人間好きな怪物 乙部順子「小松左京さんと日本沈没 秘書物語」

少し早起きしてベランダに出たらうっすらと朝焼けの空がとてもきれいだったがスマホではうまく撮れない。
Ｍさんにお借りした本。
いつも読み終わった本を返すときに二三冊、適当に見繕って（かな）貸して下さる。
わざとそうしているのか、ぼくが自分で買ったり図書館から借りたりしそうもない本ばかり。
「同時代にときめいている人」のことを扱った本も多いような気がする。

なぜぼくは「今ときめいている人物」に関心がなかったのだろう。
ベストセラーを読まないのと同じ、世の中にもてはやされるってことに若干タカピーな視線、もしかするとよじれた嫉妬心があったのか。
どこかに「俺だって！」みたいな傲慢不遜がとぐろを巻いていたのかもしれない。
そういうゴーマンが刀折れ矢尽きた今、ようやっと「世の中にはすごい奴がたくさんいる、俺の知らなかった世界がこんなにもある」って素直に認められるようになった。
そういう気持になったのは終点まぢかの僕にとっては大きな支えになる。
心安らかに好奇心のおもむくままにいろんな人やことを訪ねて驚いたり面白がることができるのだ。

小松左京は「日本沈没」や「日本アパッチ族」などを読んだことがある。
その「日本アパッチ族」は、不遇時代に奥方が楽しみにしていたラジオが消えて、さては質草になったと思い込んだ（実際は修理に出した）小松が奥方のために毎朝愉快な話を少しづつ書いた原稿用紙を置いて出かけたものだという。

桂米朝と互いに尊敬しあい祇園などでさまざまな遊びをしたという。
通人であり、絵がうまく（漫画家でもあった）、楽器も器用にこなした、じつに多才な人だ。
才気煥発、抜群の行動力、包容力、ユーモアの人。

ぼくは小松が万博とか政府がらみのいろんなところに顔を出すところが嫌だったけれど、本書を読むとそういう狭い考えじゃあかんと言われるような気がする。
Ｍさん、ありがとう。

産経新聞出版
今日は誕生日、子供たちからお祝いの手紙やらプレゼントやら、ありがたいけれどあんまりしょっちゅう誕生日になるのでそのこと自体にはあまり感慨がない。
３年に一度くらいにしたらもう少し感動するのかもしれないが。
もう少しのところでなかなか開かない、いいよ、ゆっくり開いてくれよ。