女スパイだった作家が書いた映画のような小説 ミュリエル・スパーク「寝ても覚めても夢」

雨上がりの朝、ようやくハラハラと散りだした。
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ミニチュア・シュナウザーを連れたご婦人が「今日が一番いいかもしれないですね」と。
いつも『今日がいちばん好い日』なのさ、今日・今・この瞬間しかないの、とオオカミが言ったよ。
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高校のどこかから和太鼓の練習する音が聞こえてくる。
ウグイスでいえばぐぜり鳴きとでもいうのか、不揃いの太鼓。
これがあの見事な演奏になるのだ。
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ツツジやアオイ?も咲き始めて、本当に日々「一番いい日」。
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花追い人になると読書量は減ってくる。
読んでもシチメンドクサイのとは縁遠くなる。
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2006年に88歳で、ベニスではなくフイレンツで死んだ、ドイツではなくイギリスを代表する男ではなく女の詩人・作家。
第二次大戦時にはMI6で対独情報操作に携わったという。
「ミス・ブロウディの青春」は名前だけは聞いたことがあるが、初めての作家。

「REALITY AND DREAMS」が原題だが、「寝ても覚めても夢」とはウマい訳だ。
クレーンから落ちて瀕死の重傷を負った大物映画監督が主人公。
夢と現実がどこでクロスするのか、奇妙にずれた不思議な人間どもが映画の中のような行動を繰り返す。
それでいてどこかにリアリテイもあるのが、まさに夢で見る現実。

毒のあるユーモア、頽廃。
さあ出かけよう、君と僕
T・S・エリオットの詩の一節がなんどか登場する。
さあ出かけよう、君と僕
夕暮れが大空に広がる
麻酔にかけられた手術台の患者のように、、、
というんだ。
主人公が親しいタクシーの運転手に、この詩の意味を問う。
主人公が渦中にある悩みやトラブルについて何でも話し、いかにも権威ある如く感想やアドバイスをする運転手なのだ。
どうやら主人公に対する脅しとして何ものかに撃たれて死にそうになる運転手。
彼の、詩の解釈、
(運転手)夕方の散歩に出かける二人が、そこにはいない第三者について語り合う。その第三者というのが、患者です。
(主人公)その人物を解剖するように分析するということかい
(運転手)そんなところです。意味はご存知ないんですか?
(主人公)じつは誰もわかってないんだ
こういうのを面白がらないとこの小説はつまらないかも。
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訳 木村政則
河出書房新社
Commented by hisa33712 at 2015-04-02 13:55
今日、今、この時が一番良い時!そうです!私はいつもこのことを考えて生きています。
いつも心に留まる文章ですね、読んでいるときわかるのですが、今の私の頭の中にとどめておけない、情けなさがあるけれど、一瞬でも脳を刺激出来て、うれしくなります。
なんだか、上手く言葉に出来なくてすみません。
Commented by tona at 2015-04-02 21:46
いろいろな分野の本を読まれることに、もう驚きそして脱帽です。私には読めないけれども、こんな内容の本があると感心できるだけでもありがたいことです。
ますますお花のきれいなブログの季節になりました。これも見るのが楽しみです。
Commented by saheizi-inokori at 2015-04-02 21:52
hisaさん、両目両耳が働いても見るべきことを見なければ意味がないと思います。
Commented by saheizi-inokori at 2015-04-02 22:57
tona さんの読書の方がよほど凄いです。
それぞれに知らない本やジャンルを教え合うのが楽しいですね。
Commented by たま at 2015-04-03 00:36
 椿が盛りを過ぎ、サンシュウユにトサミズキ、ヒュウガミズキにリキュウバイ、そしてアケビ、ムベ、そしてテッセンの蔓がいっぱい、気が狂わんばっかりにて。
 しかして、井の頭公園のサクラの観劇はいまだにて。
 あの倍賞千恵子の「サクラ貝の唄」を瀬戸内の波打ち際にて一緒に口ずさんだ人を思い起こしつつ・・・。
 きっと、サクラの樹の下には死体が埋まっていたりして。
Commented by jarippe at 2015-04-03 07:18
毒のあるユーモアってちょっとゾクッっとしますね
理解できるかどうかですが
最近そんなの感じなくなっちゃったかも・・・・・・
季節に誘い出されて本から離れ気味
読んでも気楽なものばかりです

今日が一番いい日に今をいい瞬間にしてゆきたいです
Commented by saheizi-inokori at 2015-04-03 10:18
たま さん、雨の平日、ボートも出ていない井の頭公園の桜は素晴らしいですよ。
そういえばずいぶん前にバラバラ死体が見つかりましたね。
Commented by saheizi-inokori at 2015-04-03 10:19
jarippe さん、毒入りに狎れるとアブナイかな。
Commented by みい at 2015-04-03 10:48
こんにちは~

 ほんと一番いい季節一番いい日ですね🎶
お江戸の春楽しませてもらってます^^。
ありがとうです!
Commented by adamamaok at 2015-04-03 11:14
初めまして。adamamaと申します。
ミュリエル・スパーク読まれたんですね。
私も去年「マンデルバウム・ゲイト」という作品を
読みましたが、歴史的知識がなく結構難渋しました。
中東の諜報部に関係した作品でした。
スパークがMI6に関係したいたというのを教えていただき
なるほどと思いました。
又お邪魔させていただきます。

Commented by saheizi-inokori at 2015-04-03 11:24
みい さん、お江戸の桜、盛りを過ぎましたよ。
マグちゃん、元気になってよかったね。
Commented by saheizi-inokori at 2015-04-03 11:28
adamamaokさん、いらっしゃいませ。
そんな小説もあるんですね。
リンクさせていただきました、よろしく^^。
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by saheizi-inokori | 2015-04-02 12:18 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(12)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori