男はみんなバカばかり 第574回「落語研究会」
2016年 04月 28日
少し早めに出てあちこち歩いて、、なんて考えていてもいつの間にか時間が過ぎて、せいぜい銭湯に入る時間くらいしか取れなくなる。
そういう時に限って何を着ていくか迷う。
暑いのか寒いのか雨は降るのか、今の季節に合うようなアウターがないのだ。
思えば現役時代はよかった、ワイシャツとスーツでどこにでも行った。
サンチの散歩にはうちのなかで着ているダラッとしたパンツが基調。
外を歩けば毎日いろんな人に会って話もする、だったらもう少しきちんとしなきゃと思うが、面倒なのとちょうどいいものがないんだなあ。
早く夏になれ。

銭湯から出て国立劇場、開場5分前、そこらをぶらぶら。
皇居周りのジョギング、あの頃、楽しかったなあ。
馬るこ「夢八」
眠れない、夢ばかり見ている、眠っているのか起きたまま夢を見ているのかわからない。
そんな夢八に甚兵衛さんが、「つりの番」を頼む。
ひと晩で2円、二段重ねの弁当つきだぞ。
二つ返事で夢八が引き受けて、連れていかれた長屋の一軒、甚兵衛さんがマキザッポを渡して、夢を見ないようにこれを叩き続けろ。
不得要領のままに、そこは夢八能天気、出された弁当に舌鼓を打ちながら、タンタンタタタン、まきを叩き続ける。
なにやら生臭い空気。
おや、誰もいないと思ったら、いるじゃないか、、ずいぶん背の高い人だな。
どうです、一つ食いませんか。
えっ!足がない!
「つり」はつりでも「首吊り」死体が奥にぶらさがっている。
腰を抜かしそうになっても叩き続けるマキザッポ。
窓から老猫が覗いて、脅かしてやれと、息を吹き込んで死体を揺らしたり、「手を握ってくれ」「伊勢音頭をうたえ」「西洋の音楽をやれ」、しゃべるのだ。
そういえばブログを始めた頃、夢八さんという方とオフ会をなんどかやったなあ、お元気でいらっしゃるのかなどと余計なことも考えていた。

扇蔵「将棋の殿様」
昨年3月遊一から真打になったばかり。
世間知らずの殿様が部下と将棋をやるのはいいが、殿の駒を取ってはならぬし、自分の駒はルール無視でどこにでも動ける、負けた部下は鉄扇で頭を叩かれる。
それを、歴戦の老雄・田中三太夫が将棋の相手をしながら諫める、逆命利君。
トンチでやり込めるとかいうのではなく正々堂々と正論を吐く。
ギャグはほとんど挟まない。
これで聴かせるためには殿、三太夫、その他の部下の造型と噺の間がよほどできていなければならない。
肝心の三太夫が若々しかったり、殿の我がままに滑稽が感じられない(部下の受け方も相まって)のがちょっと残念、硬くなったかな。
大師匠・扇橋の芸風を受け継ごうと人のやらない噺に真正面からチャレンジし、てらいのない高座は好感が持てるんだけど。
雲助「菊江の仏壇」
周りが心配するほど真面目な若旦那が遊びを覚えたら人が変わったように遊びに夢中。
これは嫁を持たせるにしかず、と非の打ち所のない娘・お花に合わせると、若旦那も気に入って、一人娘を拝み倒して嫁にする。
三か月ほどは仲睦まじいのだが、その後は若旦那は芸者の菊江に入りびたり。
お花は自分が至らないからかと、気に病みとうとう寝付いて実家で養生。
それなのに若旦那は一度も見舞いにいこうともしない。
病状思わしくないと聞き、父が代わりに見舞いに行く。
その留守中に若旦那は番頭の弱みをついて、菊江に会いに行こうとする。
番頭は大旦那から戒められているから、菊江を店に呼ぶことにする。
店は早じまいをして店員たちには無礼講で好きなものを飲み食いさせて、奥の部屋に菊江を呼び番頭も相伴で酒を呑む。
やがて店中が丼叩いてテヤテヤテヤ、磯節踊って大騒ぎ。
そこに帰らないはずの大旦那が、お花が死んだと後悔やら不憫やら堪らない気持ちで帰ってくる。
慌てた若旦那、菊江を大きな仏壇の中に隠すが、、大旦那が燈明をあげようとしてあけてびっくり。
菊江はお花にそっくりなのだ。
番頭に言われて清蔵が菊江を迎えに行ったとき、ちょうど髪を洗ったばかりで白薩摩のちらし髪のまま駕籠に乗せられてきた(そこを言わなかったのは時間のせいか)。
大旦那はお花の幽霊と思い、「往生してくれ」、菊江が「私も消えとうございます」。
ちょっと長くなったが、大旦那が若旦那に説教する場面、若旦那が番頭に女がいるのを知っていると脅す場面、クスグリも入ってさすがに聴かせる。
番頭と若旦那が手を結び菊江を呼び寄せる相談をするところで、あんなに良く出来た美人でもあるお花をなぜ大事にしないのか、と訊くと「そこが我慢できない。すべて先へ先へとやってくれて、俺が何を考えているのかもわかっているようで、ひと時も気が休まらない」と答える。
真面目一方、信心だけが道楽のようにして一代で身代をこさえた父親とそれを支えた番頭。
美人の上に毛ほどの隙も見せない三国一の花嫁。
若旦那が鬱屈するのもわかるな。

