イマイチ乗らなかったのは俺のせいか 第６１回 人形町・らくだ亭

あまり落語に行くという気分じゃなかったけれど、前売りのチケットがある。
クリアフアイルに、今までは半年先くらいまで前売り券が入っていたのに、これが最後の一枚。
このところ前売りをチエックすることもなかったのだ。

落語会の前に町を歩いたり銭湯に入るのが好きなのだが、どうも今日はその気にもならず、時間間際に日本橋劇場へ。
前座、楽ちん「子ほめ」（半分）。
宮治「欠伸指南」

芸協を卑下するようなネタをたっぷり、本題のなかでも繰り返す。
文治に似た、本人だけが面白がっているような味もなにもないジョーク。
若いのにこれでは困る。

本題で、欠伸師匠の欠伸がへたくそなので、この噺にならない。
志ん輔「三方一両損」

宮治とエアコンの利き過ぎが会場を冷やしっぱなしだからか、さいごまでリズム感を取り戻せない。
この間の「替り目」でも見られたが、突然号泣するのだ。
うまくはまれば面白いのだが。

圓橘「夏の医者」

初めて聴くベテラン。
原節子が京都で急に物もらいができて、助監督が間違えて精神病院に連れて行ったときに、すっぴんで物もらいができている原が「原節子と申します」と言ったものだから、医者が助監督に「この人、いつからこうなんですか」と尋ねた噺など、いくつか面白いマクラを聞かせた。

パンフレットに「しっかりした語り口で静謐な落語世界を作る」とあるが、たしかにときおりみせるすてきな笑顔と静かな語り口はいい。
ただ俺の聴覚が変調をきたしているのか、しっかりした語りのはずなのに聞き取れないセリフがあったのは残念。
トボケタ医者が山道を登って汗びっしょりになって、山頂で降り注ぐ陽射しにしかめ面をしながらも、風を入れて、キセルを何回も喫いつけるところ、火種を左手の掌に転がす仕草、そのあとウワバミに呑みこまれても悠揚迫らず、日本昔話の風情もあって楽しかった。
小満ん「へっつい幽霊」

賭け事がらみのマクラが例によって楽しい。

野博打や銭の中なるキリギリス

一茶も支援に。
博打で大もうけした男がへっついを買うってところから始まる。
幽霊が出るから、タダでいい、届けてやると言われるのだ。
さっそく出てきた幽霊との渋くもトボケタ会話が味があるのだが、この師匠も声が低くて早口、しかも決して言い換えたりするサービスはしない。
そのせいか、俺には珍しく、うつらうつら。
通路を挟んだ真ん中の席だけに小満んが見咎めなかったかと反省。
帰りに「はじめ」によったら、「木曜日だから国会前行動？」と訊かれて、ますます恐縮の至り。