カフカ『城』は夢のなかのトイレ探し&稲田大臣は統合幕僚長を馘首せよ
2017年 02月 18日
大西巨人の「深淵」で、逆行性健忘症になって第一の自分を取り戻した(それまでの第二の自分を思い出せない)主人公が12年前に記憶から消えた第一の自分のことをベッド上で想起する。
かつて自分が
そして第二の人生の知己と遭遇することによって第二の人生の場に臨む。
そのときに、自然に”カフカ作『城』の秀抜な書き出し部分"を思い浮かべるのだ。
ぼくが『深淵」に触発されて読んだ『城』は池内紀が訳している。
それはこうだ。
小さい活字で450頁あまり、グズグズと話はつづく。
大西の小説も同じ文章の繰り返しが多く持って回ったような記述に音をあげることもあるが、大西の場合はその繰り返しが論理的であり、一点の誤解も許さないような気迫がある。
カフカの場合はダラダラと牛のよだれのように会話、一人の話がやたらに長い。
それでストーリーはあるけれど、前後の一貫性がないから、夢の中の出来事のようだ(大西のストーリーは一貫している)。
夢のなか、今朝も見た夢では、いなかった人物が突然現れて意味の解らないことを、それはお前が知っている・お前に起因する事柄だと言ったりする。
トイレに行きたいのに、場所がわからない、あったはずのところに違うものがある。
やっと見つけると汚れていて使えない。
そうして困っている僕を見てみんなが冷たく笑っている。
夢マボロシではある(尿意はリアル)が、どこかに僕の人生の刻印が押されている。
この小説もそんな感じだ。
そうしてカフカのほかの小説に見られるように「中断」で終わっている。そこは大西的だ。
昨日の病院には立派なひな壇が飾られていた。
そのわきのテレビの国会中継で、大本営発表の時代に完全に戻っていることを、その恐ろしさを微塵も・ほんのかすかにも自覚していない、ただ野党議員の質問をうるさそうに顔をしかめて聞く稲田防衛大臣がいた。
かつて自分が
一つは、フランツ・カフカ作『城』の舞台設定および精神をゲーテ作『親和力』との観念連合において論考すること、二つはカフカ作『変身』、『審判』、『城』の様式選定および思想を記憶喪失との関連において解析することの二個の落想を得ていたと。
そのときに、自然に”カフカ作『城』の秀抜な書き出し部分"を思い浮かべるのだ。
Kが到着したのは、夜更けのことであった。村は、深い雪に埋もれていた。城山は、霧と闇とに覆われて、まったく見えなかった。大きな城の所在を示す微光すらも、射してはいなかった。幹線道路から村へ通ずる木橋の上に長らくたたずみ、Kは、上方の漠たる虚空を凝視していた。これは、大西巨人の訳だ。
ぼくが『深淵」に触発されて読んだ『城』は池内紀が訳している。
それはこうだ。
Kは夜おそく村に着いた。あたりは深い雪に覆われ、霧と闇につつまれていた。大きな城のありかを示す、ほんのかすかな明かりのけはいさえない。村へとつづく道に木橋がかかっており、Kはその上に佇んだまま、見定めのつかないあたりを、じっと見あげていた。Kなる人物の顔つきまで変わってくるね。
大西の小説も同じ文章の繰り返しが多く持って回ったような記述に音をあげることもあるが、大西の場合はその繰り返しが論理的であり、一点の誤解も許さないような気迫がある。
カフカの場合はダラダラと牛のよだれのように会話、一人の話がやたらに長い。
それでストーリーはあるけれど、前後の一貫性がないから、夢の中の出来事のようだ(大西のストーリーは一貫している)。
トイレに行きたいのに、場所がわからない、あったはずのところに違うものがある。
やっと見つけると汚れていて使えない。
そうして困っている僕を見てみんなが冷たく笑っている。
夢マボロシではある(尿意はリアル)が、どこかに僕の人生の刻印が押されている。
この小説もそんな感じだ。
そうしてカフカのほかの小説に見られるように「中断」で終わっている。そこは大西的だ。
そのわきのテレビの国会中継で、大本営発表の時代に完全に戻っていることを、その恐ろしさを微塵も・ほんのかすかにも自覚していない、ただ野党議員の質問をうるさそうに顔をしかめて聞く稲田防衛大臣がいた。
いちばん深刻に顔色変えて命懸けで取り組むべき責任かあるはずなのに!
統合幕僚長を馘首してしかるべき切所なのに、一刻も早く国会の追及を逃れたいような答弁ぶり。
こういう人が防衛の責任者だということは、日本もカフカの世界に突入した。
白水Uブックス
池内 紀 訳
統合幕僚長を馘首してしかるべき切所なのに、一刻も早く国会の追及を逃れたいような答弁ぶり。
こういう人が防衛の責任者だということは、日本もカフカの世界に突入した。
白水Uブックス
池内 紀 訳
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tona
at 2017-02-18 13:54
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サンチ君の回りは春ですね!
カフカはさっぱりわからなかったという記憶で、二度と読む気がしません。
佐平次さんは果敢にも読まれたのですね。
訳者によって同じ文章がこうも違うとは驚きました。
カフカはさっぱりわからなかったという記憶で、二度と読む気がしません。
佐平次さんは果敢にも読まれたのですね。
訳者によって同じ文章がこうも違うとは驚きました。
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saheizi-inokori at 2017-02-18 21:07
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j-garden-hirasato at 2017-02-19 08:12
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saheizi-inokori at 2017-02-19 10:39
> j-garden-hirasatoさん、爛漫とまではいきませんが、毎日晴れ続きで芽の膨らむのも早いかな。
日曜日のテレビは幼児向け『変身』番組が盛んですね。
子供たちは変身願望が強いのでしょうか。
日曜日のテレビは幼児向け『変身』番組が盛んですね。
子供たちは変身願望が強いのでしょうか。
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antsuan at 2017-02-19 20:41
尖閣諸島におけるシナ漁船と海上保安庁警備艇との衝突の真相を隠ぺいしようとしたのは文民官僚でした。それに怒りを感じて真相をユーチュープで流したのは現役海上保安官です。
今回も同じようなパターンではないでしょうか。
今回も同じようなパターンではないでしょうか。
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saheizi-inokori at 2017-02-19 21:57
> antsuan、そうかもしれない、だから稲田は身の潔白を明らかにするためにも統幕参謀長の首を斬ったらいいと書いたのです。
稲田みたいな劣等感の裏返しで口先だけの右翼にはそんな腹があるはずがないでしょう。
安倍も然り。
稲田みたいな劣等感の裏返しで口先だけの右翼にはそんな腹があるはずがないでしょう。
安倍も然り。
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sweetmitsuki at 2017-02-20 06:13
かの防衛大臣は子どものころから先生のいうことを素直に聞く良い子だったのでしょう。
だから古事記も天皇の名前を丸暗記すれば本文は読まなくていいといわれ、その通りに学習してきたんだと思います。
だから古事記も天皇の名前を丸暗記すれば本文は読まなくていいといわれ、その通りに学習してきたんだと思います。
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ikuohasegawa at 2017-02-20 07:53
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saheizi-inokori at 2017-02-20 10:06
> sweetmitsukiさん、この人はある種の劣等感の裏返しみたいな感情があって戦後の主流的な歴史観に反旗を翻したのではないかとおもうことがあります。
口先だけの右翼、そういうエモーションが国民の主流になっていくと本当に悪い奴らが跳梁し始めるのではないでしょうか。
口先だけの右翼、そういうエモーションが国民の主流になっていくと本当に悪い奴らが跳梁し始めるのではないでしょうか。
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saheizi-inokori at 2017-02-20 10:08
> ikuohasegawaさん、しかも底の浅いカフカの世界!
by saheizi-inokori
| 2017-02-18 11:31
| 今週の1冊、又は2・3冊
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