春宵、今なんどきだと小三治が訊き、俺は鼻水夢心 第573回落語研究会

桜新町駅のホームで気がついた。
入れ歯を忘れてきた。
食間は外してやらないと「床ズレ」みたいになる、と医者から言われて、、まだ慣れていないから、。
慌てて帰宅して、半蔵門の銭湯にカラスの行水をして国立劇場・落語研究会に滑り込みセーフ。
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ろべえ「代わり目」

落ち着きが出てきたのはいいが、間延びしている、わっと笑えない。
車屋、オカミサン、うどん屋(フルバージョンだった)、三味線弾きと相手を変えて酔っぱらいの無茶ぶりを聴かせるのだが、その都度酔いっぷりが変化するのもちょっとなあ。
フルバ-ジョンを通して笑わせるのはかなりの力量がいるんだな。
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燕弥「岸柳島」

 さあことだ 馬のションベン渡し舟

渡し舟のなかで侍が銀ギセルを船端に叩き付けているうちに雁首を落としてしまった。
乗り合わせた屑屋が残った吸い口を払ってくれという言い方がしつこくて侍を怒らせる。
バカ侍がお前の雁首を切り落としてやると息巻くのを老侍が計略にかけて岸に置き去りにする。
もう追いかけてこないだろうと船客たちが「ばか~!」だの「俺が相手になってやる」だの言いたい放題。
すると裸になった侍が川にざぶーん、潜って船に追いつく。
船底に穴をあけるのだろう、と震え上がる皆の衆。
老侍が槍をしごいて問い詰めると、「なあに、雁首を探しにきた」。

いいリズム。
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喬太郎「小言幸兵衛」

マクラなしで、幸兵衛さんの小言の連続から入る。
犬の「柄」や空模様にまで小言をいいまくる。
貸家を借りにきて、結婚八年で子供がいないという豆腐屋に、離婚しろ、尻の大きな女を世話してやると問題発言。
「おらあ、カアチャンが好きなんだ~!」大泣きして帰ってしまう。
仲良きことは強き哉。

仕立屋の息子と古着屋の娘の心中の妄想劇。
さすがに達者なもんだ。

好いたらしい。嬉しい仲になる。
仲良き言葉も良き哉。
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小里ん「三人兄弟」

この間、演芸場の方で聴いたばかりの噺
長男は、新橋・柳橋で芸者や幇間を大勢侍らす豪勢な遊び。
次男は、深川、辰巳芸者と四畳半で粋な遊び。
末っ子は、昼は賭場の出入りもして夜は吉原。

俺もなんどか芸者の出る宴席を経験したことがあるが、客であっても侍る一人だった。
あれはやはり床柱をしょってなくちゃ面白くもなんともない。

吉原は落語と本でしかしらない。
小里んの吉原ガイド、今日も楽しかった、、が先日の方がよかったような気がする。
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小三治「時そば」

ホログラム、というのだろうか、あれがついていない一万円札を出して若い店員がたまげた噺。
俺もそんなのがあるとは知らなかった。

三角の経木に包んだ納豆、「懐かしい東京の納豆」というコピーとともに(新潟で)売られていた噺。
焼け跡の新宿で一家七人バラック暮らしを語る人間国宝。
納豆売りの少年から買った、ひとつの納豆を七人で分けて食った。
唐辛子売りのオッサンが道端の石に座って煙草をくゆらせていた。
「経木」「バラック」などの言葉を説明しながら話す。

本題は、、そりゃあ人間国宝だもの、よかったに決まっている。
だが、なんだろう、ちょっと物足りないのは。
花の季節に冬の噺でも、冬の寒さと蕎麦のあったかさを感じさせるのが小三治じゃなかっただろうか。
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入れ歯を取りに戻って、代わりにマスクを忘れたせいか、カラスの行水がたたったか、鼻水が出て往生した。
熱燗をキュッとやって寝ちゃえば、なんてニ八そばの客みたいなことを考えて「はじめ」に行ったら「骨折につきしばらく休業します」の貼り紙。
しょうがないから、この間行った店でイタリアンみたいなのを肴に「夢心」を呑んだ。
百閒センセイが阿房列車で、女中が酒の名をいうのを「いねごころ=稲心」と聞いて頓珍漢なやり取りをする、その「夢心」だ。
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(「ペンネグラタン、江戸黒豚、ポルチーニ」「アスパラのお浸し」「ホタルイカ、アンチョビ、春キャベツ」「イサキあぶり(お通し)」)

「あんじゅ」という店名なので「安寿と厨子王」に関係があるのかと尋ねたら、質問の意味が解らなかった可愛いお姉さん。
「安住」というのがオーナー・シエフの名前でした。


Commented by jarippe at 2016-03-30 16:21
小三治さんの 時そば 聞きたいです
熱燗をキュッっとやって・・・・・残念でしたね
大丈夫ですか
Commented by kogotokoubei at 2016-03-30 17:49
現役で、私の名のネタでは、喬太郎が“図抜け一番”かなぁ、と思います。
小三治の「時そば」ですか、珍しいですね。
落語研究会らしい、と言えるかもしれません。

あら、「はじめ」は、女将さんが骨折ですか?
早期の快癒を祈ります。
Commented by at 2016-03-30 19:34 x
柳家登場、とでも言いたいような番組ですね。
「代わり目」で始まり、「時そば」で終わる、飲食を促進する感じ。
燕弥は右太楼といった時代に『崇徳院』を聴いて将来性があるなと感じました。
俊敏な内野手(セカンドかな?)のような風貌もよい。

Commented by saheizi-inokori at 2016-03-30 21:30
> jarippeさん、そうですね、たしかに、素晴らしいのです。
少し私は欲深になってますね。
熱燗は「あんじゅ」でやって鼻水は止まりました^^。
Commented by saheizi-inokori at 2016-03-30 21:32
> kogotokoubeiさん、どうしてもあなたの顔を思い出すのです。
一杯飲みたくなるのです。
Commented by saheizi-inokori at 2016-03-30 21:34
> 福さん、柳家勢揃いです、燕弥が自分ごときがと恐縮してました。
そう、うまいなあ、俊敏なセカンド、寄席には欠かせないですね。
Commented by reikogogogo at 2016-03-30 21:45
Saheiziさんの写真を楽しみ、シャクナゲを見て、家を飛び出しました。ただし上野周り、巣鴨・駒込、気になるシャクナゲが巣鴨と駒込いあるのですが、渋滞進まず、1箇所だけの確認となりました。
Commented by j-garden-hirasato at 2016-03-31 07:00
「半蔵門の銭湯にカラスの行水」
落語の前には、
やはり銭湯ですか。
そして〆の一杯。
粋ですなあ。
Commented by saheizi-inokori at 2016-03-31 10:16
> reikogogogoさん、お互いに近所を分担し合っての花見もまた良き哉^^。
Commented by saheizi-inokori at 2016-03-31 10:17
> j-garden-hirasatoさん、ほんとうは風呂ギライなのかな、帰ってから入らなければと思うと気が重いのです。
Commented by ikuohasegawa at 2016-03-31 18:14
燕弥。
権ちゃんの弟子で同郷の若者ですから、リズムだけでも褒められてうれしいです。
Commented by saheizi-inokori at 2016-03-31 21:31
> ikuohasegawaさん、東京育ちではないハンデイを感じさせない、なかなかの人でした。
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by saheizi-inokori | 2016-03-30 12:47 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(12)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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