雨男・扇遊の力に圧倒された 「熱海の夜 第一夜 冬 入船亭扇遊独演会」
2017年 02月 21日
腹部エコー検査に行った。
同じところをなんども映している気配がすると、なにかあるのかと心配になる。
技師に尋ねるのをがまんして先生から「異常なし」と告げられてほっとする。
これで上下の内視鏡検査と合わせて三点セットを無事通過できた。
(長男の幼かったときに連れてきたらこんな景色をどれだけ喜んだことか)
外に出ると、ぽつぽつ、待望の雨だが小一時間歩き続けても傘をさすまでにはならない。
リンガーハットという初めての店でちゃんぽんを食っていると、外は篠突く雨になりほっとする、ほっとの二連発。
「入船亭扇遊独演会」、6時半開演だと思ったらそれは開場の時間、内幸町ホールの入り口に並んで待つことになった。
Yさんといっしょになり雑談していたから退屈もせず、あたたかくなったので辛くもなく、ウチ幸いなり。
この会を主催したブログ友のお誘いで扇遊独演会は初めて、扇遊にとっても今日が「熱海の夜」という独演会のスタートだ。
会場に入ると、歌謡曲の「熱海の夜」が流れている。
扇遊が熱海の、それも見番の近くに育ったのだという。
こみち「熊の皮」
短髪のこみち、自分で「開口一番」というめくりを出して、この会に呼んでもらったイクタテを話して、扇遊との親しさを語る挨拶が軽妙。
ネタで夫の甚兵衛にお礼の口上を教えるのに、「森の熊さん」のメロデイ―に乗せて歌って教えるのが可愛かった。
扇遊「棒鱈」
雨男なんです、すみません、と詫びたあと、熱海で育ったことなどをマクラにして、酒の話、ついでネタに入る。
薩摩の田舎侍が声の限りというようなデカイ声で「いちがち~!」とやる。
ずいぶん力の入っている扇遊、その力がうるさくない。
威勢のいい噺っぷりで好スタート。
熱演のおでこの汗をおさえ扇子もつかいながら、こみちが秋に真打になることを披露して、その前に喜多八の弟子のろべいも真打になることを言い添え、「時が過ぎていく」とちょっと遠くを見るようなそぶりをしたので喜多八のことを話すのかと思ったら、その思いを振り切るように「冬の噺をしなくてはいけない」と言ってネタに入る。
「火事息子」
「火事と喧嘩は江戸の華」の火事とは火消しのことだと寺田寅彦が書いている、と切り出して江戸の火消しのこと、半鐘の種類のこと、それぞれ「じゃあん、、ジャンジャン、、」と声でやってみせ、さいごに鎮火を知らせる「じゃん、、、じゃん、、」から徳之助が夢のなかで自分がいなくなったために嘆きやつれている母親の姿を見て衝撃を受け涙を流す話に入る。
火消しに憧れ、勘当になって行方不明の息子が近火に呼び寄せられるようにして実家の延焼を防ぐ。
親子の体面を嫌がる父親、それを詭弁を弄しても合わせる番頭、母親は息子をみてパッと笑顔になる、そのやさしさ。
世間体を気にして早く追い返そうとする父に対して母は怒る。
休憩後「付き馬」
男が付き馬・牛太郎を口車に乗せて浅草を歩き回る。
ここで何を取りあげるかが噺家によって違う。
瓜生岩子、人形焼に似ている、ってのは初めて聞いたような気がする。
豆やの前に鏡があるのが不思議、ってのも、今度確かめてみよう。
三席とも充実の高座だった。
余計な入れ事をいわず真っ向から古典落語、威風堂々だ。
それが時に物足りない気分にさせられることもあるが、昨日は完璧といってよく、「古典落語は、そのままで面白い」ということを実証してみせた。
今までは、喜多八や鯉昇など他の噺家といっしょの公演ばかりで聴いていたので、地味な感じがしたが、独演会になるとグッと前に出て力演する。
二つ目のこみちにもさりげなく優しい言葉をかけるところを見ても、共演者のことを慮って抑えめに演じていたのかとすら思えた。
いいな、これから追っかけてみようか。
終わって「球磨川」に一人酒。
勘三郎のことを読んでいたら、どういうわけか志ん朝のことを思い出し、彼がよく訪れた「球磨川」を思いだしたのだ(「はじめ」が休みだし)。
親方と二人でいろいろ話が弾んだ。
志ん朝と勘三郎は似ているか、どういう男が偉くなるか、D通は変わらない、海老蔵のやんちゃ、玉三郎のこと、、。
ひとり居残り佐平次もまた佳き哉。
同じところをなんども映している気配がすると、なにかあるのかと心配になる。
技師に尋ねるのをがまんして先生から「異常なし」と告げられてほっとする。
これで上下の内視鏡検査と合わせて三点セットを無事通過できた。
外に出ると、ぽつぽつ、待望の雨だが小一時間歩き続けても傘をさすまでにはならない。
リンガーハットという初めての店でちゃんぽんを食っていると、外は篠突く雨になりほっとする、ほっとの二連発。
Yさんといっしょになり雑談していたから退屈もせず、あたたかくなったので辛くもなく、ウチ幸いなり。
この会を主催したブログ友のお誘いで扇遊独演会は初めて、扇遊にとっても今日が「熱海の夜」という独演会のスタートだ。
会場に入ると、歌謡曲の「熱海の夜」が流れている。
扇遊が熱海の、それも見番の近くに育ったのだという。
短髪のこみち、自分で「開口一番」というめくりを出して、この会に呼んでもらったイクタテを話して、扇遊との親しさを語る挨拶が軽妙。
ネタで夫の甚兵衛にお礼の口上を教えるのに、「森の熊さん」のメロデイ―に乗せて歌って教えるのが可愛かった。
扇遊「棒鱈」
雨男なんです、すみません、と詫びたあと、熱海で育ったことなどをマクラにして、酒の話、ついでネタに入る。
薩摩の田舎侍が声の限りというようなデカイ声で「いちがち~!」とやる。
ずいぶん力の入っている扇遊、その力がうるさくない。
威勢のいい噺っぷりで好スタート。
熱演のおでこの汗をおさえ扇子もつかいながら、こみちが秋に真打になることを披露して、その前に喜多八の弟子のろべいも真打になることを言い添え、「時が過ぎていく」とちょっと遠くを見るようなそぶりをしたので喜多八のことを話すのかと思ったら、その思いを振り切るように「冬の噺をしなくてはいけない」と言ってネタに入る。
「火事息子」
「火事と喧嘩は江戸の華」の火事とは火消しのことだと寺田寅彦が書いている、と切り出して江戸の火消しのこと、半鐘の種類のこと、それぞれ「じゃあん、、ジャンジャン、、」と声でやってみせ、さいごに鎮火を知らせる「じゃん、、、じゃん、、」から徳之助が夢のなかで自分がいなくなったために嘆きやつれている母親の姿を見て衝撃を受け涙を流す話に入る。
火消しに憧れ、勘当になって行方不明の息子が近火に呼び寄せられるようにして実家の延焼を防ぐ。
親子の体面を嫌がる父親、それを詭弁を弄しても合わせる番頭、母親は息子をみてパッと笑顔になる、そのやさしさ。
世間体を気にして早く追い返そうとする父に対して母は怒る。
世間様は世間様です!帰るこたあない!おとっつあんばかりの子じゃない!徳之助が火消しに憧れるようになったのも世間体を気にして私に育児をさせず火事好きな乳母に任せたためじゃないか!母の権幕と自分の内心に負けて、これからときどき金を貰いに来てもよいというオヤジ、言い負かされて喜んでいる。
男が付き馬・牛太郎を口車に乗せて浅草を歩き回る。
ここで何を取りあげるかが噺家によって違う。
豆やの前に鏡があるのが不思議、ってのも、今度確かめてみよう。
三席とも充実の高座だった。
余計な入れ事をいわず真っ向から古典落語、威風堂々だ。
それが時に物足りない気分にさせられることもあるが、昨日は完璧といってよく、「古典落語は、そのままで面白い」ということを実証してみせた。
今までは、喜多八や鯉昇など他の噺家といっしょの公演ばかりで聴いていたので、地味な感じがしたが、独演会になるとグッと前に出て力演する。
二つ目のこみちにもさりげなく優しい言葉をかけるところを見ても、共演者のことを慮って抑えめに演じていたのかとすら思えた。
いいな、これから追っかけてみようか。
勘三郎のことを読んでいたら、どういうわけか志ん朝のことを思い出し、彼がよく訪れた「球磨川」を思いだしたのだ(「はじめ」が休みだし)。
親方と二人でいろいろ話が弾んだ。
志ん朝と勘三郎は似ているか、どういう男が偉くなるか、D通は変わらない、海老蔵のやんちゃ、玉三郎のこと、、。
ひとり居残り佐平次もまた佳き哉。
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kogotokoubei at 2017-02-21 15:41
あら、志ん朝の大須での「火事息子」に関する記事を書いたら、偶然ですが、扇遊もこのネタだったのですね。
諸般の事情で昨日はご一緒できず、一人酒盛り(ご主人と二人か^^)をしていただき、面目ありません。
扇遊は、いいですよね。
そのうち、ぜひ球磨川ご一緒しましょう。
はじめの早期再開も期待しています。
諸般の事情で昨日はご一緒できず、一人酒盛り(ご主人と二人か^^)をしていただき、面目ありません。
扇遊は、いいですよね。
そのうち、ぜひ球磨川ご一緒しましょう。
はじめの早期再開も期待しています。
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stanislowski at 2017-02-21 16:39
検査異常なしで安心!
おしどりまこ・けんが来独。もっと原発事故の報道がなされなければと思いました。
そして彼らは芸人さん!まこさんから千駄木にあるはなし塚のことも初めて知りました。禁止落語なるものがあったのですね。落語って私には未知の文化だけれど、これを理解するにはかなりの時事ねた・知識がないととだけ理解してました。佐平次さんのような先輩に連れて行ってもらいたい~。(ラブコール)
おしどりまこ・けんが来独。もっと原発事故の報道がなされなければと思いました。
そして彼らは芸人さん!まこさんから千駄木にあるはなし塚のことも初めて知りました。禁止落語なるものがあったのですね。落語って私には未知の文化だけれど、これを理解するにはかなりの時事ねた・知識がないととだけ理解してました。佐平次さんのような先輩に連れて行ってもらいたい~。(ラブコール)
三点セットを無事に通過できて良かったですね。
落語を楽しんで、居残りで酒も楽しむ。
お料理もおいしそうだし羨ましいなぁ。
扇遊という落語家は知りませんが、
いい噺家の古典落語は面白いというのは知っています。
落語を楽しんで、居残りで酒も楽しむ。
お料理もおいしそうだし羨ましいなぁ。
扇遊という落語家は知りませんが、
いい噺家の古典落語は面白いというのは知っています。
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喜洛庵上々
at 2017-02-21 18:37
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昨晩はありがとうございます。
素晴らしい高座でしたね。
三席揃えて来ました。
あれ程にぐいぐいと前へ前へ出て来る扇遊師を初めて観ました。
熱演と言うのか、或いは力演と言うべきか。
迫力の高座に圧倒されました^^
素晴らしい高座でしたね。
三席揃えて来ました。
あれ程にぐいぐいと前へ前へ出て来る扇遊師を初めて観ました。
熱演と言うのか、或いは力演と言うべきか。
迫力の高座に圧倒されました^^
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saheizi-inokori at 2017-02-21 21:47
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saheizi-inokori at 2017-02-21 21:49
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saheizi-inokori at 2017-02-21 21:50
> テイク25さん、扇遊はいぶし銀のような噺家とでも言いましょうか、なかなか粋ですよ。
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saheizi-inokori at 2017-02-21 21:51
> 喜洛庵上々さん、もう一人の扇遊を見たような気持になりましたね。
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j-garden-hirasato at 2017-02-22 06:48
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福
at 2017-02-22 07:03
x
『火事息子』私的な言い方ですが、戯曲型落語の傑作と呼んでいます。
NHKで扇橋のを聴いて、とても感動しました。
臥煙の説明から語り、離れていた家族が火事という困った事件で再び和するプロセスが流れるように語られていました。火事息子から家事息子へ・・・
この噺は後半の母親の働きが大きく、その造型力が問われると感じました。
扇橋は圓生に習ったらしいですが、扇遊は先師に習ったのでしょうか。
NHKで扇橋のを聴いて、とても感動しました。
臥煙の説明から語り、離れていた家族が火事という困った事件で再び和するプロセスが流れるように語られていました。火事息子から家事息子へ・・・
この噺は後半の母親の働きが大きく、その造型力が問われると感じました。
扇橋は圓生に習ったらしいですが、扇遊は先師に習ったのでしょうか。
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saheizi-inokori at 2017-02-22 09:48
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saheizi-inokori at 2017-02-22 09:51
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ikuohasegawa at 2017-02-23 18:15
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saheizi-inokori at 2017-02-23 20:11
by saheizi-inokori
| 2017-02-21 13:51
| 落語・寄席
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