こんな可哀そうな若者を日本でも作りだそうというのか! デイヴィッド・フィンケル「帰還兵はなぜ自殺するのか」
2015年 09月 23日
年を取ると短気になるってのはほんとだ。
何かのはずみで思いがけない怒りが迸る。
こないだも、チリンチリン、ふらふらと自転車が追い越して行ったとき、「歩道は降りろ!おい!スポーツマンだろ(テニスラケットを積んでいた)!降りろよ」。
声の大きさ厳しさに自分がたじろぐ。
心の底に、いろんな得体の知れない怒りのごった煮がふつふつと湧いていて、刺激を与えると沸騰するらしい。

イラク戦争最前線で兵士たちと一年間、緊張に満ちた、死と隣り合わせの戦闘生活をともにし、その後、戦争後の兵士たち、妻子や身内、ペンタゴン上層部、医療関係者などにインタビューを繰り返し、陸軍の記録、復員軍事局の記録、裁判記録、911緊急電話の録音、歴史資料、写真、ビデオ、手紙、電子メール、日記、、丁寧・綿密な取材により、再現した5人の兵士(うち一人は戦死)たちの物語、現在進行形の物語。
安保法案に賛成の人も含めて現在の日本人必読の書だ。

アフガニスタンとイラクに派兵された若者たち(大半は貧困家庭出身)200万人の内、50万人がPTSD(心的外傷後ストレス障害)とTBI(外傷性脳損傷)に悩んでいる。
毎日一人以上が自殺し、その総計は戦死者数を上回る。
死ななくても・毎日が狂気、死への衝動との戦い、おびただしい未遂者。
家族、とくに妻は支えきれなくなり、自らもうつ病になり自殺を考える。
(自殺と背中合わせで生きている兵たちの施設で)彼は自殺したいと思った日のことを語る。祖母に電話をかけた。祖母の夫はベトナムから帰ってきて自殺したのだ。「祖母はこう言いました。もしお前が自殺したら、わたしの心は粉々になってしまうよ」
こう(治療の一環として)同じような患者の前で言える兵士はかなり軽快しているのだ。

セッションで兵士たちはイラクやアフガニスタンでの体験を話し始める。
首が切断されて、身体は膨らんで糞まみれになった死体のこととか、道端で見つけた頭蓋骨の山をいったんは車に積んでみたものの、基地のそばで排水溝に蹴り落としたこと、襲撃対象と間違えて普通の(赤ん坊もいる)家を急襲したときのこと、怪我をしたイラク人に面白半分に胸腔穿刺をやったこととか、、
衛生兵が語る
本当に理解したのは、俺の最初の赤ん坊が火傷したのを見たときだ。
熱湯がかかって皮膚が剥げ落ちた。それでどうなったと思う?俺は初めてようやくファッキンな医療救援ってものがどういうものかわかってきたんだ。ようやく彼らにすまないと思うようになった。ようやく、あそこで彼らをファッキンに痛みつけたことをすまないと思いはじめた。俺のファッキンな赤ん坊みたいだった。俺たちは彼らを、ファッキンな何者でもないかのように扱ってたんだ。人間ですらないかのように思ってた。

主人公の一人は道に隠された爆弾を見つける名人だった。
彼の乗らなかった車が襲撃されたとき、駆けつけて重傷の兵士をその頭から流れる血で口の中をいっぱいにしながら救助したけれど、もう一人の愛する部下が人型に燃え上がるのを救うことが出来なかった。
「お前がいたらこんなことにならなかった」、同僚の褒めた言葉が、彼のPTSDの主因となって自責の念に苛まれる。
戦争の意味は次第に失われて何の意味もなくなっていったが、仲間の兵士たちの意味はどんどん増していき、なにものにも代えがたいものになった
誰が、仲間の死はお前のせいではない、お前は立派だった、といっても効き目はないのだ。
好い奴ほどだ。
「終わりのない罪悪感」が彼らを虜にする。
壁を蛇で飾り立てる兵士もいる。

経済的苦境が帰還兵とその家族の戦いをいっそう絶望的なものにする。
その日暮らしすら難しい。
夫の暴力(ときには殺人衝動)に怯え、「なぜこんなことになったのか」と恋に落ちた頃の輝きに満ちた日々を思う妻。
夫を愛していながら憎み、死んでくれ、別れたいと思いながらも捨て去ることが出来ない、自分も一人では生きていけない。
自殺衝動を抑え、なんとか普通の生活が出来るようになったとしても、毎日山のように飲む薬なしでは暮らせない。
そんな兵士を雇うところはあるのか。
喧嘩と暴力の明け暮れであっても妻がいる兵士はましなのだろう。
戦争における真実とは、隣にいる戦友を大事にすることに尽きるが、戦争の後における真実とは、人は自分ひとりで生きることだ。
今もなお増え続けている自殺者とその背後にある傷(心身)を負った兵士たちがアメリカ社会をむしばみつつあるのではないか。
ブッシュとかトランプとかヒラリーとか、いってえ何を考えてるんだ!

