極上のユーモア ヘレーン・ハンフ「チャリング・クロス街84番地 本を愛する人のための本」
2015年 05月 25日
今すぐにもほしい書籍のリストを同封、「このリストに載っておりますもののうち、、、汚れていない古書、、ただし、一冊につき五ドルを超えないもの」を送ってくれと。
それから彼女とマークス社の人々とのユーモアと温かい気持ちが溢れる文通が始まる。
まるで親密な本好きのサークルができたような。
読んでない本は買わない。着てもみないで洋服を買う?
そうかといって新刊書を読むのは大嫌い(図書館だね)。
装丁を愛し、用紙の色・手触りを愛し、
前に持っていた人のいちばん愛読したページのところが自然にぱらっと開くのが好きで、
書き込みがあると愛書家同士の心の交流があるようだ。
架空の人物の身の上に起った出来事には興味がない。
じっさいに行われた往復書簡集。
彼女が本を注文し、届くのが遅いと「読むものが無くなった、あなた方は何をして過ごしているのか」と皮肉を言い、翻訳が悪かったりすると容赦なく文句(やはり機智に溢れた)を言い、戦後の物資不足のロンドン(アメリカはぬくぬくとしてるのが申し訳ないような気もして)を思いやり、乾燥卵や缶詰、靴下などを送る。
ロンドンでは書店員ばかりかその家族も喜び、手紙もアメリカに届く。
彼らは彼女がロンドンに来ることを鳩首して待っているのだが。
そのようにして文通は1969年10月まで、二十年間続けられるのだ。
ここで取り上げられる本は、「オックスフォード名詩選」、ジョン・ヘンリー、ジョン・ダン、サミュエル・ピープス、アイザック・ウォルトン、、ラテン語のものもあり、俺は名前すら知らない人たちのものが多い。
彼女が17歳の時に読みふけったクイラー=クーチ仕込みらしい。
現代小説やベストセラーは嫌いだ。
毎年春になると書棚の大そうじをし、着なくなった洋服を捨てちゃうように、二度とふたたび読むことのない本は捨ててしまうことにしています。みんなこれにはあきれていますが、本に関しては友人たちのほうが変なのです。彼らはベストセラーというと全部読んでみますし、しかもできるだけ早く読み通してしまうのです。ずいぶん飛ばし読みをしているのだと思います。そして、どの本もけっして読み返すということがないので、一年もたてばひと言だった覚えていません。
いやはや、耳が痛い。
耳が痛いけれど、読んでいるあいだじゅう温かい懐かしい気分に浸っていた。
「ピープス日記」なんてのを探したくなった。
江藤淳 訳
講談社
1980年刊
自分の思いだけで読みたいから。
なのに他者の読書感想を聞くのは好き。変ですねえ。
ただし書評はまたあまり好きでない。
ヘレーンはよほど変わってます。
もっともちょっと前ですが、古本の汚れ、書き込み、落書きなどをコレクトした本が評判になりました。
他人の人生が透けて見えるとか。
これは愛書家とは少しく違うかもしれない。
書評と読書感想の違い、微妙ですね。
古書店との往復書簡。あったかく機智にあふれた内容もさることながら、私は彼女の孤独さに魅かれていました(変人の私だから^^;)。
本を大事に読んだ時代と人々。現代の使い捨て文化を皮肉られているようにも感じました(^_^)
ですから、昔の服もちゃんと着てくれるお人形がありがたいです。
でも新しい服を買うのをやめられません。
新しい本を買うのもやめられません。
読みたくなりました♪
本書も人に貸していただきました。
他人がこれ面白いかもしれないと貸してくれる本は自分の見方考え方の浅さや狭さを教えてくれるようで楽しいのです。