「身分の差はつまらねえ」とはっつあんが殿公に言った@末廣亭中席夜の部

某先輩を囲む集まり、東京駅前の中央郵便局にある「KITTE」・「菜な」で一時から、八人集まった。
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熊本地震の話題から、俺が「テレビで熊本の人の訛りを聴くと熊本出身の親戚を思い出す。言葉が同じだと人柄まで似ているように感じる」というと、鹿児島出身の先輩が、「その言葉が俺の方では外国語に聴こえるのだよ。」、若いころから、ひとまとめに「九州出身」と言われるのは心外だったとおっしゃる。
秋田の人が「東北出身」、広島の人が「中国出身」と言われるのはどうなのだろう。
北海道の人がひとまとめに言われるのを嫌がるかどうか、二説に分かれた。
いつの間にか全員七十を超えて、ある先輩は「俺さあ、こないだ八十だぞ!驚いたなあ」という。
昭和五十七年に作者六十八歳で書き始めた「隅田川暮色」は昭和三十五年のこととして、老舗の老女八十七歳の、足腰は弱ったけれど口先はますます達者なことを、取り立てて描いている。
今の小説では九十歳を超えないと老女の凄さとはならないだろう。
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案の定、酒の一本も明かぬうちに青年たちの会話となった。
会津の酒、つぎは青森で、新潟の酒も、、冷や酒がどんどん。
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三時半に次回は七月にと約束してお開き。
腹は膨れたし酒にも酔った。
まっすぐ帰るのは何となくもったいない、と中央線に乗って新宿に。
新南口に新しいバスターミナルやショッピングセンターができたと聞いていたのでちょっと覗いてみる。
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肝心のビルのなかには入らない。
それでも、家族連れを含めて多くの人が楽しそうに憩えるスペースができた(電車を俯瞰できる)のを喜ぶ。
直しに出していたメガネを受け取り、伊勢丹の方の人の流れも見に歩く。
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伊勢丹まで来たのなら、末広亭でしょう。

ちょうど夜の部前座が終わったところ。
とくによかったものだけを。
鯉ん・「新聞記事」
 二つ目になったばかり、威勢がいい。
吉幸・「権助魚」
 立川流から移籍、前座11年、人生の4分の一を前座生活というだけあって達者な噺。
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蝠丸・「動物園」
 アルバイトで着ぐるみを着て、動物園で虎になって、終わったかと思ったら水族館でアザラシになり、もう終わるかと思うと、植物園で松の木になる。
細部を丁寧に演じ、クスグリも悪くない。
伸乃介・「高砂や」
 お顔がご不自由なご婦人に、酔っぱらいが「ブス」と面罵すると、ご婦人が「何よ、酔っぱらい!」、すると酔っ払いが「酔っ払いだよ、でも明日は治るよ」。
多くの噺家はこの後に「あんたは治らない」とつける。
独特の味がある。
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遊三・「長屋の花見」
 この季節、いちどは聴きたい噺を願ってもない久しぶりの遊三で楽しめるとは!
八十近いだろうが、気持ちよく肥えてつやつやした顔、数年前に見た時よりも元気なくらいだ。
ビンハナ、貧乏人の花見、花見だ花見だ、(合いの手・夜逃げだ夜逃げだ)、毛氈ならぬ茣蓙を担いで揃って花見。
下戸だからってお茶けを断り、歯が悪いからって卵焼きを断る。
そういえば練馬にも蒲鉾畑がなくなったねえ。

定番のギャグをいいテンポで語る大ベテラン、よかった。
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遊之介・「真田小僧」
 この人、次に出る南なん、どちらもややデフォルメされた顔。
寿輔や小柳枝などに稽古をつけてもらったのか、楽屋で聞いて覚えたのか、芸協の噺家には独特の心地よい調子がある。
あまり芸協の寄席に行かないのがバカみたい、癖になりそうだ。
チャーリーカンパニー・コント
 お通夜の道案内をしていると酔っぱらいがやって来てもう少し飲みたい。
あっちへいけば飲み放題食い放題だ、カラオケはないけれど合唱(合掌)はある、余興はないけれどお経はある、、。
南なん・「めがね屋」
  子供のころに聴いたか読んだかした噺。
泥棒がメガネ屋の中の様子を節穴から覗くと(「がんをはる」という)、中の小僧が像がいくつも見える将門メガネを穴に押し当てたら、手習いする子供がたくさんいる寺子屋に見え、望遠鏡をつけたら猫が虎に見え、反対につけたら「ああ、こんなに長い部屋に入ったら夜が明けちゃう」。

兄貴と間抜けな新入り泥棒コンビのやり取りが愉快。
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ボンボンブラザーズ・曲芸
 鼻の頭に紙切れをおったてて、紙の導くままに舞台から桟敷まで右往左往する看板の芸。
腹を抱えて笑い、いささかのペーソスも感じたのはもう十年以上も前だ。
健在といえば健在だったけど、、。
遊馬・「妾馬」
 駕籠に乗った殿様がお鶴に目をとめるところから、八五郎が酔っ払って殿様に下手な都都逸をやってみせるまで。
大らかで陽気な芸。
玄関で案内を乞うのは「ぴらんめえ」じゃなくて「んちわ!」、「オッ奉る」はっつあんの挨拶もわかりやすくしてある。
お袋が初孫を抱けないのを嘆いて「身分の差は詰まらねえ、自分の孫を抱ける時代が早くこねえか」とボソッと殿の前でいう。

まっとうな「妾馬」だが、新しい「妾馬」だ。
平成26年度(第69回)文化庁芸術祭賞 大衆芸能部門 <大賞>、なるほど。
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はねると、寄席の前に行列、この後、ワンコイン深夜寄席、若手たちが頑張るらしい。
すっかり昼の酒の気も消えたが、今日のところは飲まず食わずで寝ることにしよう。
八重桜がますますきれいだ。



真紅・講談「桂昌院」
D51・コント
美由紀・三味線と舞い
愛橋・漫談
小天華・奇術
円馬・「浮世床」
Commented by j-garden-hirasato at 2016-04-18 06:59
地震の怖さ、
改めて感じさせられた週末でした。
Commented by at 2016-04-18 07:08 x
『妾馬』この人情物時代劇のような噺には驚いたことがあります。同じ昭和の名人と謳われても、志ん生と圓生とではまるきり違う。本当に驚くほど違うのです。

志ん生は八五郎の造型に重点を置いている(というより、個性として自然にそうなる)のに対して、圓生の噺は地の文が噺を背後で支配しているという印象が強い。
前者が情念なら、後者は知性とでも言いましょうか。

遊馬は中堅では期待されている存在です。また、新しい型だったようですね。
Commented by jarippe at 2016-04-18 10:12
方言大好きで守って行ってほしいのですが
もしかして 自分が都会に出たら
方言を使うことに躊躇するように思います
それじゃあだめじゃんですね
Commented by saheizi-inokori at 2016-04-18 11:00
> j-garden-hirasatoさん、3・11と違ってメデイアが現地で本震に遭遇しただけに惨状がはっきり伝えられましたね。
改めて3・11の伝えられなかった惨状を想像します。
Commented by saheizi-inokori at 2016-04-18 11:08
> 福さん、前段の井戸替えの場面からじっくり話し込むのと大家さんのところにはっつあんが飛び込んでくるところから始まるのとのちがい、出世してからの後日談をやるかやらないか、それらによって噺の印象は随分変わりますね。

志ん生の魅力にひきづられているような噺家も多いように思います。
遊馬は明快に、しかも一之輔などのように型を壊すようなこともしないで、八五郎を描いています。三太夫たち侍に変な田舎訛りを多用させて、ややシニカルに表現しているのも新しい(田舎訛りをやる人は他にもいますが、遊馬は意識しているように感じました)。
Commented by saheizi-inokori at 2016-04-18 11:12
> jarippeさん、長野の人は「ごしたい」などという方言は今ではあまり使わないけれど、話しぶりに独特の言い回しとかイントネーションがあります、何か言ってはそのワケをいって自らなっとくしてみせる、とか、そうじゃねえかや^^。
それがとても懐かしく・好きなんです。
Commented by kogotokoubei at 2016-04-18 17:14
明日朝九時からの副鼻腔手術のため、前日入院中の幸兵衛です。
検査や説明やらがようやく落ち着いて、夕食前の食堂でパソコンを立ち上げたところです。

芸術協会の寄席、いいですよね!
遊馬は、スケールの大きさを感じますよね。
蝠丸、私は一度聴いてからファンになりました。
遊三は、貫禄の高座でしょうか。
色物も充実しているし、決して落語協会に負けていないと思います。
残念なのは、期待の二ツ目が、寄席では多くは聴けないことです。
「成り金」のメンバーを中心に、とにかく芸協の若手は楽しみです。

今夜は携帯音楽プレーヤーで、落語を聴いてから寝ることにします。
さて、誰の何を聴こうかなぁ。
術後のことなど、またブログで書くつもりです。

Commented by saheizi-inokori at 2016-04-18 21:46
> kogotokoubeiさん、病院ですね。
たいへんというよりちょっとうらやましいような気もします。
すべてから解放されてゆっくり養生してください。
「成金」てなんですか?
私はスマホに二席しか落語が入ってないのです。
増やす方法がわからない。
もっともうちでは耳元にカセットラジオ(cdも可)を置いてるから問題ないのですが。

Commented by ikuohasegawa at 2016-04-19 05:40
昼の宴席から寄席。演目が長屋の花見。
絵にかいたようなご隠居さん。羨ましいです。
Commented by saheizi-inokori at 2016-04-19 09:31
> ikuohasegawaさん、はい、ありがたいこってす。
Commented by ほめ・く at 2016-04-19 11:44 x
横から失礼します。
「成金」とは、落語芸術協会の二ツ目が作るユニットの名前です。メンバーは11人で、柳家小痴楽、昔々亭A太郎、瀧川鯉八、春雨や雷太、三遊亭小笑、春風亭昇々、笑福亭羽光、桂宮治、神田松之丞、春風亭柳若、春風亭昇也の様です。
5月4日国立演芸場で彼らの会があり、行く予定です。
Commented by saheizi-inokori at 2016-04-19 21:16
> ほめ・くさん、ありがとう。
まったく知りませんでした。4日、行けるかもしれません。
Commented by kogotokoubei at 2016-04-20 06:26
ほめ・くさん、代弁していただき、ありがとうございます。
担当日が一日しかない大演芸まつりを、成り金の二ツ目で行うなんて、芸協は粋なことをしますね。
チケット、まだあるのかなぁ。
落語協会は二日ありますが、真打でお馴染みの顔ぶれです。

神田淡路町で迎えた朝です。
さて、連雀亭には、いつ行けるかな。


Commented by saheizi-inokori at 2016-04-20 09:38
> kogotokoubeiさん、順調に回復していますね。
禁断症状は出ませんか^^。
Commented by kogotokoubei at 2016-04-20 19:24
順調に回復しているのだと思います。
手術の翌日の夕食も終り、後は就寝前に看護師さんが検温と血圧を測りに来るだけ。
私は、「五階食堂にいます」の札を置いて、パソコンを持って七階にある病室のベッドを出てまいりました。
ナースステーションも食堂の脇にあるんですよ。

末広亭で居続けしたのが、結構効果的(?)だったことと、毎日何かは聴いているので、震えることはありません(^^)

後は、いかに主事医の信頼を得て外出許可をもらい、古書店か連雀亭に行くことができるか、です!
Commented by saheizi-inokori at 2016-04-20 23:05
> kogotokoubeiさん、ぜいたくをいっちゃあいけません。
可愛いナースに囲まれて洗濯とか家事のことも考えない、読みたい本を読める、寝たいときに寝れる、天国じゃないですか。
震えないのはけっこう毛だらけ、このさいタバコと縁をきりましょう。
酒の方はつきあってください。
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by saheizi-inokori | 2016-04-17 13:48 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(16)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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