歌武蔵「無精床」
身体は大きいけれど軽妙に、ほんとは怖い床屋の噺で笑わせてくれた。
「がんばれ、前畑」「カルメ焼きみたいだ」、懐かしい言葉が出て、思わず笑ったらそのたんびに「ちょっと、もう通じないかな、なんせ古典落語ですから」とクスグリ、そのタイミングにまた笑ってしまう。

市馬「花見の仇討ち」
少し痩せたようだけど、得意の一番を楽しく聴かせてくれた。
始めは歌武蔵を聴いたら帰ろうかと思っていたが、なんだかものたらないような気がして残ってよかった。
「菊江」が重かった・重く感じる気分だったのかもしれない。

「はじめ」がまだ休み、ほんとに困る。
常連の皆さん、どうしているんだろう。
そういう時に限って何を着ていくか迷う。
暑いのか寒いのか雨は降るのか、今の季節に合うようなアウターがないのだ。
思えば現役時代はよかった、ワイシャツとスーツでどこにでも行った。
サンチの散歩にはうちのなかで着ているダラッとしたパンツが基調。
外を歩けば毎日いろんな人に会って話もする、だったらもう少しきちんとしなきゃと思うが、面倒なのとちょうどいいものがないんだなあ。
早く夏になれ。

皇居周りのジョギング、あの頃、楽しかったなあ。
馬るこ「夢八」
眠れない、夢ばかり見ている、眠っているのか起きたまま夢を見ているのかわからない。
そんな夢八に甚兵衛さんが、「つりの番」を頼む。
ひと晩で2円、二段重ねの弁当つきだぞ。
二つ返事で夢八が引き受けて、連れていかれた長屋の一軒、甚兵衛さんがマキザッポを渡して、夢を見ないようにこれを叩き続けろ。
不得要領のままに、そこは夢八能天気、出された弁当に舌鼓を打ちながら、タンタンタタタン、まきを叩き続ける。
なにやら生臭い空気。
おや、誰もいないと思ったら、いるじゃないか、、ずいぶん背の高い人だな。
どうです、一つ食いませんか。
えっ!足がない!
「つり」はつりでも「首吊り」死体が奥にぶらさがっている。
腰を抜かしそうになっても叩き続けるマキザッポ。
窓から老猫が覗いて、脅かしてやれと、息を吹き込んで死体を揺らしたり、「手を握ってくれ」「伊勢音頭をうたえ」「西洋の音楽をやれ」、しゃべるのだ。
そういえばブログを始めた頃、夢八さんという方とオフ会をなんどかやったなあ、お元気でいらっしゃるのかなどと余計なことも考えていた。

昨年3月遊一から真打になったばかり。
世間知らずの殿様が部下と将棋をやるのはいいが、殿の駒を取ってはならぬし、自分の駒はルール無視でどこにでも動ける、負けた部下は鉄扇で頭を叩かれる。
それを、歴戦の老雄・田中三太夫が将棋の相手をしながら諫める、逆命利君。
トンチでやり込めるとかいうのではなく正々堂々と正論を吐く。
ギャグはほとんど挟まない。
これで聴かせるためには殿、三太夫、その他の部下の造型と噺の間がよほどできていなければならない。
肝心の三太夫が若々しかったり、殿の我がままに滑稽が感じられない(部下の受け方も相まって)のがちょっと残念、硬くなったかな。
大師匠・扇橋の芸風を受け継ごうと人のやらない噺に真正面からチャレンジし、てらいのない高座は好感が持てるんだけど。
雲助「菊江の仏壇」
周りが心配するほど真面目な若旦那が遊びを覚えたら人が変わったように遊びに夢中。
これは嫁を持たせるにしかず、と非の打ち所のない娘・お花に合わせると、若旦那も気に入って、一人娘を拝み倒して嫁にする。
三か月ほどは仲睦まじいのだが、その後は若旦那は芸者の菊江に入りびたり。
お花は自分が至らないからかと、気に病みとうとう寝付いて実家で養生。
それなのに若旦那は一度も見舞いにいこうともしない。
病状思わしくないと聞き、父が代わりに見舞いに行く。
その留守中に若旦那は番頭の弱みをついて、菊江に会いに行こうとする。
番頭は大旦那から戒められているから、菊江を店に呼ぶことにする。
店は早じまいをして店員たちには無礼講で好きなものを飲み食いさせて、奥の部屋に菊江を呼び番頭も相伴で酒を呑む。
やがて店中が丼叩いてテヤテヤテヤ、磯節踊って大騒ぎ。
そこに帰らないはずの大旦那が、お花が死んだと後悔やら不憫やら堪らない気持ちで帰ってくる。
慌てた若旦那、菊江を大きな仏壇の中に隠すが、、大旦那が燈明をあげようとしてあけてびっくり。
菊江はお花にそっくりなのだ。
番頭に言われて清蔵が菊江を迎えに行ったとき、ちょうど髪を洗ったばかりで白薩摩のちらし髪のまま駕籠に乗せられてきた(そこを言わなかったのは時間のせいか)。
大旦那はお花の幽霊と思い、「往生してくれ」、菊江が「私も消えとうございます」。
ちょっと長くなったが、大旦那が若旦那に説教する場面、若旦那が番頭に女がいるのを知っていると脅す場面、クスグリも入ってさすがに聴かせる。
番頭と若旦那が手を結び菊江を呼び寄せる相談をするところで、あんなに良く出来た美人でもあるお花をなぜ大事にしないのか、と訊くと「そこが我慢できない。すべて先へ先へとやってくれて、俺が何を考えているのかもわかっているようで、ひと時も気が休まらない」と答える。
真面目一方、信心だけが道楽のようにして一代で身代をこさえた父親とそれを支えた番頭。
美人の上に毛ほどの隙も見せない三国一の花嫁。
若旦那が鬱屈するのもわかるな。

身体は大きいけれど軽妙に、ほんとは怖い床屋の噺で笑わせてくれた。
「がんばれ、前畑」「カルメ焼きみたいだ」、懐かしい言葉が出て、思わず笑ったらそのたんびに「ちょっと、もう通じないかな、なんせ古典落語ですから」とクスグリ、そのタイミングにまた笑ってしまう。

少し痩せたようだけど、得意の一番を楽しく聴かせてくれた。
始めは歌武蔵を聴いたら帰ろうかと思っていたが、なんだかものたらないような気がして残ってよかった。
「菊江」が重かった・重く感じる気分だったのかもしれない。

