国会で起立拍手している場合か ハワード・W・フレンチ「中国第二の大陸 アフリカ 100万人の移民が築く新たな帝国」

夕方の散歩で初めての道を歩いた。
このあたり一キロ圏内、ほとんどの道は踏破済みと思ったのに、こんな広い道を見逃していた。
たそがれ、どこの家もまだ灯りが点らず、人の姿も気配もない。
見慣れた道と微妙に違う道幅、家並み、パラレルワールドに入り込んだような・ちょっと頼りないような不思議な感じだ。
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読み終えた「中国第二の大陸 アフリカ」に登場する中国人たちのことを想った。
わずかな所持金を手にして単身アフリカにわたって、言葉も通じないところで、荒地を買い、なんども耕して農地にして、家族を呼び寄せる。
現地妻と結婚してビザの更新を狙う人もいる。

ちょっと馴染みのない道に入り込んだだけで、ある種の不安を感じる者からみたら、電気もない水道もない、道路も通じていない、治安はよくない、知人もいない、ナイナイ尽くしで、危険だけはあるアフリカで一攫千金を求める中国人のバイタリテイーには驚くほかはない。
最近の10年間で最低でも100万人を超す中国人がアフリカの各地に住み、あらゆる職業に急速に進出しているそうだ。
農業、中小企業の経営者、医療、教育、密貿易、林業(伐採)、建設、売春、街角の行商人、養鶏業、小売業、、大企業・中小企業のオーナーであったり、その日暮らしであったり。

ニューヨークタイムズ支局長として世界各地、とくにアフリカ各地を巡って、多くの中国人や現地人たちに直接会って話を聞いた筆者は、フランス語、ポルトガル語、スペイン語、中国語、日本語にも通じる。
100人近くの人々との会見の模様、話の内容はリアルで愕きに満ちている。
深い洞察力と幅広い知識、なによりもアフリカに対する愛情に裏打ち(アフリカでパン屋をしていた義母の葬式にいくという記述がある)されている。
一口にアフリカといっても国によって地方によってありようはさまざまであることなどもよくわかった。
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権力者に取りいって(役に立たない・粗悪な)スタジアムや道路・橋などを(無償で、または資源との現物交換で)提供する中国のやり方は、小うるさい手続きや訓示付の欧米のやり方と違って、手っ取り早く資金を投入してくれるから、(ほかに選択肢もない)アフリカ諸国政府は喜んで(たまにはしぶしぶ)受け入れる。
信じられないような安値で応札して工事をとっていくが、資材、資金、労働力、技術は自前で用意し、現地労働力は単純労働のみを低賃金・過酷な労働条件で使う。
腐敗したアフリカ側の権力者は、中国のやることが国内法に反していても見て見ぬふりをする。
乱暴に伐採される自然林の余命はわずか。
超廉価の商品を売るから現地の繊維産業などはつぶれてしまう。
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筆者は、1930年代初めに、日本が満州や中国東北部に100万人の国民、小売店経営、企業家、農業移民などを送り込んだことに、似ているという。
肥沃で資源の豊富な広大な土地に、勤勉・刻苦勉励(中国人は、自分たちはアフリカの人と違って「吃苦・チーク―」だから開発できるという)の移住民を送り込み「新天地」を作るのは、日本人のためばかりでなく、貧しく悲惨なまでに無秩序な中国人を向上させる、ウィンウイン政策だ、それは残酷で搾取的な西欧とは違うのだ、と対外的に言ったところがよく似ている。
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アフリカ側にも中国に対する不信感を抱くようになり、モノをいう人びと・抵抗運動も見られるが、それが、今までの(欧米の植民地時代も含めて)流れをかえて自立できるアフリカになれるかどうか、前途多難だ。
それを可能にする必須条件は人材の確保だ。
リーダー、技術者、マネージャーなどにしかるべき人材を育てること。

日本も目先の利益を追うのではなく、人材育成にひと肌もふた肌も脱ぐべきだと、俺は思う。
今、日本の権力システムのなかでエラそうにしている連中のなかにはアメリカに留学して新自由主義の洗礼を受けた人も多い。
現地で、または日本に招いて優秀なリーダーを育てるくらいな恩返しをしても罰はあたるまい。
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中国からアフリカに移住してきた人の多くが、中国の現状に批判的で、アフリカは祖国よりもはるかに自由でチャンスにあふれている、汚職はアフリカの方が少ないという人もいるそうだ。

(26分過ぎ)

話は変わるが、このニュース↑には驚いた。
これは知らない道を歩くよりも怖い、別世界に来てしまったような出来事だ。
総理大臣の音頭で「自衛隊、警察、海上保安庁に感謝」の念を国会議員が一同起立して拍手するって!
国民、安倍の思い通りにならない国民に対する挑発か。
北朝鮮のみんな揃って拍手する映像に憧れたのか。

なんで消防士は、対象にならないのか。
それよりも薄給・過酷な労働条件で、介護施設、医療施設、フクイチ、、働いているすべての国民にこそ、頭を垂れて感謝の念を示すべきだろう。

栗原 泉 訳
白水社
Commented by tona at 2016-09-27 16:46 x
読みたかった本です。
とても分かりやすく説明くださってよくわかりました。
中国人の強さに最初驚いたのがアメリカで線路を敷く作業で、落伍する他の国々の人と違って、仲間意識が強くて孤独も感じず、やがて故郷の人々を呼んだというのを読んだ時でした。アフリカはもっと過酷なのに、↑のような逞しい中国人なのですね。でもアフリカ人も批判する人はいるわけで、今後どうなっていくのか。今に世界中中国人だらけになって遠い未来日本は属国になったりしてと思ったりしました。アフリカも良くなってほしいと思いますが、まだまだ難しいですね。そんな中何でも挑んでいく中国人恐るべし。日本は敵わない?
タスマニア島のホテルで働いていた中国人の強さにも驚いたことがありました。あの島、中国人だらけでした。
Commented by stanislowski at 2016-09-27 17:28
本当に。国会で起立拍手している場合で無い。
脅威論を言ってみるが、したたかに第二の大陸を作り上げようとする彼らとは何かが違う。それが大陸と島国の違いか。
見てるものが遥かに違う。

腰巾着止まりのスネ男くんでは、相手にされないよね。

しかるべき人材の育成かぁ。とどのつまり、家庭での人格形成、学校教育に行き着く。うーむ。
Commented by at 2016-09-27 23:58 x
国会のニュース、開いた口がとゆうよりは、何所の国?
12年前のスマトラ地震の後、こいつをバンコクのレストランで見た事を思い出した。お付きをいっぱい連れて、最後に当時の大使が頭を垂れてとぼとぼ。
なんも、こんな観光客がいっぱい居てるとこでって、地震後の大使館の対応の悪さがメディアで叩かれた見せしめやったんや、
当時、ここまで悪に成長するとは思てなんだ。
Commented by saheizi-inokori at 2016-09-28 00:00
> tonaさん、>分かりやすく、ほんの一面しか紹介してないのです。
中国人の強さも印象に残りましたが、悪さももっと、それは日本も同じなのでしょうが。
Commented by saheizi-inokori at 2016-09-28 00:02
> stanislowskiさん、「しっかいと」ばかり、身内から拍手をもらっていい気になっているんですからね。
学校教育がいかに大事かと思います。
さらに実務の教育、語学教育など、これは日本が支援できることだと思います。
Commented by saheizi-inokori at 2016-09-28 00:04
> 蛸さん、アホを通り越して危険です。
Commented by ikuohasegawa at 2016-09-28 08:22
国会議員が一同起立して拍手するって!

そのうち、隊列組んで行進しろとかマスゲームやれとか言い出すんじゃないの。俺は絶対に嫌だ。
Commented by saheizi-inokori at 2016-09-28 09:48
> ikuohasegawaさん、安倍を取り巻く若造たちがやらせたらしいですね、オカルト連中!
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by saheizi-inokori | 2016-09-27 12:39 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(8)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori