人生は他者だ 西川美和「永い言い訳」
2015年 09月 22日
好い天気が続く。
こんな朝はひたすらサンチとの散歩という、そのことだけを楽しんでいられる。
いつもの方からお借りした本だ。
作者のことは初めて知ったが、31歳でよくもこれだけ家族のかかえる闇に気がつくものだと感心する。
事故で突然妻を喪った人気作家・幸夫が、同じ事故で死んだ妻の親友の夫・陽一(ダンプカーの運転手)とその子供たちと交流しながら(これが、なかなか好い)、陽一と比べた自分の悲しみ方(ほぼ悲しんでいない)とか、子供を持ち育てることの意味などを考え、ひいては在りし日の妻がどんなことを感じながら生きていたかをほとんど知ろうともせずに来てしまったことに気づく。
「あのひとはさ、おれらと居る時だって、喋るネタは十中八九、幸夫くん(主人公の作家)のことなんだぜ。俺なんて、直接会ったこともなかったのにさ。幸夫くんはこれが好き、幸夫くんはこれ嫌い、幸夫くんはこう言った、幸夫くんならこうする、、そんなのばっかだ。嬉しそうな顔してさ」
「ーだからって何だよ」
声が震えた。もう、聞きたくないんだそんな話。
つまりは自身の軽佻浮薄な・エゴイスティックな生き方がつきつけられるのだ。
俺もまた、もう、聞きたくないんだそんな話、心の声が震える。
とはいえ、俺の場合は俺自身が俺に話しかけるのだ、年々強く。
ふとしたはずみに思い出すさまざまな出来事、故人の漏らした言葉が、話しかけ続けるのだ。
何にせよ、生きてるうちの努力が肝心だ。時間には限りがあるということ、人は後悔する生き物だということを、頭の芯から理解しているはずなのに、最も身近な人間に、誠意を欠いてしまうのは、どういうわけだろう。
愛するべき日々に愛することを怠ったことの、代償は小さくはない。
あの人が居るから、くじけるわけにはいかんのだ、と思える「あの人」が、
誰にとっても必要だ。生きて行くために、想うことの出来る存在が。
つくづく思うよ。他者の無いところに人生なんて存在しないんだって。
人生は、他者だ。
敬老の日に敬われる年齢になった今頃、この俺もやっとそういうことに気づいている。
文藝春秋
こんな朝はひたすらサンチとの散歩という、そのことだけを楽しんでいられる。
作者のことは初めて知ったが、31歳でよくもこれだけ家族のかかえる闇に気がつくものだと感心する。
事故で突然妻を喪った人気作家・幸夫が、同じ事故で死んだ妻の親友の夫・陽一(ダンプカーの運転手)とその子供たちと交流しながら(これが、なかなか好い)、陽一と比べた自分の悲しみ方(ほぼ悲しんでいない)とか、子供を持ち育てることの意味などを考え、ひいては在りし日の妻がどんなことを感じながら生きていたかをほとんど知ろうともせずに来てしまったことに気づく。
「あのひとはさ、おれらと居る時だって、喋るネタは十中八九、幸夫くん(主人公の作家)のことなんだぜ。俺なんて、直接会ったこともなかったのにさ。幸夫くんはこれが好き、幸夫くんはこれ嫌い、幸夫くんはこう言った、幸夫くんならこうする、、そんなのばっかだ。嬉しそうな顔してさ」
「ーだからって何だよ」
声が震えた。もう、聞きたくないんだそんな話。
つまりは自身の軽佻浮薄な・エゴイスティックな生き方がつきつけられるのだ。
俺もまた、もう、聞きたくないんだそんな話、心の声が震える。
とはいえ、俺の場合は俺自身が俺に話しかけるのだ、年々強く。
ふとしたはずみに思い出すさまざまな出来事、故人の漏らした言葉が、話しかけ続けるのだ。
何にせよ、生きてるうちの努力が肝心だ。時間には限りがあるということ、人は後悔する生き物だということを、頭の芯から理解しているはずなのに、最も身近な人間に、誠意を欠いてしまうのは、どういうわけだろう。
愛するべき日々に愛することを怠ったことの、代償は小さくはない。
あの人が居るから、くじけるわけにはいかんのだ、と思える「あの人」が、
誰にとっても必要だ。生きて行くために、想うことの出来る存在が。
つくづく思うよ。他者の無いところに人生なんて存在しないんだって。
人生は、他者だ。
敬老の日に敬われる年齢になった今頃、この俺もやっとそういうことに気づいている。
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Vimalakirti at 2015-09-22 17:39
ブログの記事とは関係のないことで申し訳ありませんが、
「サンチ」とは何から名づけられたお名前でしょうか。
印度の地名サンチーからかしらなどと思ったりしています。
「ハズレ」ですね、きっと。
「サンチ」とは何から名づけられたお名前でしょうか。
印度の地名サンチーからかしらなどと思ったりしています。
「ハズレ」ですね、きっと。
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fusk-en25 at 2015-09-22 19:11
もう聞きたくないのだそんな話。。。
とはいささか違うのですが。
夫が死んで、丸6年。
一時期はしょっちゅう夫ならこうするだろうと。
私の問いに対する答えを出していたのですね。
本当は自問自答なのに。形を自問他答の形にして。。
でもそれが自問自答にすぎないことはわかっている。
そのつまらなさに、私は飽き飽きしています。
本当は本人でないからなんと答えるかわからないのに
判ったような顔をしてる私自身に対して。
だから私は生きている人間とつきあいたい。
どんな自分と違った答えであろうと。相手が出す答えの重みを感じられるのは不確かな気持ちでいるより数倍素晴らしいことなんです。
とはいささか違うのですが。
夫が死んで、丸6年。
一時期はしょっちゅう夫ならこうするだろうと。
私の問いに対する答えを出していたのですね。
本当は自問自答なのに。形を自問他答の形にして。。
でもそれが自問自答にすぎないことはわかっている。
そのつまらなさに、私は飽き飽きしています。
本当は本人でないからなんと答えるかわからないのに
判ったような顔をしてる私自身に対して。
だから私は生きている人間とつきあいたい。
どんな自分と違った答えであろうと。相手が出す答えの重みを感じられるのは不確かな気持ちでいるより数倍素晴らしいことなんです。
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saheizi-inokori at 2015-09-22 22:05
> Vimalakirtiさん、残念でした。
落語家の小三治(大好き)に似ているので、コサンジとしようと思ったけど、それは呼びにくいので、サンジ→サンチとしました。
知人を介してそれを知った小三治師匠が「ま・く・ら」などの著書にサンチあてのサインをしてくれました。
落語家の小三治(大好き)に似ているので、コサンジとしようと思ったけど、それは呼びにくいので、サンジ→サンチとしました。
知人を介してそれを知った小三治師匠が「ま・く・ら」などの著書にサンチあてのサインをしてくれました。
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saheizi-inokori at 2015-09-22 22:08
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たま
at 2015-09-23 02:28
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世の中、すっかり「ススキ」ですね。
長女夫婦が立教大学近くに引っ越し、手伝いがてら散策するも、いまだ価格統制令適用の「銭湯」が健在なるを知るにつけ・・・。「芙蓉」もよし、「木槿」は仕舞にて、せめて「シュウメイギク」の今しばらく。
長女夫婦が立教大学近くに引っ越し、手伝いがてら散策するも、いまだ価格統制令適用の「銭湯」が健在なるを知るにつけ・・・。「芙蓉」もよし、「木槿」は仕舞にて、せめて「シュウメイギク」の今しばらく。
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sweetmitsuki at 2015-09-23 05:39
その青い花は、こちらでもよく見かけるのですけど、改めて調べてみると名前がはっきりしません。
カワミドリでしょうか。
カワミドリでしょうか。
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at 2015-09-23 08:49
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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saheizi-inokori at 2015-09-23 09:51
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saheizi-inokori at 2015-09-23 09:55
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saheizi-inokori at 2015-09-23 10:11
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saheizi-inokori at 2015-09-23 17:21
> みいさん、散歩と銭湯のシルバーウイークでした。
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sheri-sheri at 2015-09-23 21:38
はぁちゃん、元気いっぱいですね。
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saheizi-inokori at 2015-09-23 22:03
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ふくよか
at 2015-09-25 19:35
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はーちゃん逞しくなりましたね。よーたはラグビーに夢中です。
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saheizi-inokori at 2015-09-25 21:21
by saheizi-inokori
| 2015-09-22 11:48
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
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Comments(16)