常連の皆さん、どうしているんだろう。
「菊江の仏壇」…
こんな噺があるのですね、複雑ですねえ。
私は、至らぬ嫁で良かったなあ、なんて安心しました。
もちろん、美人でもないし…(笑)
袋吊り、責め、とか、ちょっと拷問の様な名前のお酒ですね。
書体がサディスティックだから、かな…
やっぱり、辛口ですか?
こんな噺があるのですね、複雑ですねえ。
私は、至らぬ嫁で良かったなあ、なんて安心しました。
もちろん、美人でもないし…(笑)
袋吊り、責め、とか、ちょっと拷問の様な名前のお酒ですね。
書体がサディスティックだから、かな…
やっぱり、辛口ですか?
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市馬が痩せた?
それにしても市馬を残して帰ろうというのは大した贅沢ですねえ。
それにしても市馬を残して帰ろうというのは大した贅沢ですねえ。
三枚目のお写真のピンクの色した葉がありますが、何の木でしょう?優しい色ですね。紫蘭も美しいです。市馬さんの落語お聴きしたことがありました。とても上手で味があり良かったです。痩せられたのですね。・・お元気でいられることを!
> unburroさん、元は上方落語なんだそうです。
「長命(短命)」なんてのもありますね、落語国の男はいい女にコンプレックスがあるのかもしれない。
酒のレッテル、そう思いますよね、フツー。
それなのに同じことを言ったら昨日の店のマスターは「そう珍しいネーミングじゃない」とかSM感覚についてはまったく反応しないのです。
さっき「しらいし」で話をしたら「責め、ってのは普通命名しないでしょう」。
袋吊りは酒の作り方らしく「責め」は最後に残ったところのようです(しらいしによれば)。
昨日の「責め」は濃口とでもいうのかな、手ごたえはありました。
「長命(短命)」なんてのもありますね、落語国の男はいい女にコンプレックスがあるのかもしれない。
酒のレッテル、そう思いますよね、フツー。
それなのに同じことを言ったら昨日の店のマスターは「そう珍しいネーミングじゃない」とかSM感覚についてはまったく反応しないのです。
さっき「しらいし」で話をしたら「責め、ってのは普通命名しないでしょう」。
袋吊りは酒の作り方らしく「責め」は最後に残ったところのようです(しらいしによれば)。
昨日の「責め」は濃口とでもいうのかな、手ごたえはありました。
> hanamomo08さん、歌武蔵は以前よりスマートになったような感じがしました。
その分、芸の方は大きくなってゆとりを感じました。
一に集っていた人たち、困っているだろうなと思います。
いい居酒屋という存在の大きさを思いました。
その分、芸の方は大きくなってゆとりを感じました。
一に集っていた人たち、困っているだろうなと思います。
いい居酒屋という存在の大きさを思いました。
『夢八』は、かつて談春との二人会での雀々の素晴らしい高座を思い出します。
別題『伊勢音頭』、上方ネタですので、東京の噺家でこなせる人は、そう多くないように思います。
馬るこにあのネタ・・・落語研究会の演者とネタの選定では、最近疑問に思うことが結構あります。
はじめ、まだですか。
私の全快を待ってくれているのかな(^^)
別題『伊勢音頭』、上方ネタですので、東京の噺家でこなせる人は、そう多くないように思います。
馬るこにあのネタ・・・落語研究会の演者とネタの選定では、最近疑問に思うことが結構あります。
はじめ、まだですか。
私の全快を待ってくれているのかな(^^)
> kogotokoubeiさん、わざとミスマッチ気味のネタに挑戦させようとしているのかな、なんせ研究会ですから。
はじめ、早く出てこいと思う反面、完全に良くしてからにしてくれ、とも思います。
幸兵衛さんとの酒も同じです。
はじめ、早く出てこいと思う反面、完全に良くしてからにしてくれ、とも思います。
幸兵衛さんとの酒も同じです。
たしかに「研究会」ですからね(^^)
なるほど、「はじめ」の女将さんと私は、同じような状況にあるのかもしれない。
焦らず、しっかり治す、ということか。
肝に銘じます。
前のコメントの誤りを訂正します。
『伊勢音頭』ではなく、『伊勢詣り』でした。
失礼しました。
『夢見の八兵衛』とも言っていたようですが、それを縮めた『夢八』が普及したのでしょう。
なるほど、「はじめ」の女将さんと私は、同じような状況にあるのかもしれない。
焦らず、しっかり治す、ということか。
肝に銘じます。
前のコメントの誤りを訂正します。
『伊勢音頭』ではなく、『伊勢詣り』でした。
失礼しました。
『夢見の八兵衛』とも言っていたようですが、それを縮めた『夢八』が普及したのでしょう。
by saheizi-inokori
| 2016-04-28 11:34
| 落語・寄席
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