武蔵療養所は、1940年、日中戦争で精神を病んだ慢性患者を収容した。
ピーク時には417人が在所、その8割は統合失調症だった。
入所者の4割が栄養失調などで亡くなった。
入所者のカルテには「未復員」との判が押されていた由。
古屋美登里 訳
亜紀書房
何かのはずみで思いがけない怒りが迸る。
こないだも、チリンチリン、ふらふらと自転車が追い越して行ったとき、「歩道は降りろ!おい!スポーツマンだろ(テニスラケットを積んでいた)!降りろよ」。
声の大きさ厳しさに自分がたじろぐ。
心の底に、いろんな得体の知れない怒りのごった煮がふつふつと湧いていて、刺激を与えると沸騰するらしい。

安保法案に賛成の人も含めて現在の日本人必読の書だ。

毎日一人以上が自殺し、その総計は戦死者数を上回る。
死ななくても・毎日が狂気、死への衝動との戦い、おびただしい未遂者。
家族、とくに妻は支えきれなくなり、自らもうつ病になり自殺を考える。
(自殺と背中合わせで生きている兵たちの施設で)彼は自殺したいと思った日のことを語る。祖母に電話をかけた。祖母の夫はベトナムから帰ってきて自殺したのだ。「祖母はこう言いました。もしお前が自殺したら、わたしの心は粉々になってしまうよ」
こう(治療の一環として)同じような患者の前で言える兵士はかなり軽快しているのだ。

首が切断されて、身体は膨らんで糞まみれになった死体のこととか、道端で見つけた頭蓋骨の山をいったんは車に積んでみたものの、基地のそばで排水溝に蹴り落としたこと、襲撃対象と間違えて普通の(赤ん坊もいる)家を急襲したときのこと、怪我をしたイラク人に面白半分に胸腔穿刺をやったこととか、、
衛生兵が語る
本当に理解したのは、俺の最初の赤ん坊が火傷したのを見たときだ。
熱湯がかかって皮膚が剥げ落ちた。それでどうなったと思う?俺は初めてようやくファッキンな医療救援ってものがどういうものかわかってきたんだ。ようやく彼らにすまないと思うようになった。ようやく、あそこで彼らをファッキンに痛みつけたことをすまないと思いはじめた。俺のファッキンな赤ん坊みたいだった。俺たちは彼らを、ファッキンな何者でもないかのように扱ってたんだ。人間ですらないかのように思ってた。

彼の乗らなかった車が襲撃されたとき、駆けつけて重傷の兵士をその頭から流れる血で口の中をいっぱいにしながら救助したけれど、もう一人の愛する部下が人型に燃え上がるのを救うことが出来なかった。
「お前がいたらこんなことにならなかった」、同僚の褒めた言葉が、彼のPTSDの主因となって自責の念に苛まれる。
戦争の意味は次第に失われて何の意味もなくなっていったが、仲間の兵士たちの意味はどんどん増していき、なにものにも代えがたいものになった
誰が、仲間の死はお前のせいではない、お前は立派だった、といっても効き目はないのだ。
好い奴ほどだ。
「終わりのない罪悪感」が彼らを虜にする。
壁を蛇で飾り立てる兵士もいる。

その日暮らしすら難しい。
夫の暴力(ときには殺人衝動)に怯え、「なぜこんなことになったのか」と恋に落ちた頃の輝きに満ちた日々を思う妻。
夫を愛していながら憎み、死んでくれ、別れたいと思いながらも捨て去ることが出来ない、自分も一人では生きていけない。
自殺衝動を抑え、なんとか普通の生活が出来るようになったとしても、毎日山のように飲む薬なしでは暮らせない。
そんな兵士を雇うところはあるのか。
喧嘩と暴力の明け暮れであっても妻がいる兵士はましなのだろう。
戦争における真実とは、隣にいる戦友を大事にすることに尽きるが、戦争の後における真実とは、人は自分ひとりで生きることだ。
今もなお増え続けている自殺者とその背後にある傷(心身)を負った兵士たちがアメリカ社会をむしばみつつあるのではないか。
ブッシュとかトランプとかヒラリーとか、いってえ何を考えてるんだ!

ピーク時には417人が在所、その8割は統合失調症だった。
入所者の4割が栄養失調などで亡くなった。
入所者のカルテには「未復員」との判が押されていた由。
古屋美登里 訳
亜紀書房
ううう 読みきれるだろうか
読みます ありがとうございます
友人(正確には夫の)の書いた
「人は悲しみで死ぬ動物である」を頭に浮べたり
読みます ありがとうございます
友人(正確には夫の)の書いた
「人は悲しみで死ぬ動物である」を頭に浮べたり
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まったく読む自信がありません。思っただけで気持ちが悪く…。
一度目にしたら焼き付いてトラウマになりそう。子どもの頃、
戦争から帰ったら気が違って社会に戻れなかったという人が近所に
いました。優秀な学生だったそうです。昔ふうに言うところの
「きxxx病院」に暮らしていて、外出は許されているらしく、
私たちとも話をしました。やさしい人でした。
一度目にしたら焼き付いてトラウマになりそう。子どもの頃、
戦争から帰ったら気が違って社会に戻れなかったという人が近所に
いました。優秀な学生だったそうです。昔ふうに言うところの
「きxxx病院」に暮らしていて、外出は許されているらしく、
私たちとも話をしました。やさしい人でした。
自衛隊の海外派兵でも、すでに30人の方が精神疾患により自殺しているそうです。
このままアメリカさんの言いなりになって、派兵をさらに増強するつもりなんでしょうか。
殉死者にはおよそ1億円されるそうですけど、それで遺族の暮らしは回復されるのでしょうか。
それで、国家財政が維持できるんでしょうか。
このままアメリカさんの言いなりになって、派兵をさらに増強するつもりなんでしょうか。
殉死者にはおよそ1億円されるそうですけど、それで遺族の暮らしは回復されるのでしょうか。
それで、国家財政が維持できるんでしょうか。
日本の自衛隊のイラク派兵でも、30人に上る自殺者が出たという未確認情報があります。
私の参加した反安保デモには、未成年のアイドルユニットが戦争反対を求めてデモに加わってました。
トップアイドルが、「世界平和のために勇敢な人は自衛隊に入って闘ってね♡」などという時代が来てはそれこそ世も末です。
そうならないためにもいま一度頑張りましょう。
私の参加した反安保デモには、未成年のアイドルユニットが戦争反対を求めてデモに加わってました。
トップアイドルが、「世界平和のために勇敢な人は自衛隊に入って闘ってね♡」などという時代が来てはそれこそ世も末です。
そうならないためにもいま一度頑張りましょう。
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
先だって、国会でPKOから帰還した自衛隊の中から自殺者が50数名出たという追求に、安部ぼんいわく、他の仕事でも出ている。自衛隊派遣の自殺者は大したことはない・・とコメントしてましたね。なら、今回自分で行き、最も危ないところで長期間働き戻ってこなくていいです。それからそんなこといいなさいといいたいです。あの人は国民の税金で美食をし、贅沢をし、国費で世界をまわりお金は垂れ流し、国民には背を向け、いったい何人?と聞きたい。
> Vimalakirtiさん、アメリカでも優秀な、だけど貧乏な学生が奨学金を欲しくて志願兵となって、無惨な人生になる。
もちろんイラクやアフガニスタン・ベトナムの市民はもっと悲惨な目に遭う(いわれもなく)のですから、どう考えても戦争は許せないです。
本書は胸が悪くなるようなことも書いてありますが、極限におかれた人間のありようが描かれているのと主人公たちの生き方に感動しました。
もちろんイラクやアフガニスタン・ベトナムの市民はもっと悲惨な目に遭う(いわれもなく)のですから、どう考えても戦争は許せないです。
本書は胸が悪くなるようなことも書いてありますが、極限におかれた人間のありようが描かれているのと主人公たちの生き方に感動しました。
> sweetmitsukiさん、一億が二億でも死んだら元も子もないですね。
死ななくても心身に障害をおって普通の暮しができなかったらお金で片付く問題じゃないでしょう。
とくに自殺などは戦争との因果関係が明らかにならなければそんなに手厚いことはできないでしょう。
アメリカではTSPDなどの治療のために相当な費用で施設もつくっているけれど間に合わないでビジネスとしての施設もあるようです。
日本はそういう面はほとんど未整備だということです。
死ななくても心身に障害をおって普通の暮しができなかったらお金で片付く問題じゃないでしょう。
とくに自殺などは戦争との因果関係が明らかにならなければそんなに手厚いことはできないでしょう。
アメリカではTSPDなどの治療のために相当な費用で施設もつくっているけれど間に合わないでビジネスとしての施設もあるようです。
日本はそういう面はほとんど未整備だということです。
> sheri-sheriさん、自衛隊をブラック企業と同じに見なしているのですね。
他の仕事であろうがなんであろうが自殺者がたくさん出ていることに意を砕くのが政治家の務めだろうに。
天皇陛下も呆れてものも言えないでしょう。
他の仕事であろうがなんであろうが自殺者がたくさん出ていることに意を砕くのが政治家の務めだろうに。
天皇陛下も呆れてものも言えないでしょう。
映画『ランボー』を思い出します。
その他、帰還してから神経を病み、社会生活に適応できなくなる悲惨さの映画がありました。日本兵でも幾分そうだったのでしょう。
その他、帰還してから神経を病み、社会生活に適応できなくなる悲惨さの映画がありました。日本兵でも幾分そうだったのでしょう。
> tonaさん、日本では精神疾患をなにか恥ずかしい忌むべきものにとらえるから、表に出てこないケースも多いのではないでしょうか。
病気になった人は自分がだらしないから、となおのこと自責の念が強いのでしょう。
病気になった人は自分がだらしないから、となおのこと自責の念が強いのでしょう。
今、読まなければいけない本ですね。
いつも貴重な情報をありがとうございます。
少子化対策と同時に自殺者対策・・国の有り方を変えなければ。シールズは素晴らしいし、学生も政治に関心を持つべきだが、頼り過ぎてはいけないと思う。奥田君たち若者が落ち着いて勉学出来る世の中にすべく大人がもっと頑張らねば。
天皇・皇后陛下は国会デモのすぐ向こうで
どれだけ歯痒い思いをされておられたかと思う。
今年に入られてからの度重なる平和行脚、お言葉にならない(出来ない)言葉を感じる。
あ~人類何千年?馬鹿ですね。平和ひとつ作れない。ここひとつで軍事費やら医療費やら諸々どれだけの経費節減になるやら。
さて、今晩の国会前集会に行くべく家事を片付けましょうか。これくらいしか出来ない。
いつも貴重な情報をありがとうございます。
少子化対策と同時に自殺者対策・・国の有り方を変えなければ。シールズは素晴らしいし、学生も政治に関心を持つべきだが、頼り過ぎてはいけないと思う。奥田君たち若者が落ち着いて勉学出来る世の中にすべく大人がもっと頑張らねば。
天皇・皇后陛下は国会デモのすぐ向こうで
どれだけ歯痒い思いをされておられたかと思う。
今年に入られてからの度重なる平和行脚、お言葉にならない(出来ない)言葉を感じる。
あ~人類何千年?馬鹿ですね。平和ひとつ作れない。ここひとつで軍事費やら医療費やら諸々どれだけの経費節減になるやら。
さて、今晩の国会前集会に行くべく家事を片付けましょうか。これくらいしか出来ない。
やり場のない胸苦しさをどうしたらいいのでしょう
こういう本読まなくちゃいけないのですが
苦しくなって読めない自分 その弱さがまたやりきれないです
戦争はしない国に生まれて良かった って何回も思ったものです
こういう本読まなくちゃいけないのですが
苦しくなって読めない自分 その弱さがまたやりきれないです
戦争はしない国に生まれて良かった って何回も思ったものです
Ciao saheizi さん
四人に一人が後遺症に苦しんでるってことじゃあないですか?
で、当然国からのサポートなどありはしないのでしょう
卓上で人の命をゲームの駒のように扱う非人間 くそったれ野郎ども
ざけんじゃねー!
とむなしく空に 毒づく。
自衛隊のひとたち、派遣命令が出ても行かないでほしいです
行かないで 職を失うようなことになったら市民で支えましょう
それぐらいしてでも市民が (もちろん自衛隊も市民)
それぐらいしてでも あの"人の命を命とも思わない 狂った政府"が 国民を戦地に送ることを妨害しないといけないと思います。
。、、そういえば、自衛隊の雇用契約書に戦争に行かなければ行けないと言う条項は含まれているのでしょうか?
四人に一人が後遺症に苦しんでるってことじゃあないですか?
で、当然国からのサポートなどありはしないのでしょう
卓上で人の命をゲームの駒のように扱う非人間 くそったれ野郎ども
ざけんじゃねー!
とむなしく空に 毒づく。
自衛隊のひとたち、派遣命令が出ても行かないでほしいです
行かないで 職を失うようなことになったら市民で支えましょう
それぐらいしてでも市民が (もちろん自衛隊も市民)
それぐらいしてでも あの"人の命を命とも思わない 狂った政府"が 国民を戦地に送ることを妨害しないといけないと思います。
。、、そういえば、自衛隊の雇用契約書に戦争に行かなければ行けないと言う条項は含まれているのでしょうか?
> cocomeritaさん、国の施設もあるようですが、なかなか収容しきれないようです。
なんとか日常生活ができるようになっても雇用の保証はないし、無理をすると又再発してしまう人もいる。
妻や子もおかしくなる。
ほんとにひどいです。
なんとか日常生活ができるようになっても雇用の保証はないし、無理をすると又再発してしまう人もいる。
妻や子もおかしくなる。
ほんとにひどいです。
by saheizi-inokori
| 2015-09-23 12:25
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
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