幽霊に怯えるギャング デニス・ルヘイン「過ぎ去りし世界」
2016年 08月 22日
昨日は東西南北、うっすらと赤らむような夕焼けだったのに、けさは音を立てて雨が降る。
ストレッチの汗を流してテレビで台風情報をみる。
被害が危惧されるところにお住まいの方には申し訳ないけれど、海っぺリの露天風呂に入って荒波騒ぐ海を眺めていたい。
風呂上りに冷えたビールをクイッとやって窓の外を眺めていたいと思う。
思うだけ、、ヨイコラサと立ち上がってベランダの風対策。
夕方新宿で落語会があるけれど大丈夫かな、大丈夫なわけないね。
新宿と言えば、さっき新橋の居酒屋のことを書いた新聞記事、見出しの「新橋」を「新宿」と読んで、あれ、この店新宿にも出来たのか。
「靴から出身地はわからない」なんのこと?「訛から」の読み違いだった。
大きな活字の方が間違えることが多い。
いや、大きいから間違いに気づくだけで、気づかずに過ぎることも多いんだろうな。
足を洗ったふりをしているマフイアのコンシリエーレ(顧問)・「委員会」メンバーのジョーがもうすぐ10歳になる一人息子のトマスと話す。
俺の先祖にそんなにいろんな血筋が入っていたら?
俺はもっといろんな色や音や匂いが分かって、もっといろんな考え方ができて、もっと面白い人生を送ったんじゃないだろうか。
会話の少し先、
「それでも、この裏社会には、ほかのほとんどの場所で見られない正直さがある」
「裏社会の一員になるのは、罪と悲しみがあまりにも大きくなり、ほかの生き方ができなくなるからだ」
こういう小説を読むのが不愉快にならないのはこの点にあるのだろう。
私欲=権力欲を満たすのみ、道徳規範もルールもない、そのうえ正直さも微塵もない連中の話と違うからだ。
殺さなければならない黒人のギャングとジョーは乾杯する。
「何に乾杯する?」「海に」、と殺される大男が答える。
昔から海を眺めるのが好きだった。
「シャッター・アイランド」や映画「ミステイック・リバ―」の原作者でミス・ルヘインの「運命の日」のコグリン・シリーズの三作目。
幽霊が登場するのだ。
加賀山卓郎 訳
ハヤカワポケットミステリ
被害が危惧されるところにお住まいの方には申し訳ないけれど、海っぺリの露天風呂に入って荒波騒ぐ海を眺めていたい。
風呂上りに冷えたビールをクイッとやって窓の外を眺めていたいと思う。
思うだけ、、ヨイコラサと立ち上がってベランダの風対策。
夕方新宿で落語会があるけれど大丈夫かな、大丈夫なわけないね。
「靴から出身地はわからない」なんのこと?「訛から」の読み違いだった。
大きな活字の方が間違えることが多い。
いや、大きいから間違いに気づくだけで、気づかずに過ぎることも多いんだろうな。
「それじゃ、どのくらいぼくは有色人種(カラード)なの?」ふっと想像する。
ジョーは肩をすくめた。「母さんの先祖に何人か奴隷がいたのは知ってる。だから母さんの血筋はたぶんアフリカから始まって、スペイン人と混じって、ひょっとすると白人もひとりかふたり入っている」(略)
「父さんは、母さんの顔が大好きだった。そのなかに世界がまるごと入っていたからだ。母さんを見ると、スペインのブドウ畑を歩いている伯爵夫人(コンテッサ)が見えるときもあれば、アフリカの部族の女性が川から水を運んでいる姿が見えるときもあった。おまえの先祖が砂漠を横切り、海を渡っているところや、袖のふくらんだ服を着て、剣を鞘に収めて旧市街の通りを歩いているところも見えた」
俺の先祖にそんなにいろんな血筋が入っていたら?
俺はもっといろんな色や音や匂いが分かって、もっといろんな考え方ができて、もっと面白い人生を送ったんじゃないだろうか。
会話の少し先、
「母さんはニガーって呼ばれてた?」「強欲と制裁に支配された彼らは、血まみれで死ぬか、ほかの人間を同じように死なせるしかない。私欲を満たすことを除いてルールも道徳規範もないくせに、すべてはファミリーのためという、正反対の幻想を広めようとしている」
父親の眼に冷たいものが入り込んだ―煮えたぎる湯も凍らせるあの灰色のものが。「父さんのまわりでそう呼ぶやつはいなかった」
「でも、みんながそう思ってるのは知ってたんでしょ」
父親の顔がまた穏やかでやさしくなった。「他人(ひと)がどう思おうと気にならなかった」
「父さん」トマスは言った。「誰かの考えが気になるなんてことあるの?」
「おまえが考えることは気になる」ジョーは言った。「それと、母さんの考えることも」
「母さんは死んじゃった」
「ああ。だが母さんはおれたちを見てると思う」
「それでも、この裏社会には、ほかのほとんどの場所で見られない正直さがある」
「裏社会の一員になるのは、罪と悲しみがあまりにも大きくなり、ほかの生き方ができなくなるからだ」
こういう小説を読むのが不愉快にならないのはこの点にあるのだろう。
私欲=権力欲を満たすのみ、道徳規範もルールもない、そのうえ正直さも微塵もない連中の話と違うからだ。
「何に乾杯する?」「海に」、と殺される大男が答える。
昔から海を眺めるのが好きだった。
海を見ると、その向こうに何があるか知らないが、とにかくあっちの世界の全部が、こっちよりましな場所という気がするんだ。歓迎され、人間として扱われる場所だと神は空ではなくて海にいると思うギャングは、一人で理髪店にいるギャングを殺しに行く、そのように仕向けたジョーはやさしい。
「シャッター・アイランド」や映画「ミステイック・リバ―」の原作者でミス・ルヘインの「運命の日」のコグリン・シリーズの三作目。
幽霊が登場するのだ。
ハヤカワポケットミステリ
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byogakudo at 2016-08-22 15:25
時々B・Oの100円棚に『シャッター・アイランド』を見かけ
ては、長いし、どうしようかなあと躊っています。
『シャッター...』も『ミスティック・リヴァー』も映画
があんまり感心できなかったので。
原作は別ものなのですが。
ては、長いし、どうしようかなあと躊っています。
『シャッター...』も『ミスティック・リヴァー』も映画
があんまり感心できなかったので。
原作は別ものなのですが。
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saheizi-inokori at 2016-08-23 00:45
by saheizi-inokori
| 2016-08-22 11:42
| 今週の1冊、又は2・3冊
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Comments(2)