俺の出汁は辰巳浜子流 阿古真理「小林カツ代と栗原はるみ 料理研究家とその時代」

高校時代、こたつで受験勉強をしていて近所の家から、テレビの「きょうの料理」のあの軽快な曲が流れてくると腹が減っていることを思い出した。
東京の叔父の家でこの番組をみると、父親が会社に行って母親が家で家事をする、というフツーのサラリーマン家庭を思い知らされた。



水道もない、ガスもない、ナメクジが這うようなダイドコで母は毎日工夫をして俺たちの飯を作り会社に出かけた。
冷蔵庫があって熱いお湯がすぐ出てくるダイドコ、まぶしかったなあ。

本棚を見ればその人のことがわかる、ならば食卓をみれば家族のすべてがわかる。
料理はその家庭の真実を映し出す。
貧富、趣味嗜好、家族の日々の暮らしぶり(ライフスタイルってか)、、。
作り手だけではなく、作ってもらう人、食べる人、片付ける人、、家族の性格やお互いを思うありようがすべて表れる。

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だから、料理研究家、料理家、料理愛好家、フード・コーデイネーター、、呼び名はどうあれ一世を風靡した彼らがどういう料理を薦めたかは、彼らの生い立ちや考え方、ライフスタイルと、それを拍手喝さいして受け入れた人びとの生き方・憧れを明らかにする。
同時にその時代における家族のあり方、とくに女性の地位や喜怒哀楽を反映する。
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とりあげたのは、江上トミ、飯田深雪、入江麻木、城戸崎愛、有元葉子、小林カツ代、ケンタロウ、栗原はるみ、土井勝、土井善晴、村上昭子、辰巳浜子、辰巳芳子、ケンタロウ、栗原心平、コウケンテツ、高山なおみ、
世にときめいた料理研究家列伝、その生い立ちとレシピの特徴を追う(肉じゃがとビーフシチュウを定点観測)。
ああ、こんな人が居たっけ、おお、こんな料理なら俺も作れそう、なんて楽しんで読んでいると、家庭料理や女性の生き方の変遷を勉強できるという仕組み。
「聡明な女は料理がうまい」、アグネス論争、「クロワッサン症候群」、上野千鶴子、「ふざけるな専業主婦」「負け犬の遠吠え」、懐かしくもあり現在進行形の問題もある。

それにしても、栗原はるみ!
これまでに出したレシピが4千種以上、料理本の累計発行部数が2千4百万部を超え、雑誌も出して、お店も経営する、すげーな、大カリスマだ。
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「暮らしの手帖」(「一皿の料理」など別冊もけっこう買った)とか「檀流クッキング」、「四季の味」、テレビでは「金子信雄の楽しい夕食」、結城貢の「夕食ばんざい」など俺が参考にしたものが登場しない。
母や亡妻は基本はおふくろの味、あとはベターホームで教わっていたような気がする。
妻が亡くなったあと、まいあさ俺が作った朝飯(味噌汁、干物などの焼き物、サラダ、漬物、納豆・卵)、みそ汁の出汁の引き方は辰巳浜子の「料理歳時記」で習ったやり方だったぞ。

毎日お邪魔するブログには日々の手作り料理(お菓子も)が紹介されていてどなたもそのままテレビに出ることができそうだ。

新潮新書

Commented by unburro at 2016-02-10 14:16
普段のおかずは、小林カツ代派ですね。
そこに、檀一雄、開高健の無頼派が交じり、
池波正太郎が、時折、顔を出し、中華は邱永漢。
しかし底流には、母親の料理がある、という感じです。

「四季の味」も良かったですね。
森須滋郎さんとは、何度かお食事をご一緒しました。
よく食べる、美味しそうに食べる、素敵な人でした…
Commented by poirier_AAA at 2016-02-10 18:52
辰巳浜子の「料理歳時記」はわたしも愛読しています。あと「丸元淑生のクック・ブック」も参考にしています。

綺麗な写真と分量作り方で出来上がっている本はあまり好きではないくて、2行か3行でさらっと料理の説明がしてある文章だけでできたレシピ本が好きなのです。上の2冊なんてわずか1冊の文庫本の中にものすごい量のレシピが入っているんですよ。
文章だけの方が想像力が刺激されるんでしょうね。小説を読んでいるとお腹が空いてくるのと同じで。。。。
Commented by saheizi-inokori at 2016-02-10 21:02
> unburroさん、つまりはunburro流ですね。
森須さん、文章からもそういう人柄が伝わりますね。
Commented by saheizi-inokori at 2016-02-10 21:05
> poirier_AAAさん、そうそう、「丸元、、」も読みました。
使ったというほどではないですが。
内田百閒の「ご馳走帖」も。
これは写真は皆無ですね。
Commented by PochiPochi-2-s at 2016-02-11 00:30
こんばんは。
小林カツ代と栗原はるみ。
関西人の私には、栗原はるみの料理の味はどうにも馴染めない。
例えば、鯖の味噌煮。
私には、栗原はるみのレシピはあまりにもだだ辛い。
何故、彼女の料理がこんなに人気があるのかわからない。
売り出す戦略が上手なのだろうなぁと。
小林カツミさんは大阪出身なので、やはり私はどちらかというと
小林さんの味の方が好きです。
関西と関東では味の好みに差があるのですね。
そう思います。
Commented by at 2016-02-11 02:38 x
最近の若者はどぉなん? てか、その親達、てか、又、その親達。
その時代から崩れて来てるんと違うん?
まぁ、今の世の料理本、ほとんどオシャレなもん多いけど、
ほんまに出来るんかいなって思てまう。
私など、料理本、見いひんなぁ、
Commented by at 2016-02-11 07:10 x
台所は家の文化の象徴ですね。
私は飯を炊くまきから出る白い汁、井戸水の冷たさを知っております。

そのころは大家族でして、何をつくるにしてもハンパない量でした。洋風なオカズは滅多に膳には出ませんでした。でも、何を食べてもおいしかった記憶があります。
Commented by ikuohasegawa at 2016-02-11 07:48
ご存知だと思いますが、小林カツ代の息子のケンタロウ君は2012年にオートバイ事故。現在も治療中のようです。
Commented by tona at 2016-02-11 09:48 x
ケンタロウだけでなく土井善晴や栗原心平、活躍している2世が本に載っているのですね。
小林カツヨもなかなかでしたが、栗原はるみは、上記の活躍の他、料理の英語放送をやっているし、グルマン賞も取ったのでしょう。凄い人ですね。
『聡明な女は料理がうまい』は霧島洋子でしたっけ。
懐かしい料理家がいっぱい。
こんなに料理に造詣が深いsaheiziさんって何者!お仕事の関係だったのですね。
Commented by saheizi-inokori at 2016-02-11 10:05
> PochiPochi-2-sさん、栗原はるみ、たしかに戦略が上手ともいえるのでしょうね。
幸福な結婚をして家庭を守りつつも外の社会でフアッション・文化を発信する。
そのライフスタイルが憧れの的になって、その栗原が作る料理なのだから、うまいと思う。
もっとも本書では栗原が一つのレシピを発表するためには何日も納得のいくまでつくりなおして、誰が作っても失敗のないようにすることが取り上げられ「栗原はるみ」の言う通り作ったら失敗したら嫌われるというような発言が紹介されていました。
私は昔から砂糖を使わない、薄味が好きです。
いろんな料理本を見ても調味料とか食材の分量はほとんど目もくれない、そのときの感じでつくっています。どちらかというと関西系かな。
でもたまに人の家や居酒屋でこってり味を食うとうめえなと思うこともありますよ^^。
Commented by saheizi-inokori at 2016-02-11 10:10
> 蛸さん、崩れると言えばそうかもしれない、変化、進化ともいえる部分はあるのでしょう。
女性の社会進出も、普通の人が限られた能力でいろんなことをやろうとしたら、手抜きも外食もありかなと思います。
ただ嘘つき食品には厳しい目を光らせてほしいなあ。
料理本とかテレビの料理番組は実際に料理を作るというよりひとつのフアッションとしてみている向きもありそう、あれをみながらコンビニ飯を食ってるとか。
Commented by saheizi-inokori at 2016-02-11 10:14
> 福さん、まきに火がつかなくてもうもうたる煙にむせたり、雪の道を水を汲みにバケツをぶら下げて行ったり、今の子には映画の世界と思うでしょうね。
「主婦」という言葉はもともと大家族や使用人・従業員と一緒に暮らす家の女宰領のような意味があったそうですね。
核家族で主婦とはちゃんちゃらおかしいと当時のお母さんたちはいうかもしれないです。
Commented by saheizi-inokori at 2016-02-11 10:19
> ikuohasegawaさん、本書にもそのことが書いてあります。
カツ代さんのいいところを受け継いで彼なりにより進化した情報発信をしていたそうで惜しいこと、なんとか復帰できればいいですね。
ケンタロウの後継(テレビ・男の料理)が栗原はるみの息子の栗原心平だということも、二人の違いも書いていますよ。
Commented by saheizi-inokori at 2016-02-11 10:26
> tonaさん、私は前にも書きましたが上り症で仕事を続ける自信がなくなった時に、休日に掃除とか料理をやること(家族がいっしょに喜んでくれること)が心の安定が得られることに気が付いたのです。
そして、上がるなら徹底的に上がればいいさ、それで首になるならなってやろう、と上がることを気にしないことにしたのです。
その後は、上り症のまま、大人数を相手に交渉したり講演などもやりました。
さいきんは料理をしなくなりましたが。
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by saheizi-inokori | 2016-02-10 12:29 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(14)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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