おぞましい快楽の園 小池寿子「謎解き ヒエロニムス・ボス」
2015年 10月 24日
一茶が反骨・ひねくれならば、一茶に先立つこと300年、ネーデルランドに生まれた、この人・ヒエロニムス・ボスは何といったらいいのだろう。
貴族の婚礼祝に描いた「快楽の園」、その中央パネルが「快楽の園」だが、よく見ると逆立ちする男女、巨大な鳥にベリーを餌付けされる人間、青ざめた・不安に取りつかれたような人間たち、貝殻から足だけを見せる人間、それらを冷ややかに見つめる梟、、どうみても行きたくなるような快楽の園ではない。
そしてその右側のパネルには地獄が描かれる。
ハープシコード(弦楽器は、恋愛・性欲のシンボルとされた)に串刺し、リュートに縛り付けられ、楽器が拷問の道具とされている。
生気のない裸の女はロバに抱えられ悪魔の尻にその顔を映している。
左パネルのエヴァ誕生の図ですら、足元に大きな口をあけた穴がまがまがしさを漂わせる。




生気のない裸の女はロバに抱えられ悪魔の尻にその顔を映している。
左パネルのエヴァ誕生の図ですら、足元に大きな口をあけた穴がまがまがしさを漂わせる。

(「最後の審判」)
ロス市警の敏腕刑事・ハリーボッシュの名前は、この画家と同じヒエロニムス・ボスだ。
ハリー刑事の生い立ち、刑事として見聞きするロスの地獄絵も元祖・画家ボッシュの奇想には遠く及ばない。
絵のアイデァに圧倒されるが、よく見ると素晴らしい描写が一杯。
「東方三博士の礼拝」のなかの黒人の博士、顔だち、白いローブの質感、裾の縫い取り、手首から下げた真珠の輝き、いずれも素晴らしい。

イスラム・オスマン帝国による東ローマ帝国の崩壊、西ヨーロッパではインノケンティウス8世の聖職汚職、異端審問や魔女狩り、人々の間には終末思想が広まっていた、宗教改革前夜がボスの生まれた時代だった。
筆者は
ボスの絵画には、このような時代の不安感と新しい価値の萌芽が、独自の表現言語で描き込まれていると言えるでしょう。ペシミスティックな世界観もあれば、同時にリベラルな批判精神や遊び心も盛り込まれている。その着想の大胆さもさることながら、何より、自身が生きた時代を透徹したまなざしで見、それを奇想天外な形態とたぐいまれな色彩で表現することができた画家であった。
と評する。
ボスの全作品20について細部も含めた解説書だ。

図書館で借りたからもう返さなければならない。
もっと大きな図版でゆっくり見たいものだ。
新潮社
ロス市警の敏腕刑事・ハリーボッシュの名前は、この画家と同じヒエロニムス・ボスだ。
ハリー刑事の生い立ち、刑事として見聞きするロスの地獄絵も元祖・画家ボッシュの奇想には遠く及ばない。
絵のアイデァに圧倒されるが、よく見ると素晴らしい描写が一杯。
「東方三博士の礼拝」のなかの黒人の博士、顔だち、白いローブの質感、裾の縫い取り、手首から下げた真珠の輝き、いずれも素晴らしい。

筆者は
ボスの絵画には、このような時代の不安感と新しい価値の萌芽が、独自の表現言語で描き込まれていると言えるでしょう。ペシミスティックな世界観もあれば、同時にリベラルな批判精神や遊び心も盛り込まれている。その着想の大胆さもさることながら、何より、自身が生きた時代を透徹したまなざしで見、それを奇想天外な形態とたぐいまれな色彩で表現することができた画家であった。
と評する。
ボスの全作品20について細部も含めた解説書だ。

もっと大きな図版でゆっくり見たいものだ。
新潮社
「とんぼの本」シリーズは、月刊芸術新潮の特集をソースにしたムックで私も大好きですが、ヒエロニムス・ボスの号は知りませんでした。
そういえば、ハリーボッシュを教えていただいたのはSAHEIZIさんでしたね。ありがとうございました。
そういえば、ハリーボッシュを教えていただいたのはSAHEIZIさんでしたね。ありがとうございました。
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プラド美術館で初めて見たとき、たまげるという悪い言葉が出てしまうほどびっくりでした。
「快楽の園」もいいですが「放蕩息子」も印象的です。
ごちゃごちゃという点ではブリューゲルと同じですが、意味合いが大分違いますね。
この本が近くの図書館にありましたので、借りることにします。
「快楽の園」もいいですが「放蕩息子」も印象的です。
ごちゃごちゃという点ではブリューゲルと同じですが、意味合いが大分違いますね。
この本が近くの図書館にありましたので、借りることにします。
ちょうどいまやっている、神保町の古本まつりで、ボスの大型本がいくつかありました。買おうと思ったのですが留まりました。ちょっと後悔していたところです。
> k_hankichiさん、大型の本はあとで置く場所に困ります^^。
by saheizi-inokori
| 2015-10-24 11:19
| 今週の1冊、又は2・3冊
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Comments(8)