日本の王朝交代がなされなかったワケ 近藤成一「鎌倉幕府と朝廷」

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きのうの夕方は等々力渓谷を散歩した。
30分もかからない、もっとしょっちゅうくればいいのだ。
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頼朝は義経の逃亡を利用して、自ら大軍を率いて奥州合戦を演出する。
演出というのは、勝てるとわかっている戦いによって全国支配の達成をかたちで示したのだ。
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1190年11月、頼朝は30年ぶりに上洛して権大納言兼右近衛大将に任じられるが、12月には両官を辞して鎌倉に帰ってしまう。

1311年に得宗(執権・北条家の当主)貞時が死んだときには30日間の天下触穢(頼朝・義時の時以来)が定められた。
執権としての地位をはなれて10年も経過していたのに、時頼の死に際してもなかった天下触穢。
得宗として生まれたというそのことによって、その身体の死が天下触穢の原因となると考えられた。
このような得宗はもはや王権の属性を有するというべきだが、貞時の官位は従4位下相模守、公卿以下だった。
得宗は従一位太政大臣・清盛のように官位を求めなかった。
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京都から百里以上を隔てた僻遠の地・鎌倉に三方を山に囲まれて150年間存在し続ける幕府の意味がそこにあった。
もし頼朝が京都に居続け、幕府を創設せずに朝廷を利用して政治を行ったとしたら、彼は天皇にならざるを得なかっただろう。
足利幕府のときには、すでに朝廷と幕府の分離が完成している。
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「万世一系の天皇」とはかくして維持された。
本書に明らかにされる鎌倉時代の天皇たちのありようはみじめにみえる。
院政により治天の君となるために自分の子を天皇にしようと、そのために誰を皇太子にすべきかと摂関家が入り乱れて権謀術数を尽くし、所領を守るために奔走し、手に余るときは鎌倉に助けを求める。
皇子を将軍にし、将軍を皇太子にしようと画策する。

皇統を守るというのは、皇位についた先祖の法要を継承することにすぎない。
そこに財源として膨大な荘園群がついてくるから、その継承が政治問題になった。
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広大な未墾地があった12世紀までは子女にたいして分割相続が適当であったが、開発が進むと分割相続するにたる規模の所領が遺されなくなる。
遺産相続をめぐる兄弟の訴訟の頻発が訴訟制度の改革を必要とし、承久の乱などの戦争が土地の再配分を促すが、やがて単独相続に移行していく。
加えて、本所、地頭、下司という重層的な土地管理もそのままではいられず、下司や訴訟で負けた地頭などが「悪党」となって、幕府の存立基盤を揺るがす。

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徳政令に対する不満が鎌倉幕府をゆるがしたという通説に対して、徳政とは本来乱れてしまった政治を理想に戻そうということであつて、質流れや売却地の取り戻しを命ずる徳政令は、その一部に過ぎず、それを正当とする見方が社会的に定着していて法令によらず事実行為として行われる場合もあつた、と捉える。
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著者は東京大学史料編纂所に34年間在職、一貫して『大日本史料 第五編』の編纂に従事してきたという。
そのうち、著者が直接出版に関わったのは、1248年から1251年までについての9冊、本書の記述では数行分だ。
その数行分ですら、百年以上も先輩たちが蓄積してきた材料を前提にしている。
逆に著者たちが蓄積する材料を百年以上も後の人たちに渡される。
そういうことが繰り返されていく。
あとがきの言葉が、文科系大学の廃止みたいな暴論に対する痛烈な異議申し立てのように読めた。

岩波新書

Commented by j-garden-hirasato at 2016-04-21 06:35
大学の学部も、
時代とともに変わっていくものですね。
最近の学部・学科名は、
何をやっているのか、
全然わからない名前のものが多いです。
自分の学んだ学科も、
統廃合されて、なくなっちゃったしなあ…。
Commented by Vimalakirti at 2016-04-21 10:13
新緑の等々力渓谷、気持ちよさそう。都心にこんな渓谷があるなんて
すばらしいですね。木々は空気浄化作用、温度調節作用、保水作用、
などどれほど貢献しているか知れませんね。樹木礼讃!
Commented by saheizi-inokori at 2016-04-21 10:36
> j-garden-hirasatoさん、学科の統廃合が学際的な学問の進化に役立っているのならいいのですが、たんなる合理化・経費削減策だったら困りますね。
Commented by saheizi-inokori at 2016-04-21 10:39
> Vimalakirtiさん、桜も良かったけれど、新緑の日々もいいです。
さわやかな風が吹き抜けるとなんとも言えない力がわいてくるようです。
Commented by tona at 2016-04-21 12:51 x
興味深い内容を拝見しました。
思いがけない内容でもあります。
学者さんの地味な研究が綿々と受け継がれていくのですね。

この季節、まだやきいも屋さんあり、食べたくなります。
Commented by saheizi-inokori at 2016-04-21 21:17
> tonaさん、歴史学は学生時代に学んだことがいろいろ書き換えられていくのですね。
一生学び続けないといけないのでしょうが、なかなか。
焼き芋やさん、試食を薦めてくれましたが、食べずに過ぎてしまいました。
食べればよかった。
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by saheizi-inokori | 2016-04-20 12:29 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(6)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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