見ごたえのあった文菊VS吉坊 近代五種競演の第432回花形演芸会
2015年 05月 31日
昨日は国立演芸場で「花形演芸会」。
前座・つる子が「初天神」を飴玉と凧、団子抜きでやる。
幼稚園に通ったことはないが、幼稚園児になって先生のお話を聞いているような感じがする。
笑っているけれどじつは怖い先生。
演目は多彩、芸能展示会のようだった。
(演芸場ギャラリー、「花見酒」と「ガマの油」)
まず講談、一龍齋貞鏡「明智左馬之助湖水渡り」
七代目・八代目の貞山を父、祖父に持ち、神田伯龍を義祖父とする、講談界のサラブレッド・牝。
緩急・リズム感に乏しく肝心の修羅場が聞き取りにくかった。
ついで落語、月の家鏡太「代脈」、そして、曲芸、鏡味初音と鏡が三枚続く。
初音ちゃんは五階茶碗で毬を二つ重ねるのを途中で「怖いのでやめま~す」、傘回しでは「落ちそうで落ち、な~い」の連発、茶碗回し、「回ったのは好いけれど止めるのが大変、トマレー、茶碗だけにうまくトマッチャワン」。
ちょっと舌足らずなのが安倍とは違ってカワユイ。
ハラハラするのも安倍と違ってカワユイ。
(これも紫陽花と同一犯か、イイね)
上方からきた落語家、桂吉坊「冬の遊び」。
この人、34歳かな、でも童顔をほころばせてカワユイ。
カワユイ落語家が初音ちゃんの「トマッチャワン」に楽屋一同ひっくり返ったという。
大阪の新町は吉原にも比すべき格の高い遊び場。
そこの大スポンサーは堂島の米相場師・ジキ、彼らが暑い中揃ってやってきて栴檀大夫を出せという。
この日は大夫は新町名物の道中に出ているから座敷に出られへんことは百も承知の上の無理難題。
どうやら道中をするという挨拶を忘れてしまったのが原因。
道中のさいちゅうに栴檀を連れ戻す吉田屋の女将・お富。
ここまでの成り行きがハラハラさせて面白い。
機嫌を直したジキ連中、どうせなら厚着をしている大夫に心中立て、わいらも冬の着物であそぼやないか。
来合せた一八は、すだれなんか寒いやおへんか唐紙たてましょ、めいめいに火鉢を、冷ヤッコみたいなもんやめて鍋料理で、、悪乗り、冬の遊びでんねん。
早口でも緩急があって聴きとりやすく、説明の部分もうまく話の流れに乗せて、上方のゼイタクな遊びの雰囲気が楽しい(ちょっと暑いけどな)。
やるもんやな。
中入り後は浪曲、東屋一太郎「弥作の鎌腹」。
明るく踊りだしたくなるような浪曲。
でも噺の内容は赤穂浪士外伝、神崎与五郎の兄が弟をにがすために代官を鉄砲で撃ち殺し自分も鎌で腹を斬るのだ。
コントもあった、ジグザグジギー
学校の先生と生徒が三つのコント。
ややシュールともいうべきか。
もう少し簡略にして五つくらいのコントをぶっぱなしたらどうだ。
そしてトリにあがったのは、古今亭文菊「甲府い」。
久しぶりに見る文菊、頭は相変わらず青々と剃りあげているが引き締まって精悍さをましたようだ。
甲府から身を立てるために江戸にやって来てスリにすべてを盗られた男・善吉が優しい豆腐屋に拾われてやがてはそこの婿になるというハッピーな噺。
悪いのは登場しない浅草のスリだけ、あとは豆腐屋の夫婦、長屋のおカミさん連、主人公・善吉、すべて善なる国から善なるものを広めにやってきたような人ばかり。
国民の命を犠牲にするかもしれないような法律の審議をこれっぽっちの謙虚さや何の恐れ気もなく上から目線の薄ら笑いで「早く質問しろよ」とほざく悪者を総理大臣にしている国の住人としては、涙が出るような噺だ。
楷書のようなきちんとした落ち着いた語り口。
ところどころに添え書きのような崩し字が色気と笑いを誘う。
とくに文菊の十八番、女の演じ方はさらに磨きがかかって、豆腐屋の女将、長屋の女将連中、娘、それぞれを表情たっぷりに描き分け、杉浦日向子の漫画を見るようだ。
豆腐屋夫婦が善吉を婿養子にしようと相談する場面は、爆笑の後にジンとくる。
やっぱり江戸落語が今日の勝者かと思わせる。
文菊と吉坊の見ごたえのある東西対決、大師匠の志ん生・圓菊と米朝が観ていたかもしれない。
前座・つる子が「初天神」を飴玉と凧、団子抜きでやる。
幼稚園に通ったことはないが、幼稚園児になって先生のお話を聞いているような感じがする。
笑っているけれどじつは怖い先生。
演目は多彩、芸能展示会のようだった。
まず講談、一龍齋貞鏡「明智左馬之助湖水渡り」
七代目・八代目の貞山を父、祖父に持ち、神田伯龍を義祖父とする、講談界のサラブレッド・牝。
緩急・リズム感に乏しく肝心の修羅場が聞き取りにくかった。
初音ちゃんは五階茶碗で毬を二つ重ねるのを途中で「怖いのでやめま~す」、傘回しでは「落ちそうで落ち、な~い」の連発、茶碗回し、「回ったのは好いけれど止めるのが大変、トマレー、茶碗だけにうまくトマッチャワン」。
ちょっと舌足らずなのが安倍とは違ってカワユイ。
ハラハラするのも安倍と違ってカワユイ。
上方からきた落語家、桂吉坊「冬の遊び」。
この人、34歳かな、でも童顔をほころばせてカワユイ。
カワユイ落語家が初音ちゃんの「トマッチャワン」に楽屋一同ひっくり返ったという。
大阪の新町は吉原にも比すべき格の高い遊び場。
そこの大スポンサーは堂島の米相場師・ジキ、彼らが暑い中揃ってやってきて栴檀大夫を出せという。
この日は大夫は新町名物の道中に出ているから座敷に出られへんことは百も承知の上の無理難題。
どうやら道中をするという挨拶を忘れてしまったのが原因。
道中のさいちゅうに栴檀を連れ戻す吉田屋の女将・お富。
ここまでの成り行きがハラハラさせて面白い。
機嫌を直したジキ連中、どうせなら厚着をしている大夫に心中立て、わいらも冬の着物であそぼやないか。
来合せた一八は、すだれなんか寒いやおへんか唐紙たてましょ、めいめいに火鉢を、冷ヤッコみたいなもんやめて鍋料理で、、悪乗り、冬の遊びでんねん。
早口でも緩急があって聴きとりやすく、説明の部分もうまく話の流れに乗せて、上方のゼイタクな遊びの雰囲気が楽しい(ちょっと暑いけどな)。
やるもんやな。
明るく踊りだしたくなるような浪曲。
でも噺の内容は赤穂浪士外伝、神崎与五郎の兄が弟をにがすために代官を鉄砲で撃ち殺し自分も鎌で腹を斬るのだ。
コントもあった、ジグザグジギー
学校の先生と生徒が三つのコント。
ややシュールともいうべきか。
もう少し簡略にして五つくらいのコントをぶっぱなしたらどうだ。
久しぶりに見る文菊、頭は相変わらず青々と剃りあげているが引き締まって精悍さをましたようだ。
甲府から身を立てるために江戸にやって来てスリにすべてを盗られた男・善吉が優しい豆腐屋に拾われてやがてはそこの婿になるというハッピーな噺。
悪いのは登場しない浅草のスリだけ、あとは豆腐屋の夫婦、長屋のおカミさん連、主人公・善吉、すべて善なる国から善なるものを広めにやってきたような人ばかり。
国民の命を犠牲にするかもしれないような法律の審議をこれっぽっちの謙虚さや何の恐れ気もなく上から目線の薄ら笑いで「早く質問しろよ」とほざく悪者を総理大臣にしている国の住人としては、涙が出るような噺だ。
楷書のようなきちんとした落ち着いた語り口。
ところどころに添え書きのような崩し字が色気と笑いを誘う。
とくに文菊の十八番、女の演じ方はさらに磨きがかかって、豆腐屋の女将、長屋の女将連中、娘、それぞれを表情たっぷりに描き分け、杉浦日向子の漫画を見るようだ。
豆腐屋夫婦が善吉を婿養子にしようと相談する場面は、爆笑の後にジンとくる。
やっぱり江戸落語が今日の勝者かと思わせる。
文菊と吉坊の見ごたえのある東西対決、大師匠の志ん生・圓菊と米朝が観ていたかもしれない。
京の夏の風物詩である「舞台」、料理屋が鴨川の上にかかるように座敷をしつらえて料理を食べさせてくれる。一度だけご馳走になった事があったんですが、その料理が水炊きだったんです。七輪に炭火を起こしその上に鍋を乗せてグラグラ湯を沸かし、水炊きを食べるんですが、これが暑いのなんのって、気が遠くなりそうでした。あちらでは真夏に熱い料理を食べるのが贅沢なんですかね。
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unburro at 2015-05-31 12:30
↑ほめ・く様、それは鳥料理の新三浦でしょうか?
あそこは一年中、水炊き、しか、無いのです。
流石にへそ曲りの京都人でも、そんな我慢大会を好んではやらないです(笑)
次回は、冷たい鱧の湯引きを梅肉で召し上がって下さい。
並んだ赤い花、ツツジでしょうか?
この写真を見てすぐに、同一犯だ!と思いました。
あそこは一年中、水炊き、しか、無いのです。
流石にへそ曲りの京都人でも、そんな我慢大会を好んではやらないです(笑)
次回は、冷たい鱧の湯引きを梅肉で召し上がって下さい。
並んだ赤い花、ツツジでしょうか?
この写真を見てすぐに、同一犯だ!と思いました。
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散歩好き
at 2015-05-31 14:48
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当地では支流域に住む人からは良くカルガモの話を聞くのですが本流でのカルガモもの子育ては一日しか見たことが有りません。一日で消えました。成鳥は良く見かけます。渡り鳥のカモが居なくなった今が子育て真っ盛りですね。
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unburro at 2015-05-31 15:01
追記
しかし、真夏の川床の料理に、熱い水炊き!をメニューに入れる所が、京都のイヤらしさかもしれませんね…
「そら、水炊きを選ばはったんは、お客さんどすやんか。
暑い時に熱いもんを食べるんがお好きなんやなぁ、て感心してたんどすわぁ〜。やっぱり東京のお風呂と一緒で、熱い方がええのかなぁ、とか。え、それしかない、って言わはったかて、ウチの店は
創業以来、これしかやってまへん。堪忍どすえ。」
とかねぇ。でも、悪気は無い?のですよ。たぶん。
しかし、真夏の川床の料理に、熱い水炊き!をメニューに入れる所が、京都のイヤらしさかもしれませんね…
「そら、水炊きを選ばはったんは、お客さんどすやんか。
暑い時に熱いもんを食べるんがお好きなんやなぁ、て感心してたんどすわぁ〜。やっぱり東京のお風呂と一緒で、熱い方がええのかなぁ、とか。え、それしかない、って言わはったかて、ウチの店は
創業以来、これしかやってまへん。堪忍どすえ。」
とかねぇ。でも、悪気は無い?のですよ。たぶん。
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saheizi-inokori at 2015-05-31 17:33
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saheizi-inokori at 2015-05-31 17:35
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saheizi-inokori at 2015-05-31 17:36
> 散歩好きさん、たった一羽になった子鴨がピッタリ親鴨にくっついて歩く(泳ぐ)のはかわゆくもあり哀れでもあります。
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saheizi-inokori at 2015-05-31 17:38
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散歩好き
at 2015-05-31 20:58
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じりじりと気温が上がると体表の血管に血が集まり内臓に血液が少なくなり消化器が冷えます。よって夏ほど温かいものを食べましょうと言うのが漢方の理論です。
暑いと汗をかき消化器中の水分が少なくなり水が少なくなると冷やす力が減少し消化器に虚熱を持ちます。虚の熱ですので水や氷で冷やしすぎると腹を壊します。一応考えに入れておく事です。
暑いと汗をかき消化器中の水分が少なくなり水が少なくなると冷やす力が減少し消化器に虚熱を持ちます。虚の熱ですので水や氷で冷やしすぎると腹を壊します。一応考えに入れておく事です。
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saheizi-inokori at 2015-05-31 21:09
> 散歩好きさん、ありがとう。
冷より燗が好きなのは理にかなっているのでしょうか^^。
私はあまり冷たいものを摂りません。
朝も温かい野菜スープとトーストにヨーグルトです。
でも水はよく呑みます。
冷より燗が好きなのは理にかなっているのでしょうか^^。
私はあまり冷たいものを摂りません。
朝も温かい野菜スープとトーストにヨーグルトです。
でも水はよく呑みます。
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福
at 2015-06-01 06:53
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鏡太の「代脈」は私も聴いたことがあります。
何年か前の春「よみうりホール」で、圓蔵や喬太郎の前に出た時です。
してみると、得意ネタか。今度真打になるそうです。
文菊は「甲府い」でしたか。
私はこの噺の面白さがいまいち感得できぬ未熟者です。
何年か前の春「よみうりホール」で、圓蔵や喬太郎の前に出た時です。
してみると、得意ネタか。今度真打になるそうです。
文菊は「甲府い」でしたか。
私はこの噺の面白さがいまいち感得できぬ未熟者です。
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saheizi-inokori at 2015-06-01 08:59
> 福さん、鏡太は初めてだったかな、元気がありますね。
「甲府い」は演じ手によってずいぶん違うのではないでしょうか。
豆腐屋を襲うことを立身出世がなったという世界観・人生観が共に納得できるような演じ方だったらすばらしい。
それほど豆腐屋の世界がほのぼのと美しく描かれていれば。
「甲府い」は演じ手によってずいぶん違うのではないでしょうか。
豆腐屋を襲うことを立身出世がなったという世界観・人生観が共に納得できるような演じ方だったらすばらしい。
それほど豆腐屋の世界がほのぼのと美しく描かれていれば。
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keiko_52 at 2015-06-01 10:43
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saheizi-inokori at 2015-06-01 12:18
by saheizi-inokori
| 2015-05-31 10:57
| 落語・寄席
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Comments(14)