永遠の青年(少年?)じゃ 頑張って長生きしてよ! 草森紳一「随筆 本が崩れる」(文春新書)
2006年 01月 20日
なんともなあ。こんなオヤジが生きてた!捨てたもんじゃないかも、この日本も。ご本人は苦虫噛み潰しているかのごとくだが。百閒と荷風と足して2で割って・・偏屈、滑稽、滋味掬すべし。
本は趣味ではなくなって仕事の資料として集めるようになった。そのために書きたいテーマがあると直接関連のある資料ばかりか周辺の(と言うことはおっさんの関心・連想・発想の赴くに従い無限の)資料漁りが始まる。やがて3000冊〈一つのテーマで)くらいはたまってしまう。全て2LDKのマンションに置く。
部屋の中で本の見えない場所は浴室だけ。後は廊下、玄関、ベッドの周り、、積めるだけ積まれる。テレビ、冷蔵庫、ステレオ、、文明の器具は全て捨ててもマダ置く場所が無い。
部屋を歩くときは体を細くして蟹歩き。油断すると〈特に後ろ足)積んである本にぶつかってしまう。痛い、というより”技術”の粋を尽くして積み上げた本の山が崩れるのが怖い。
地震の恐怖!せっかくやっとの思いで買った本も抜き出せないことも。したがって膨大な”未完の、未刊の”作品がある。
顔もめったに洗わない男は久しぶりに風呂に入ろうと思う。脱衣と体を洗うのがめんどうだから”湯につかる快楽”は犠牲にする。そんな快楽よりただぼーっとしている贅沢や読書の醍醐味のほうを選ぶ男。
本が積み上げてあるから細い隙間しかあかない脱衣室のドアを窮屈そうに通り抜けた途端周辺の本がドドッと崩れた。家中の本が連鎖反応で崩れていく音がする。ドアは押しても微動だにしない。おっさんは風呂場に閉じ込められた。家人は?
どうやっておっさんが窮地を脱したか、これまた微に入り細に入りクソ真面目に軽妙に書く。恐れ多くも毛筆でしたためたのですぞ(書痙になったので)。
男鹿半島への旅についてのあれこれ。俺も昔一人で行ったことがある。そのときホテルの窓から見た雨上がりの森。そこには大きな虹が二本!初めて見たのだ。感激してうわずってしまってフロントに電話して「館内のお客様に知らせたらどうか」なんて言ってしまった。そして森一杯に鳴き騒ぐ鶯の声。そんな思い出が立ち返ってきた。ノスタルジアに富み本人が真剣であればあるほど笑える傑作の旅行記だ。少年時代、バナナのようなグローブで華麗な守備(その秘密の分析が愉快)を誇った野球少年だったころのこともエスプリが利いている。両切りピース一日60本、でも辞めようと思えばいつでも辞められるという(ほんとかい?)喫煙をめぐるあれこれ。橋本派総会後の記者会見で偶然にも喧嘩した「青木」と「野中」が隣り合って座ったときのタバコの果たした・果たさなかった役割、人生の”綾”についての省察、、話題はあちらへこちらへ。メタクタのような、どこか筋が通っているような。ジイサンの目くらましは楽しい。
本は趣味ではなくなって仕事の資料として集めるようになった。そのために書きたいテーマがあると直接関連のある資料ばかりか周辺の(と言うことはおっさんの関心・連想・発想の赴くに従い無限の)資料漁りが始まる。やがて3000冊〈一つのテーマで)くらいはたまってしまう。全て2LDKのマンションに置く。
部屋の中で本の見えない場所は浴室だけ。後は廊下、玄関、ベッドの周り、、積めるだけ積まれる。テレビ、冷蔵庫、ステレオ、、文明の器具は全て捨ててもマダ置く場所が無い。
部屋を歩くときは体を細くして蟹歩き。油断すると〈特に後ろ足)積んである本にぶつかってしまう。痛い、というより”技術”の粋を尽くして積み上げた本の山が崩れるのが怖い。
地震の恐怖!せっかくやっとの思いで買った本も抜き出せないことも。したがって膨大な”未完の、未刊の”作品がある。
顔もめったに洗わない男は久しぶりに風呂に入ろうと思う。脱衣と体を洗うのがめんどうだから”湯につかる快楽”は犠牲にする。そんな快楽よりただぼーっとしている贅沢や読書の醍醐味のほうを選ぶ男。
本が積み上げてあるから細い隙間しかあかない脱衣室のドアを窮屈そうに通り抜けた途端周辺の本がドドッと崩れた。家中の本が連鎖反応で崩れていく音がする。ドアは押しても微動だにしない。おっさんは風呂場に閉じ込められた。家人は?
慌てず騒がず、唐詩の一節、吉田健一が講義を終えて部屋を出ようとしてドアが開かなくなった、つまり吉田の無器用だったこと、友人のうちのトイレに閉じこめられた思い出、隣に住む捨て猫に餌をやる老嬢のこと、彼女がおっさんの窮状を知りえたとしても救助に駆けつけるために直面しなければならないさまざまなこと(子供の頃から冒険小説をたくさん読んだから想像が働くと威張る、そこで威張ってどうする!)を楽しげに思い描く、、いろいろ考えを泳がせているうちに結局脱衣室においてある古書を読み始める。そのスペースを作るのも一仕事。
この本の群れに完全占拠されたマンションには、ドアを強く叩いても、大声で叫んでみても、出てきてくれるような人間は、誰も住んでいない。「世間」とやらに背を向けて生きてきたので(実際は甘えて、曖昧を極めながら生きてきたので)、こいつは、復讐されているのかなと、ニヤッと笑ってみるものの、いや書物の精霊どもめに、ちょっと意地悪されているだけなのだと思い直しながら顔をゆっくり洗っていたが、そのうち、またまた心はやたらと明るくなってくる。
どうやっておっさんが窮地を脱したか、これまた微に入り細に入りクソ真面目に軽妙に書く。恐れ多くも毛筆でしたためたのですぞ(書痙になったので)。
男鹿半島への旅についてのあれこれ。俺も昔一人で行ったことがある。そのときホテルの窓から見た雨上がりの森。そこには大きな虹が二本!初めて見たのだ。感激してうわずってしまってフロントに電話して「館内のお客様に知らせたらどうか」なんて言ってしまった。そして森一杯に鳴き騒ぐ鶯の声。そんな思い出が立ち返ってきた。ノスタルジアに富み本人が真剣であればあるほど笑える傑作の旅行記だ。少年時代、バナナのようなグローブで華麗な守備(その秘密の分析が愉快)を誇った野球少年だったころのこともエスプリが利いている。両切りピース一日60本、でも辞めようと思えばいつでも辞められるという(ほんとかい?)喫煙をめぐるあれこれ。橋本派総会後の記者会見で偶然にも喧嘩した「青木」と「野中」が隣り合って座ったときのタバコの果たした・果たさなかった役割、人生の”綾”についての省察、、話題はあちらへこちらへ。メタクタのような、どこか筋が通っているような。ジイサンの目くらましは楽しい。
今日の日記をエントリーして、午後は読書します。
入院中の長男に村上春樹と村上龍の本を届けて、ああ自分も彼らから遠ざかっていたなと思い、読替えそうと。
素人の文章ですが、感想文をそのうちエントリーしますから、批評をお願いします。
夜は、沖食のメンバーとオフ会です。
入院中の長男に村上春樹と村上龍の本を届けて、ああ自分も彼らから遠ざかっていたなと思い、読替えそうと。
素人の文章ですが、感想文をそのうちエントリーしますから、批評をお願いします。
夜は、沖食のメンバーとオフ会です。
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saheizi-inokori at 2006-01-21 11:35
YUKI-archさん、ドンドン降ってきましたねえ。私はジムに行ってその後は昔のテナント店長の送別会。足元が不安だな。沖食とは沖縄の料理のことですか?息子さんお大事に。
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LiberaJoy at 2006-01-22 00:01
トラックバックありがとう。草森紳一さんの記事にいただくとは、うれしい限りです。本のこともそうですが、たばこのことなど「今」の流れと反対を向いていて、それがすべて納得できるうれしい本です。
小言幸兵衛的視線がよかったです。
わが家でも、本を捨てろ、片付けろという同居人との戦いです。
小言幸兵衛的視線がよかったです。
わが家でも、本を捨てろ、片付けろという同居人との戦いです。
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saheizi-inokori at 2006-01-22 09:48
LiberaJoyさん、ご健闘を祈ります。一本筋がとおっているコウベイさんいなくなりましたね。
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pompu
at 2006-01-25 10:20
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本で思い出しましたが、ある通販(だったかな?)の本に、本箱や本棚ではなく、”積ん読”用のスタンドがありました。本をCDラックの様に横にして積み上げられる。ニーズがありそう。
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saheizi-inokori at 2006-01-25 13:21
通販生活です。とっくに買いました。それが溢れています。私も”崩れ”かかっているよ。
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そら
at 2006-01-25 16:24
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この本おもしろそう、と思って探したけど、会えませんでした。
と思ったら、新書だったのね。
文庫の棚にあるわけないか(^^;)
また、探してこよっ♪
積ん読用のスタンド、いいですね~(^o^)とっくに買ってる梟さんも、またいいわ~♪
と思ったら、新書だったのね。
文庫の棚にあるわけないか(^^;)
また、探してこよっ♪
積ん読用のスタンド、いいですね~(^o^)とっくに買ってる梟さんも、またいいわ~♪
by saheizi-inokori
| 2006-01-20 22:14
| 今週の1冊、又は2・3冊
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Comments(7)