たまには文楽もいいね  文楽「吉田玉男襲名披露」@国立劇場

早起きして病院に行って診察カードを機械に入れたけれど予約した受診科の表示がない。
係りの人に少しきつい調子で言いつけてから気がついた。
明日の間違い、今日は11時から文楽を見る日だった。
ときどき見かける不機嫌な爺さんのように怒らなくてよかった。
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吉田玉女改め二代目吉田玉男・襲名披露公演の今日は千穐楽。
ロビーは着物姿の女性が多く、ときどきハッとするような美形もちらほらする。

開演15分前、幕開け三番叟、なんか華やか。

「五條橋」

子供のころ馴染んだ「京の五條の橋の上、牛若丸は弁慶と」だ。
牛若丸がここと思えばまたあちら、弁慶ぼやいて曰く

 水の月かや手に溜まらぬ

太夫が4人、三味線も4人、景気の良い幕開け。
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「新版歌祭文 野崎村の段」

野崎村の久作の娘・おみつが久松と祝言の仕度、なますを作るために大根をとんとん切ったり、化粧をしたり、ワクワクドキドキ、かわいらしくいじらしい。
お染が久松を追いかけてくるとやきもちを焼いて追い帰そうとするのもますますいじらしい。
あげくの果てにお染の横紙破り(一緒にならなきゃ死んじゃう!)が通って久松がお染になびいてしまうのは納得いかない俺。

それでも二人のために尼さんになって身を引くおみつがほんとに可哀そう。

ハハ、べるはべるはべるは、喋るは喋るはわやひんめっきしゃっき(厳しく責め問うこと)わっぱさっぱ橙の数(年齢)逢いに来たやら南やら 知らぬ在所も厭いはせぬ、、

いろんな言葉が出て来て分らないのもあるけど面白い。

三味線の鶴沢清治、鶴沢寛治は人間国宝。

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襲名披露口上

司会は誰かわからない。
豊竹嶋太夫、鶴沢寛治、吉田和生、桐竹勘十郎、だったかな、それぞれが口上。
本人は何も言わない。

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「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」熊谷桜の段 熊谷陣屋の段

熊谷次郎直実を吉田玉男。

主君・義経が院のご落胤である平敦盛の命を助けたいという心中を思いやり、自分の子・小次郎の首を切って敦盛の身代わりにしたという話だ。
それを知らない敦盛の母・藤の局は直実を討つ手助けをすることでかつての恩を返せと小次郎の母・相模に迫る。
いくら恩を受けたと言っても夫の命を差し出すわけにはいかないね。

直実が敦盛の首を打ったときの話を藤の局と相模に聞かせると藤の局は直実に短刀をついてかかるが抑えられる。

義経に首実検(敦盛の、ということになっている)をしてもらう。
それが小次郎のものであることを知った相模の驚き・悲嘆・憤慨、、怒れ怒れ!泣き叫べ!
切・豊竹咲大夫、後・竹本文字久大夫のど迫力!
三味線・鶴沢清介のものすごい気合い。

無常を知って義経に骸骨を乞い僧形となった直実のほろりと落とす一滴、
 
 柊に置く初雪の日陰に融ける風情なり

文字久大夫に代わったときにぐらぐらっとかなり大きな揺れ。
そのとき少しも騒がず

 こそは入相の鐘は無常の時を打つ


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(どこかの街宣車。見えないところは打ち首とあった)

人形が生きていて人形遣いは、その介添えのように見えてくる。
大阪の誰かさんが「人形遣いの顔が邪魔」と言ったそうだが、そんなことはない(邪魔なのはアンタや)。

暗く切ない話にもどこかに滑稽を取り入れ、大仰な感情表現が気にならないのは演者の力量ゆえか。
少し疲れないでもないが、また来てもいいと思った。


Commented by jarippe at 2015-05-26 13:47
ますます粋なsaheijiさんですね
Commented by saheizi-inokori at 2015-05-26 15:19
> jarippeさん、文楽はあまり粋ではないかもしれない。
そこが面白いような気がします。コテコテ。
Commented by 喜洛庵上々 at 2015-05-26 15:47 x
ご無沙汰しております。
写真の街宣車、おそらく播磨屋さんのトラックですね。
兵庫の煎餅屋さんです。
結構過激な文言を書き連ねるのでびっくりしますが
お煎餅は美味しいんですョ^^
Commented by at 2015-05-26 16:27 x
今日はランダムに、 花だらけやね、こっちは汗疹続きですわ、
播磨屋さんのトラック、一度は見て見たいし、懐かしいおかきを食べてみたい。
文楽、人形使いさんが主役なんちゃうんですか? 
隠居、元気キープやで!
Commented by saheizi-inokori at 2015-05-26 17:44
> 喜洛庵上々さん、ああ、あの虎の門の!
お煎餅食ったことありますよ。
過激な味じゃなかった、そういえば店内にいろいろ書いてましたね。
Commented by saheizi-inokori at 2015-05-26 17:46
> 蛸さん、いい季節です。国立劇場の庭で撮った写真が多いです。
三台連ねて行ったトラック、いづれも安倍批判でした。
文楽は人形と義太夫と三味線が三位一体です。
そこが面白いしちょっと疲れます。
元気でっせ。
Commented by kogotokoubei at 2015-05-26 18:27
数日前のメールで、25日は文楽、とご連絡をいただいおりましたよ^^
しかし、私も最近はモノ忘れが多くなってきましたので、とても佐平次さんのことを言えたもんじゃない。

素晴らしい舞台だったようですな。
伝統芸能の舞台を語る資格のない人には、政治の舞台からも去っていただきましょう!
Commented by kogotokoubei at 2015-05-26 18:56
ほーら、またやった。
「素晴らしい舞台だったようですね」と書いたつもりが、偉そうな表現で送ってしまいました。
あーせい校正をしっかりやらなきゃ^^

失礼の段、平にお許しを!
Commented by saheizi-inokori at 2015-05-26 21:27
> kogotokoubeiさん、どういうしくみでこういう勘違いをするのか、カミさんにも「今日は能とかじゃなかったの?」と訊かれながらも間違えてしまいましたよ。
でもそのせいで(はありませんが)、今日は予約時間より早く見てもらえてずいぶん時間に余裕ができました。神様がみてたのかな。
Commented by j-garden-hirasato at 2015-05-26 21:58
文楽は見たことがありません。
見ても理解できないかも(笑)。
Commented by saheizi-inokori at 2015-05-26 22:44
> j-garden-hirasatoさん、理解できないなんてことはないと思いますよ。
歌舞伎よりも庶民的ではないかなあ。
チャンスがあったら一見の価値ありです。
Commented by unburro at 2015-05-27 00:58
文楽は、能よりテンポがよくて、馴染みやすいです。
これは私が関西人だからかもしれませんね。
コテコテの関西弁ですからねぇ。
それと、元々、庶民の娯楽だからだと思います。

大騒ぎをして、やっと退陣が決まった大阪市長は、
何とか粗探しをして、伝統芸能を壊したかったのでしょうね。
つくり上げ、守ることの大切さを知らない。
安倍と同じ種類の人間です。
私は、大阪人ではないですが、関西人として、
少しほっとしています。
Commented by tona at 2015-05-27 08:43 x
あるある、一日間違えてしまうこと。後でなくて良かったです。
すっぽり抜けてしまうよりましかと思ったりします。
国立劇場の文楽は10数年行っておりません。
ここでまたその雰囲気に浸らせていただきました。
Commented by saheizi-inokori at 2015-05-27 09:57
> tonaさん、気をつけているつもりでも間違えてしまうのですよ。
それでも楽しい一日でした。
Commented by saheizi-inokori at 2015-05-27 09:59
> unburroさん、娘義太夫に若者たちが夢中になったのはわかります。
美形があの調子で泣いたりわめいたりされたらたまらないだろうな。
Commented by 豆ママ at 2015-05-27 18:52 x
太棹はロックですよね^^!
Commented by saheizi-inokori at 2015-05-27 21:18
> 豆ママさん、あの裂ぱくの気合いもロック顔負けですね。
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by saheizi-inokori | 2015-05-26 07:32 | 能・芝居 | Trackback | Comments(17)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori