ぼくも仲間にいれてくれよ アン・ウォームズリー「プリズン・ブック・クラブ コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年」

きょうは雨になるというから昨日のうちに砧公園へ、バスで20分。
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かつてゴルフ場だったから芝生の緑とのコントラストが美しい。
枝が下まで伸ばしてあるから桜の森・オブジエみたい、それが一時間歩いてもどこでも見られる。
ソメイヨシノ、山桜、シラタエ、太白、、桜の種類が多い。
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春のジャケットでは寒かったけれど桜酔い。
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ことしの花見in東京はこれで決まりかな。
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テイクさんのブログで教えてもらった本、じつに楽しく興奮もして読んだ。
カナダの刑務所で受刑者との読書会を組織・運営したボランテイア作家の実話だ。

著者は強盗に襲われた経験があって、そのトラウマを克服するだけでやっとだったのに、刑務所に行って殺人犯やギャングたちと読書会!すごいよ、この作家。
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420頁と厚いけれどぜんぜん苦にならない。
それは、彼女が読書会の一年で取り上げた22冊の本についての会員(受刑者、、やがて希望者が行列待ちになる)の感想がエキサイティングなうえに、受刑者たちの塀の中の暮しぶり、行動の変化や心理なども書いているから、「事実は小説よりも」奇だし、彼女の気持ちの変化や驚き、亡き父親の教え「人の善を信じれば、相手は必ず応えてくれるものだよ」を自分のものにしていくプロセスが感動的だからだ。
彼女を誘った刑務所読書会プロジエクトのリーダー・キャロルなる人物もまことに痛快、誠実な女傑だ、アブナイ犯罪者たちを毅然と仕切ってしかもみんなから敬愛されている。
読書の楽しみの半分は、ひとりですること、つまり本を読むこと。あとの半分は、みんなで集まって話し合うこと。それによって内容を深く理解できるようになる。本が友達になるの。
キャロル名言の一。
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塀の外のセレブ女性たちの読書会と同じ本を取り上げてその感想を送り合うような試みも面白い。
さまざまな事情で刑務所に入れられた人たちの「読み」は鋭く深い。
刑務所は受刑者同士が孤立している場所なのに、読書会では人種や民族ギャング団の派閥の壁をやすやすと越えられるのは、人間の真実を本音で語りあえるからだろう。
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オー・ヘンリー「賢者の贈り物」、貧しい夫婦が、妻が自慢の髪の毛を売って懐中時計用のプラチナの鎖を夫に、夫はその懐中時計を売って、妻の髪に似合いそうな鼈甲の櫛を買うという有名な話だ。
自分は自慢のロレックスを売りはしないだろう、愛には限界があるという男は「怒りの葡萄」で、主人公の娘が父親に言われて餓死寸前の男に母乳を飲ませる場面に人間のやさしさを見てとった故殺犯。
コンビニ強盗が
作者が言いたかったのは、ほんとのところモノに価値はないってことだと思うな。価値があるのは、気持ちと愛情なんだ。
という。
この男はダイアン・アッカーマン「ユダヤ人を救った動物園」(ノンフィクション)を読んで、
作者が言おうとしているのは、動物園自体がもともと善良な場所だってことじゃないかな。生命や自然を体現する場だから
といい、自分と周囲の安全を犠牲にしてまでユダヤ人たちを救った夫妻の行動について
危険にさらされてる周囲の人も、夫婦の行動をみならうようになったんだと思う。善は悪より伝染しやすい。
といい、作者にだけ見せるノートには
作者が言いたかったのは、他人を断罪する権利はだれにもないし、どんな人間にでも、思いやりや愛情を人に与えるだけでなく、人から与えられる権利がある、ということではないだろうか。
と書く。
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ここで取り上げられた未読の本、いや既読も含めて、読んでみたくなった。
「サラエボのチェリスト」「スモールアイランド」「ありふれた嵐」「ユダヤ人を救った動物園」「ガーンジー島の読書会」、、。
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向井和美 訳
紀伊國屋書店
Commented by pallet-sorairo at 2017-04-11 16:41
私にとって、今まで読んだ本の中で一番忘れられないラストシーンが『怒りの葡萄』のそのシーンです。
母乳は乳児を持つ母親にしか出ませんが、あの娘は直前にその乳児を亡くしているのです。子を失くしてもまだあふれ出る母乳をめぐるシーンはなんと哀しくまた愛にみちていることか、と。
私もまた、その読書会に出たかったなぁと思います。
さっそく図書館に予約しなくちゃ。
Commented by sora at 2017-04-11 19:13 x
わ! 読みたいです ご紹介ありがとうございます
「サラエボのチェリスト」も読んでみたい。
もしも、読書会があったら
参加させて頂きたい 夢ですが。。
Commented by みい at 2017-04-11 20:14 x
こんばんは
 わたしも読んでみたくなりました^^。

お江戸の桜、満喫しました。
見事な桜ですね!きれい~
春の花たちも素敵です。
Commented by テイク25 at 2017-04-11 22:10 x
読みたくなるような本がたくさん登場して、受刑者たちが率直に感想や意見を述べ合っているのが刺激的でした。人間が理解し合い尊重し合うのにこういった方法もあるんですね。キャロルの力量には脱帽です。
「サラエボのチェリスト」も「ガーンジー島の読書会」も、とにかく登場した本を全部読んでみたい・・・。
Commented by tona at 2017-04-11 22:12 x
実に興味深い本ですね。
特に著者が女性で刑務所で、塀の中の人を読書によって観察していく様子が、映画を観ているように伝わってきました。

桜と春の花々がとても綺麗に撮影されて感動です。
花たちは今日は震えているでしょうね。それは人間だけかな。
Commented by saheizi-inokori at 2017-04-11 22:13
> pallet-sorairoさん、私はスタインベックを読んでいないような気がします。
「怒りの葡萄」も予約予約!
Commented by saheizi-inokori at 2017-04-11 22:19
> soraさん、私は学生時代に一度だけ読書会に参加したのですが、自意識過剰できれいごとばかり言ってたので自分も仲間もつまらなかったのです。
本書を読むとつくづくもったいないことをしたなあと思います。
Commented by saheizi-inokori at 2017-04-11 22:20
> みいさん、今日は一日雨、さてあしたはどんなことになっているのかな。
Commented by saheizi-inokori at 2017-04-11 22:23
> テイク25さん、改めていい本を教えていただきありがとう。
カッコウつけようなんて思わない人たちの本の読みこみ、その感想、わたしは自分がバカに思えてしょうがなかったです。
キャロルはほんとの貴族、心の貴族ですね。
Commented by saheizi-inokori at 2017-04-11 22:25
> tonaさん、著者自身が変わっていくのです。
そこが一番感動的なのでした。

ほんとに今日は寒かったですね。
明日はあったかいそうで、布団を干します^^。
Commented by j-garden-hirasato at 2017-04-12 06:02
これは見事はサクラです。
枝がのびのびしていますね。
砧公園って、
ゴルフ場の跡地なんですか。
知りませんでした。
Commented by saheizi-inokori at 2017-04-12 09:27
> j-garden-hirasatoさん、そうなんです。ツワモノどもの夢のあと。
ゴルフ場なんかより子供が遊ぶ公園の方がどれだけいいか、駒沢公園もかつてはゴルフ場があったようですよ。
Commented by ikuohasegawa at 2017-04-12 18:24
実話なのですね。興味がわきます。
Commented by saheizi-inokori at 2017-04-12 21:33
> ikuohasegawaさん、図書館愛の方には特におすすめです。
Commented by pallet-sorairo at 2017-05-27 20:54
きょうはお近くまでお出でのようでしたね(^^ゞ
昨日『プリズン・ブック・クラブ』読み終わりました。
キャロルがとっても魅力的でした。
性善説を信じたくなるような受刑者たちの人生も興味深かったです。
ご紹介ありがとうございました。
この本の前に、津島佑子の遺作『狩りの時代』を読みましたが
こちらもなかなかに良い作品だったと思います。
お時間がありましたら、ぜひ。
Commented by saheizi-inokori at 2017-05-27 21:51
> pallet-sorairoさん、遠いようで近い、近いようで遠いところです。
「プリズン、、」は私もブログで教えられた本です。
隠居になるとブログから教えられることはとても多いなあ。
「狩りの時代」、読みます。
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by saheizi-inokori | 2017-04-11 11:38 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(16)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori