巨悪が行われる場所 イアン・J・ビッカートン「勝者なき戦争 世界戦争の二百年」

巨悪とは、ディケンズが好んで描いた不潔な「犯罪の小部屋」でなされるのではない。
かといって強制収容所や労働キャンプで行われるわけでもない。
これらの場所において我々が見るのは、最終的な結果である。
しかし、巨悪は、清潔なカーペットの敷きつめられた、暖かく明るいオフィスで、ワイシャツを着て、
手入れの行きとどいた指爪の、滑らかに剃られた頬の、
決して声を張り上げる必要のない物静かな男たちによって考案され、
命令され(動議され、支持され、そして議事録に記録され)るのだ。


C・S・ルイス「悪魔の手紙」から、イアン・J・ビッカートン「勝者なき戦争 世界戦争の二〇〇年」からの孫引き。
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最後のカッコの中の「議事録に記録され」の前に「しばしば不実・空事を」と挿入したいのを除くと、まったくその通りだ。

ビッカートンは、戦争は人間の本質にもとづくのでなく、一握りの指導者によって起されるという。

彼らは、たやすく、中国の脅威に備える、とか安保環境の激変とかを言い立てて防衛強化を訴える。
恐怖こそ欺瞞に満ちた結束を生み、平和を維持する大胆な動きを封じ込め、国民の心から国内問題を締め出し、排外感情を助長する。
恐怖こそ、独裁者が依拠するものだ。
彼らは、他者の利益のためにではなく、彼ら自身の目的を達成するために、武力行使を厭わない。
自分たちが打ち負かされるか、もしくは死ぬかもしれないことさえ信じていない。
戦争により他者の命が犠牲にされることを、なんとも思わない「想像力に欠けた」連中である。
だから、武器供給者や武器使用によって利益を得る層に支持されている。

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「戦争」という言葉の代わりに、「国際競争」と言ってもいいだろう。
その場合の武器は、マイナンバー制度、TPP、原発再稼働、教育改悪、オリンピック、派遣業法改悪、医療改悪、社会保障の切り下げ、税制、、ちょっと前であれば民営化、、まあ、思いつくことは何でもやってしまうのが貪欲な彼らの特性だ。

彼らは、まさにキャロルのいうところの、居心地のよいオフィスで、もしくは贅沢な料理が提供される座敷やホテルの一室、ときには広々とした緑の芝生、場合によっては高級車のソファなどで、巨悪をたくらみ実行する。
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(名古屋駅裏の椿市場)
彼らが手にする利益から見たら、ちょっとした小遣い稼ぎをする小役人などは可愛いものだ。
もっとも南京虐殺を記憶遺産に登録するからといって、ユネスコ分担金拠出を停止するなんざ、悪は悪でもあまり巨とはいえないな。
ちんけな小金持ち的な悪だ。
都合の悪いことは忘れっぽい連中は自ら登録申請したっていいのにさ。

なに?アメリカもユネスコ分担金支払い停止中だって?
アメリカもちんけな悪人か、そうじゃないか、巨悪は存外ケチなのかもしれない。

高田馨里 訳
大月書店
Commented by unburro at 2015-10-14 16:57
ユネスコ分担金の話、「マッタク!ケツの穴の小せえ奴らだ」と、
などと、お下品な言い回しが頭に浮かんで、一人で赤面していたところです。
金さえ出せば、黒を白にすることが出来ると思っているオッサン、オバサンたち。
もう、世の中、真っ暗闇でございます。
Commented by saheizi-inokori at 2015-10-14 18:03
> unburroさん、こんなことまでアメリカを見習わなくてもいいのにね。
Commented by jarippe at 2015-10-14 20:31
巨悪という人たち
何を考え求めているのか
まったくわからないです
何をしたいのでしょう

Commented by saheizi-inokori at 2015-10-14 21:09
> jarippeさん、簡単なことです。
彼らが求めているのは、自分の利益、権力、名誉です。
国のためではありません。
Commented by hazuremon at 2015-10-14 23:24 x
 Saheiziさん、お帰りなさい。
 もうもう次から次と怒りを通り越し
「想像力のなさ」なんてレベルも飛び越え
どうしたらそこ迄、私利私欲に徹しられるのか
自分達だけは安泰と思えるのかが不思議!と、
別の興味が湧いて来た今日この頃。脳ミソ覗いてみたい。
日本会議やら神政連やらってどんな洗脳をするのかしら?

Commented by sweetmitsuki at 2015-10-15 04:54
戦争が人間の本質ではないにせよ、重大な決断を自分で行うのを躊躇し、結局は権威ある有識者に丸投げしてしまうのは、人間、とりわけ日本人の本質なのではないのでしょうか。
立派な大学を優秀な成績で卒業した、頭のいい偉い人が判断したことなんだから、自分の頭で考えるより正しい答えを出せるんだろう。みたいな。
そういう小作人的想像力が、結局は巨悪をのさばらせてるんだと思います。
Commented by saheizi-inokori at 2015-10-15 10:18
> hazuremonさん、類は友を呼ぶのか、朱に交わって赤くなったのか、どっちにせよろくなもんじゃないですね。
神がかりになると人間の苦悩(他人の)なんて無意味なのかな。
Commented by saheizi-inokori at 2015-10-15 10:29
> sweetmitsukiさん、日本人に限らずアメリカも同じかも。
ノーベル賞経済学者のクルーグマンが、共和党への資金提供者はひたすら富裕層への大幅な減税を望んでいて、トランプだのブッシュだのはそれにこたえようとしていますが、いざ、彼らが大統領候補になるやプロの仕事人が大量動員されて、富裕層のための政策であるという明快な事実を覆い隠し、中間層の減税なのだ、経済成長に役に立つ政策なのだ、というキャンペーンを繰り広げ、かたやクリントンの電子メール問題などで、それはうまく行くかもしれない、それはトップダウンの階級闘争に関わる話だということを忘れてはならない、と書いています。
騙しのテクニックにもたけているのが巨悪です。
Commented by sheri-sheri at 2015-10-15 20:43
ひたすら心配なのは、何の罪もない子供達の未来です。これから生まれてくる子供達、生まれてきた子供達・・・おとしめないでと切に願います。
Commented by saheizi-inokori at 2015-10-15 21:08
> sheri-sheriさん、彼らは自分の子供のことならどんなにちっぽけなことでも大騒ぎするのでしょうが、人の児のことはあまり考えないようです。
それが大金持ちとか権力者のサガです。
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by saheizi-inokori | 2015-10-14 12:43 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(10)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori