したので購入することにしました。恥ずかしいことに戦後の朝鮮半島の歴史をほとんど知りません。沖縄の戦中、戦後のことも・・・。
> テイク25さん、図書館は次に待っている人がなければ延長できませんか(世田谷区はそうです)。
私は身障者なので一か月しかも10冊借りられるのがありがたいです。
朝鮮や沖縄の日本ゆえの苦難、教育勅語なんかより、こういうことをきちんと教えるべきでしょうね。
私は身障者なので一か月しかも10冊借りられるのがありがたいです。
朝鮮や沖縄の日本ゆえの苦難、教育勅語なんかより、こういうことをきちんと教えるべきでしょうね。