さしずめ俺は年老いた日本の赤ちゃん ジュデイ・バドニッツ「元気で大きいアメリカの赤ちゃん」

この間紹介した「図書館大戦争」の作者と1973年生まれの同い年、あちらはウクライナ、こちらはマサチューセッツ生れの女性作家だ。
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どちらもブラックなユーモアに彩られた奇想天外なお伽話のようなストーリー展開に特徴があり、現状批判がそこに流れている。

12の短編からなる本書、いろんな角度からアメリカ社会の不条理・不正義に対する抗議・諷刺が感じられる。
女性作家ならではの(たとえば出産や育児に対する不安や恐怖など)感覚が根底にあるようだ。
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集中の一つの短編の表題である「元気で大きいアメリカの赤ちゃん」、それが本全体の表題ともなっているのは、じつは図体ばかり大きく育ったのに、自分のことしか考えられず、他人に対してはジコチュウ目線でしか”優しく”なれないアメリカ人を諷しているような感じだ。
そう、トランプと彼に喝采するアメリカ人に象徴され・しかも彼らに攻撃されるルビオやクリントンに代表されるアメリカ。
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アメリカだけなのか?
いや、日本人も本質は変わらないのではないか。
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どの短編も読ませる。
ロアルド・ダール、スタンリイ・エリンなどを集めた「異色作家短編集」に感じた奇妙な味わいの短編集だ。

小説を書くって楽しいだろうな。
気に食わないやつを何とでもできちゃうんだもの。
そう感じながら読むのも短編小説の楽しみなのだ。
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岸本佐知子 訳
文藝春秋



Commented by nenemu8921 at 2016-03-18 12:12
「異色作家短編集」は私も好きな本でした。
何冊か、まだ手元にありますよ。ダールも好きな作家です。
saheiziさんは小説は書かないのですか?
作品の中で復讐をすることが得意だったと、太宰を評した彼の友人がいましたね。
Commented by saheizi-inokori at 2016-03-18 21:27
> nenemu8921さん、小説を書く才能もないですね。
なんでもいいから書いているうちに何かをつかむのかもしれないですね。
この本のどれだったかの短編を読みながら、ああ、そうか、小説ってこういう風に書いたら面白んだと思ったのです。
太宰なんかはそれに取りつかれたのでしょう。
自分がこうなったのは○○のせいだ、と言いたかったのかも。
Commented by at 2016-03-19 01:15 x
「植物は・・・」この本、面白いよ、
紹介、ありがとう! 2回目読む。
Commented by saheizi-inokori at 2016-03-19 10:47
> 蛸さん、よかった!人間は謙虚にならなきゃね。
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by saheizi-inokori | 2016-03-18 07:32 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(4)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori