開高健のことなら面白くないはずがない 細川布久子「私の開高健」

地下鉄に乗ってるじゃない。目の前に座っている人の顔を見ただけで、三十分くらいで、ショートストーリイを一つ作れるか。そういう訓練をしろって開高さんによく言われたわよ。アナタ、できる?

筆者がサン・アドであった斎藤純子(後に作家・斎藤澪)から聞いた言葉。
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サン・アドでは斎藤が開高健の担当者だった。
「面白半分」で『これぞ、開高健』という臨時増刊の企画・編集をした筆者が、開高健のどういうところにほれ込んだか、身近に接した開高はどんな男だったかを書く。
彼女の成長の記録であり、読みようによっては開高健に対する片思い(?)ラブレターだ。

「サンデー毎日」、「集英社」などを遍歴し、あげくにフランスにわたりワインを学び、ワイン関連の書も著す。
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俺は「面白半分」の社長をしていた佐藤嘉尚さんとは袖の摺り合うていどのおつきあいがあったので、彼の名前が出てくるとあの人の良さそうな大きな顔を思い出して懐かしかった。
裁判沙汰になった「四畳半襖の下張り」の特集号を一部貰ったな。
彼が館山に作った『オーパ!』というペンションに行っていっしょに飲んだこともある。
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佐藤以外にも開高をめぐるいろんな人が登場する。
吉行淳之介との、世に出なかった対談記録が、もう時効ということで載っている。
『死の棘』に描かれる島尾敏雄の奥さまの凄まじい夫への愛のあり方について、あれでは島尾はマゾヒストにならざるを得ないだろうと二人は語り合う。
ゆうべ愛し合った女が翌日交通事故で死んだのを見たことがヴェトナムやナイジエリアの悲劇よりはるかにコタエタ、俺ははかないひとりの男に過ぎなかった、と語ったあとで島尾のことを語ったのだ。

開高という天才のなかにある、はかない・哀れな男、他人の心理の機微に敏感すぎるような含羞の人でもあったという。

と言いつつも、筆者は開高の自分への気持ちに自信が持てなかった女ではなかったか。
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集英社
Commented by sheri-sheri at 2015-06-21 15:52
今日は。いつみても素敵なお写真です。
Commented by saheizi-inokori at 2015-06-21 16:28
sherisheriさん、ありがとう。梅雨の晴れ間、緑が美しいです。
Commented by c-khan7 at 2015-06-21 17:21
道行く人に勝手な名前を付けるのが得意です。
ショートストーリーも考えてみますかぁ。。
Commented by saheizi-inokori at 2015-06-21 17:34
c-chanさん、たしかにお上手そうですね。4コママンガも。
共産党は勲章かな。
Commented by saheizi-inokori at 2015-06-21 17:38
c-khanさん、ごめんなさい。名前を間違えました。出先からガラケー入力なので直せません。悪しからず。
Commented by pallet-sorairo at 2015-06-21 22:15
開高健とあっては見逃せない。
読んでみようっと。
Commented by ikuohasegawa at 2015-06-22 05:42
報告です。
予約していた『ジャスミンの残り香』
やっと、順番が回ってきました。
Commented by at 2015-06-22 07:02
開高と吉行のグルメ対談を読んだことがあります。
あんまり大声だすなよ、なんてシャイな吉行が興奮気味の開高を
たしなめる場面がありました。
Commented by saheizi-inokori at 2015-06-22 07:41
sorairoさん、彼の裏会計を預かった女性の話、面白かったです。
Commented by saheizi-inokori at 2015-06-22 07:44
ikuohasegawaさん、違った視点でアジアの歴史をみることができると思います。
Commented by saheizi-inokori at 2015-06-22 07:50
福さん、「面白半分」臨時増刊号の冒頭が二人の対談、そこでカットされていたのが島尾がらみの話。グルメ対談飲酒対談いろいろありましたね。開高も根はシャイだと思います。ダブルシャイかな。
Commented by unburro at 2015-06-22 13:54
文庫本にならないかなぁ、と思っていましたが、
ああ、もう我慢できない!
さっき、ネットで発注してしまいました…
Commented by saheizi-inokori at 2015-06-22 20:39
unburroさん、期待外れでなければいいのですが。
Commented by pallet-sorairo at 2015-06-25 14:29
「萬病の薬
  (但シ少量ズツ服用ノ事)」
かっこいいなぁ開高健、そしてあたたかい。
フクコさんがいかに敬愛していたかがひしひしと伝わってきました。
>筆者は開高の自分への気持ちに自信が持てなかった女ではなかったか。
saheiziさんのおっしゃりたいこともよくわかるけど
筆者の場合そんなことも超越した「敬愛」なんじゃないかなぁ。
いろいろ読んだはずなのに、内容をすっかり忘れてしまっているのが悲しいですが、『輝ける闇』だけでも読み直してみようかと思ったところです。
直前に堤未果『沈みゆく大国アメリカ』を読んで嫌な気分だったので、一服の清涼剤のような読後感を持ちました。
ご紹介ありがとうございました。
Commented by saheizi-inokori at 2015-06-25 23:15
> pallet-sorairoさん、そうですね、やっぱり敬愛でしょうね、だから開口も信頼したのでしょう。
私も闇シリーズを読み直そうかと思っています。
Commented by unburro at 2015-06-29 00:50
読了しました。
3回も読み直してしまいました。
そして、何だか色々思う事が多かったので、感想とご紹介の御礼を、ここにコメントしようと思ったのですが、長くなってしまったので、saheiziさんに宛てた読書感想文?として、
拙ブログに書いてみました。
御笑覧ください。
Commented by saheizi-inokori at 2015-06-29 08:59
> unburroさん、私もこういうものを読むと自分の人生と重ねて読んでしまい痛い思いをすることもしばしばです。
細川さんの健康を祈っています。
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by saheizi-inokori | 2015-06-21 09:29 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(17)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori