幽霊も狐も死にたい娘も「そこをなんとか」みんな仲良く 第45回「三田落語会」

三田落語会@仏教伝道センター、開場まで20分ほどあるので一階ロビーで本を読んでいた。
座った椅子の隣りに落語の評論をされる某氏がいて、そこによく落語会でお見かけする方が二人来て話し始めた。
「文楽原理主義みたいな方がいて、、」言葉の端から想像するに一昨日の小満んの高座のことのようだ。
くそー!らくだ亭での小満んの高座がすこぶるの二乗くらいよかったというブログを見てきたばかり、その高座の余韻を三人が分かち合っているのだ。
前はほとんど毎回行っていたらくだ亭に行かなくなったのは、単に一度行かなかったから会場で次回の切符を買わなかった、そのままになっているだけのこと。

何でもそうだけれど落語も一期一会、伝説になるかもしれないような高座にいきあえるのはすこぶるの三乗くらい難しい。
まだまだ精進が足りないなあ。
幽霊も狐も死にたい娘も「そこをなんとか」みんな仲良く 第45回「三田落語会」_e0016828_09544238.jpg
前座・朝太郎の「真田小僧」、巻き舌、いいテンポ、息子に「ばか、どじ、せこ、まぬけ!」というオヤジもオヤジだけど「資本主義ってのはさあ」などと抜かす金坊の方が何枚も上手だ。

馬石「堀の内」

台風10号君の誕生から大きく育ち道に迷うまでを仕方噺、そこからどういうつながりかでオリンピック、競歩で失格になりそうなところをコーチ?が「そこをなんとか」と拝み倒して復活三位になった、「そこをなんとか」って便利でいい言葉だ、座右の銘にしたい、と何の根拠もない話がおかしかった。

粗忽を治しに堀の内の御祖師様詣でをしろというのは友人の勧めで、カミさんは「そのまんまでいいよ」というのは初めて聴いたが馬石の工夫か。
「そこをなんとか」が本題でも登場する、あはは。
幽霊も狐も死にたい娘も「そこをなんとか」みんな仲良く 第45回「三田落語会」_e0016828_09525505.jpg
白酒「笠碁」

マクラで安倍のマリオに12億かかったというが、これも根拠なしだろうな。
「待った」をしないのに怒った旦那Aが、かつて借金の返済を待ってやったことを言いだしたの対して旦那Bが、お前がわけのわからない女に引っかかって困ったときに助けてやった、という話で対抗する。
「そもそも碁というものは2500年まえに釈尊が」などというセリフも初めてだ。

囲碁禁断症状の旦那Aが店の者に店頭が片付いていないことを「いつでもお客様を迎えられるようにしておけ」と叱る。
そこで思い出したのが昨日の酒屋、
幽霊も狐も死にたい娘も「そこをなんとか」みんな仲良く 第45回「三田落語会」_e0016828_10210752.jpg
焼酎を買おうと、呼べど叫べど、奥の部屋をのぞいても誰もいなかった。

白酒に落ち着いた味わいが出てきた。

休憩をはさんで再び白酒「安兵衛狐」

隣りの偏屈源兵衛が、長屋の連中の萩見の誘いを断って谷中に「墓見」に行って、土中から顔を出している舎利に酒をかけて埋め戻してやったら女の幽霊がお礼に現れてカミさんにしている。
それを羨んだ貧乏安兵衛が、俺も、と出かけたところが罠にかかった狐を助けるという想定外の展開。
狐が「女房にしてくれればコンなにうれしいことはない」とやってくる。
喜んでカミさんにした、、。
落語は幽霊であろうが狐であろうが分け隔てはしない、博愛主義だ。
幽霊も狐も死にたい娘も「そこをなんとか」みんな仲良く 第45回「三田落語会」_e0016828_09534961.jpg
馬石「居残り佐平次」

せっかく俺の噺をしてくれたのは感謝のほかない、、がちょっと力が入ったか、佐平次の造型が平板で俺らしくなかったのは残念なりき。
幽霊も狐も死にたい娘も「そこをなんとか」みんな仲良く 第45回「三田落語会」_e0016828_09532138.jpg
神保町に寄った後、「はじめ」。
サンマがうまかったのだが、写真を撮るのに気づいたときはハラワタを食ってしまった憐れな姿。
若い女性が一人で入って来ていうことには近所に引っ越して来たのだが、荷物を載せた(彼女も乗っていた)車が追突されてまだ引っ越せない、もう死にたい、という、ママや居合わせた客たちが「初めてきてこの店を選んだのはいいカンしてる」「はじめで始めるって不幸中の幸い」「この店は女性は(男性も)たいてい一人でくるんだよ」「もうすぐねぶた祭りだよ」、、交々元気づける。
サンマを食って「おいしい!」、酒も好きなようで死にたくなくなったようだ。


Commented by ほめ・く at 2016-08-28 12:07 x
同じ日のほぼ同じ時間に、国立の上方落語会で桂ざこばで『笠碁』を聴きました。この大店の隠居と思われる二人の造形は、船場辺りの商人が相応しいと思いましたが、高座そのものはやはり東京スタイルが好みです。
Commented by saheizi-inokori at 2016-08-28 22:38
> ほめ・くさん、上方の笠碁米朝にもあるのかな、探してみます。
確かにあの雰囲気は江戸のような気がしますけれど。
Commented by hanamomo08 at 2016-08-28 23:01
saheiziさんの落語の事を読ませてもらって私もちょっとだけ江戸情緒に浸れました。

引越し車が追突された女性、良かったですね。
お酒好きとはいいところに引っ越されましたね。
これも何かの縁、saheiziさんも時々顔を合わせるかもしれませんね。
Commented by j-garden-hirasato at 2016-08-29 06:23
「居残り佐平次」
落語の噺にあるんですね。
聞いたことがあるのか、どうか…。
Commented by saheizi-inokori at 2016-08-29 10:15
> hanamomo08さん、知らない土地に一人で引っ越してきて(川崎から)、昔の娘ほどではないでしょうが、やはり心細かったと思います。
居合わせた人たちは地元民もいれば私のようなよそ者もいて、それぞれの立場からアドバイスしてましたよ。
Commented by saheizi-inokori at 2016-08-29 10:25
> j-garden-hirasatoさん、一文無しで友人4人を引き連れて品川の遊郭で豪遊、そこで「居残り」、布団部屋に寝起きして働く調子のいい男(居残りを商売にしている)の噺です。
落語の主人公としては三悪人のひとりということになっていますが、愛嬌のある人気者でもあります。
「幕末太陽伝」という映画の主人公をフランキー堺が演じました。
Commented by hanamomo08 at 2016-08-29 11:01
はじめの彼女、作家の石田千さんと重なりました。
福島出身、日本酒を愛し、居酒屋のおじさんたちを愛する51歳。
文章が上手い!おじさんたちって観察すると面白いらしいです。
Commented by saheizi-inokori at 2016-08-29 13:12
hanamomo08 さん、鼻の下を長くしていると、どこかに登場するかもしれないですね、自戒しましょう^^。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by saheizi-inokori | 2016-08-28 11:25 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(8)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31