代わるものを考えなくちゃ ウルリケ・ヘルマン「資本の世界史 資本主義はなぜ危機に陥ってばかりいるのか」

gakisさんの記事の通り、安倍首相の全国戦没者追悼式における式辞のなかの、
戦場に倒れられたみ霊、戦禍に遭われ、あるいは戦後、はるかな異郷に亡くなられたみ霊、皆さまの貴い犠牲の上に、私たちが享受する平和と繁栄があることを片時たりとも忘れません。
という常套句は間違いだ。
それをいうなら、
あなたがたは、赤紙一枚で無謀な戦いに駆り出され、鬼畜米英に対して降伏することなく最後の一兵となっても闘えとの愚かにして残酷かつ誤れる命令のもと、敵弾に斃れあるいは杜撰・無責任な兵站作戦のために悲惨極まる餓死をされ、そのために今私たちがその鬼畜米国の属国となり彼の核の傘の下で享受している平和と繁栄にあずかることができませんでした。
あの愚かな戦争を遂行した愚かな指導者たちに成り代わってお詫びします。
とでもいうべきだ。
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敗戦を終戦と言いつくろい、日本は国体を護持したのだから負けてはいない、それは殺された兵達の抵抗があったからこそだ、とでも言いたいのかもしれない。
靖国神社というのは不戦の誓いをするところではなくて、『祖国に何かあれば後に続きます』と誓うところでないといけないんです。
という稲田朋美の発言も伝えられる。(リテラ・赤池誠章衆院議員らとの座談会、「WiLL」06年9月号/ワック)
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カミさんと行った寿司屋で作ってくれる特製の鉄火丼、親方と、なんでSMAPのことを総理大臣や閣僚がしゃべらなきゃいけないんだと鉄火の怒りを共有した。
独裁は文化芸能を大衆操作に悪用する、いいタレントと悪いタレントを峻別する権力は危険だ。
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私たちが生きているのは市場経済のなかではなく、これまで「資本主義」以外にいい呼び名が見つからなかったシステムのなかなのです。それは国家と民間のハイブリッドであり、巨大寡占企業と、飲食店経営のような現実に無制限に競争が行われている隙間産業とのハイブリッドです。このシステムの原動力は、お金を投資すれば、そのお金が後々増えるという考えです。これが紙の上でのみ資産が増える雪だるまシステムでないとすれば、同時にモノの量も増えなくてはなりません。でも、実質成長は技術の進歩のみによって可能です。それは裏を返せば、技術の進歩がなければ資本主義は終わってしまうということです。

「市場経済」というのが私たちのシステムにとって誤った呼称であるとしても、なぜこんなに強迫観念に取りつかれたようにこの概念に固執するのでしょうか?理由は単純です。誤った理論が現実の利益につながっているからであり、暴利をむさぼっているのが大企業だからです。

イギリスの社会学者コリン・クラウチの言い方を借りれば、「新自由主義の政策が支援するのは市場よりも企業のほうである」
1964年生まれ、ドイツの日刊紙の経済部記者による、ドイツのベストセラー。

ドイツ(世界)はこのわずか10年の間に、ITバブルがはじけ(2001)、米国からに金融危機の波が押し寄せ(2007)、今はユーロ危機に瀕している。
さらにジョージ・ソロスのいうところの「スーパーバブル」もパンパンに膨らんでいつ弾けてもおかしくないところまできている。
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資本主義の誕生から現在の危機までをわかりやすく・おもしろく解き明かす。
日本にもこのくらいのことを書けるジャーナリストはいるのだろうか。

資本主義は労働者の賃金が高かったイギリスで始まった、ユーロ危機のよってきたる4つの要因、ドイツは自国労働者の賃金を上げるべきだ、緊縮財政の間違い、富裕層への増税(所得税・相続税)は当の富裕層を救う、お金を神秘化し不思議な力があると信じる点で金融業界と左翼活動家は似ている、、。
金融危機の仕組みを説明する、こういう記述を読むといつも「俺は銀行員にならなくてよかった」と思う。
一人で金融機関の悪と戦うなんてできないもの。
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どうやら資本主義に代わるシステムを模索しなければならないようだ。
そんなのあるのか。

猪俣和夫 訳
太田出版

Commented by ほめ・く at 2016-08-16 18:29 x
資本主義の搾取には3つの段階があると思います。第一は植民地からの搾取。第二は自由化の名の元に行った低賃金国労働者からの搾取。そして第三は自国の労働者を派遣や臨時、アルバイトなどの形態を利用し低賃金に抑えての搾取。今の日本は第三の段階に達していますが、自国内での格差の拡大や貧困の増大は避けられません。資本主義はどんづまりまで来ていますが、この先が見えないもどかしさ。
Commented by saheizi-inokori at 2016-08-16 20:52
> ほめ・くさん、現在の資本主義の行き詰まりは成長の限界、市場の限界のなかで金融危機、財政危機、実体経済の危機が相互に関連しあって、出口が見いだせない、それがグローバルに展開されている、一方で環境問題などの解決策も見いだせないという、まさに先が見えないところに来ていますね。
Commented by ikuohasegawa at 2016-08-17 06:16
この鉄火丼は確かに「特製」だ。
間違いなく旨いでしょうね。
Commented by j-garden-hirasato at 2016-08-17 06:46
いろいろな具合の悪さをリセットするために、
戦争へと向かっていくんだろうなあ。
もう、向かわされているんでしょう。
Commented by tona at 2016-08-17 08:46 x
追悼式式辞、全くその通りですね。いつも同じ心のない言葉の羅列、歴史を勉強していない発言に胸が悪くなります。
安倍首相のお友達群も嫌な感じ。
Commented by saheizi-inokori at 2016-08-17 08:59
> ikuohasegawaさん、ついついむしゃむしゃと平らげてしまう、カミさんの体調の悪いときに作ってくれた特別サービスが今では定番サービスになりました。
食い過ぎるのでご飯を少なくしてもらうのです。
Commented by saheizi-inokori at 2016-08-17 09:00
> j-garden-hirasatoさん、軍産国家の生理はおぞましいです。
Commented by saheizi-inokori at 2016-08-17 09:04
> tonaさん、≫歴史を勉強、ねじ曲げて勉強しているのでしょうね。
偏狭なプライド・劣等感(自身の)を癒すために国家の物語をねつ造している。
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by saheizi-inokori | 2016-08-16 12:11 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(8)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori