大変なことになってるんです! 樋口陽一・小林節「『憲法改正』の真実」

去年の9月19日未明、固唾を呑んでテレビを見ていた。
発言内容も「聞きとれない」と記録されるような異常な状態で、何本もの違憲法律が一括可決された。
怒りに燃えた俺はどこに行ったのだろう。
政権の思惑通り、メデイアの誘導通り、怒りは風前の灯だ。
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あの日、日本の戦後史上はじめて、権力者による憲法破壊が行われた。
それは2015年4月、自国の議会で議論をする前に、安倍がアメリカ合衆国の議会でなされた演説のなかの「夏までに成立させる」という約束にもとづいて強行された。
立憲主義も民主主義も死んだのだ、私たち日本人は、今までと違う社会、異常な法秩序のなかに生きている。

その、憲法を否定した当の権力者が、憲法を改正しようとしている。

奪われてしまった民主主義を奪還すること、破壊されてしまった憲法を回復すること、壊されつつある日本の社会を守ること。
そのために、法の専門家である我々が、市民とともに、抵抗していかなくてはならない。
長い戦いが始まっている。

樋口陽一。
1934年生まれ、東京大学・東北大学・パリ大学名誉教授、国際憲法学界名誉会長、日本学士院賞受賞、レジオンドヌール勲章受勲。
政治とは距離をおいて生きてきた泰斗が日本の危機に立ち上がった。
護憲論。

小林節。
1949年生まれ、慶応大学名誉教授、弁護士、元ハーバード大学ケネディ行政大学院フエロー。
改憲論者でもあり長年自民党のブレインとして議員の勉強会などに関わってきた。
その自民党議員たちの多くが、「近代憲法とはなにかについて、まったくといっていいほど理解を示さない、理解できない」状態であることにあきれ果て、「現時点では、憲法改正は断じて行うべきではない。あの思いつめた人たちが、どこへ憲法をもっていってしまうのか、本当に不気味」として「体を張って抵抗している」。
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「護憲」「改憲」と二人の結論は異なっていても、憲法についての基本的理解は共通だ。
それは、
 
① 権力は制限されねばならぬ。
法律が国家の意思として国民の活動を制約するのに対し、憲法は、国民が権力に対して、その力を縛るもの。憲法を守る義務は権力に課され、国民は権力者に憲法を守らせる側に立つ。

② 近代立憲主義の実質的内容は「人権」であり、さかのぼって「個人」を社会の価値の源泉とする考え方である。
天賦人権説が根っこにある。

こういう考え方をしごく当たり前と思う人が圧倒的多数であると思うし、そうでありつづけて欲しい。
世界のほとんどの民主主義・立憲主義の国では常識だ。
現に安倍は上記アメリカ議会の演説で、日米は「法の支配、人権、そして自由を尊ぶ、価値観を共にする結びつき」だと言って拍手された。
しかし自民党の憲法改正草案を押し立てる改憲派の議員の考え(=安倍の考え)を正直にいうならば、
日本国民には生まれながらにしてもつ権利はございません。それが日本の伝統です。国に奉仕してはじめて権利がもらえる美しい国です。
となるはずだった。
そうであればアメリカ人はKが安倍を乗っ取ったと思ったかもしれない。
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老学者とは思えないほどの熱と怒りのこもった・しかも明晰な対話に引き込まれて一気に読んでしまった。
そのポイントを何回かに分けて紹介するつもりだ。

集英社新書
Commented by maru33340 at 2016-05-08 11:45
この本、読みたいと思います。
Commented by unburro at 2016-05-08 12:34
<そのポイントを何回かに分けて紹介するつもりだ。>

有難い!です。
期待してます。っていうか、自分で読めよ…とも思いますが、
やっぱり、よろしくお願いいたします。

しかし、去年の9月の怒りと絶望、について、
忘れたわけではないけれども、ちょっと横へ置いておく…
という気分になっている自分を再発見してしまいます。 
だって、怒りっぱなしは身体に悪い…

九州の地震も、東北の復興も、原発も、待ったなしで迫ってくるこの国の危機が目白押しです。
その基本となる憲法を忘れてはいけないのですよね。
アメリカのトランプ人気は絶望的ですが、安倍政権を支えているのも、同じ構図なのだと思います。
自分や家族の健康や平和を守ることに精一杯ではありますが、
怒りや疑問を忘れないようにしたいと思います。
Commented by sora at 2016-05-08 13:57 x
この本、とても気になっていました。
きょうの記事、そして
「何回かに分けてポイントを。。。」 ありがたいです。

アベは、此方に来てたのかしらん  
当地の報道に見かけず    
Commented by saheizi-inokori at 2016-05-08 15:24
> maru33340さん、余人にあらず、樋口氏ですからね。
Commented by saheizi-inokori at 2016-05-08 15:28
> unburroさん、私もいっぺんにまとめて書くとなると今日の記事くらいになってしまうし、自分の頭の整理・忘れないためにも反芻しながら書く方がいいのです。

たしかにこちらは憲法や地震や原発以外にも考えなきゃいけないことがたくさんあっていつまでも怒りまくっているわけにもいきませんね。
でも敵はそれが狙い、彼らは日本解体が日々の仕事だから困ったものです。
忘れないわ!が絶対必要です。
Commented by saheizi-inokori at 2016-05-08 15:31
> soraさん、メルケルにサミットでは財政出動の必要ということでよろしくね、と言ってすげなくケッチン食らいました。
残念ながら人物の器が違い過ぎて勝負にならないです。
ロシアにいってプーチンと意思疎通ができたとはしゃいでいますが、掌の上で転がされているようです。
Commented by jarippe at 2016-05-08 15:39
嘆かわしい事態ですね
国民が揃って立ち上がらないといけないですね
昭和史を勉強しないとなりません
北朝鮮のこととやかく言っていますが
祖父を尊敬しその路線で進もうとしているところ
あれ? 似ているぞと思いました
小林節さん 先日こちらへ来てくださいました
私は病院でしたが いろんなお話を見聞きして
支持率を下げ次の選挙に反映させないといけないですね
またいろいろ教えてください

Commented by tocotoco-o3po at 2016-05-08 18:26
お久しぶりです。ほんとに憲法は難しいです(汗)
なかなか本を読む時間をもてなのと、読んでもすぐ理解はできないのですが…マスコミや報道に流されないで自分で考える力をつけるためにも本を読むことも大事だなと感じています。
最近は地方紙だけではなく他の新聞もとりはじめました(^O^)
たいせつな一票ののためにも日頃から少しずつ新聞や本も読みたいと感じています~。
Commented by at 2016-05-08 21:05 x
紹介期待する。
マスゴミの垂れ流しはココまでも来てるらしいが、
私には入って来ない。その代わり、日本の流行は全く知らない。
てか、その流行すらマスゴミが作り出した物なんやな、
Commented by saheizi-inokori at 2016-05-08 21:33
> jarippeさん、まったく、北朝鮮が理想の国みたいな連中のやりかたですね。
長い戦いと9歳も年上の碩学に言われたらがんばるのみです。
Commented by saheizi-inokori at 2016-05-08 21:34
> tocotoco-o3poさん、お元気でしたか。
少しずつでもいいじゃないですか。
ひとつひとつやっていきましょう。
Commented by saheizi-inokori at 2016-05-08 21:41
> 蛸さん、スマップがどうしたの、ベッキーがこうしたの、どこの国のことかと思う。
たまに政治家を扱うかと思うと、都知事が湯河原の別荘に毎週公用車で行くというようなことを大事そうに報道、肝心の違憲状態については一部新聞以外は触れないどころか擁護する始末です。
Commented by antsuan at 2016-05-08 23:59
吉田茂による日米安保条約調印こそが、初めての憲法破壊ではないでしょうか。
Commented by j-garden-hirasato at 2016-05-09 06:48
ロクに議論もせず、
数にモノを言わせて強行採決。
日本の民主主義って何だろう、
いつもそう思います。
Commented by saheizi-inokori at 2016-05-09 08:54
> antsuan、アメリカ従属の道を開いた、ということですか。
そうであっても憲法があるからアメリカのやる無法なテロまがいの戦争とつきあわずにやってこれたのでしょう。
安倍などが考える憲法改悪をしたら、そうはいかない、地球の裏側にまで日本の兵隊がかりだされるのではないでしょうか。
Commented by saheizi-inokori at 2016-05-09 08:56
> j-garden-hirasatoさん、まったくです。
そういう連中が現状でも権力行使が不十分として憲法を変えようというのです。
恐ろしいことこの上なし!
Commented by ほめ・く at 2016-05-09 16:33 x
自民党の憲法草案を見ていくと、要は「いつでも戦争が出来る国」にすることを目的に置いています。いま盛んに強調している「緊急事態条項」は戦争の時にこそ絶対に必要になるからです。国民の義務を強調するのも「国防」の義務化が狙いでしょう。
5月初めの各メディアの憲法に関する世論調査で、全てのメディアで改憲に反対している人が増えているのも、彼らの真の狙いに国民が少しずつ気が付き始めたという事でしょう。油断は禁物ですが、多数の国民の意見は正しい方向へ向かっているように思います。
Commented by saheizi-inokori at 2016-05-09 20:51
> ほめ・くさん、まさにまさに油断は禁物、権力側は虎視眈々です。
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by saheizi-inokori | 2016-05-08 11:27 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(18)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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