親心アレバ犬心アリ 伊藤比呂美「犬心」
2015年 03月 14日
ときどき行く、せんじつもワインレッドのハンチングを買った店なのだが今月いっぱいで閉店だという。
おしゃれな店主が「ワンちゃんと奥さんを連れてきてください」と言ったのだ。
こっちが仕度に手間取っていると、後をついて回ったり玄関でくるくる回ったりして「ハヤク早く!」。
あまり歩かせすぎてはいけないと先生に言われているので、なんども抱っこしながら連れて行く。
帰りに佐川急便のオジサンがわざわざ車から降りてきて「サンチ~!」と言っても知らん顔してる。
八百屋のオネエチャンが来ると飛びついて行くくせに。
アメリカの友人たちは安楽死を勧めるが、犬嫌いの夫(ユダヤ人)も娘たちも最後まで世話をする。
「ニコ」という甘ったれで尻癖の悪いパピヨンと、なんとかこうとかウロコインコも交えて、かつては人間以上に?賢かったタケが日に日に衰えて、うんこもおしっこもめちゃくちゃ、比呂美さんはうんこの始末に追われながら、熊本で亡くなった父の下の世話のことなどを思い出す。
タケの一挙手一投足を見つめて、うんこを漏らしたら拭いてやり、腰が砕けたら支えてやる。朝に夕に声をかけ、食べたらほめてやり、寝ておれば、もしや死んではいまいかと、死に顔のような寝顔の寝息に耳をすます。それこそが熊本で独居する老いた父が私にやってもらいたいことなのではあるまいか。あるまいか、ではなくて間違いなくそれが父の本願であることを、痩せこけたタケの腰や尻を父のそれに重ねて見ながら思うのだ。
毎日、父と電話で話すと、そのほとんどが「出ない」「漏らした」、、うんこの報告、ご飯を食べている時に子供がうんこの話をしたりすると、厳しく叱った父なのに。
こっちの老人や老犬の世話をすることで、あっちの老人に還っていけばいい。辛く切ない願い。
とくに、賢いタケの若い頃の楽しかったくさぐさ。
タケとニコ、父の死後熊本から連れて行った「ルイ」の仕草やクセ、俺はサンチのそれと比べて「そうそう、そうなんだよな」と頷いたり、でかい犬って大変だろうなと同情したり。
会ったことのないタケが家族とサッカーに興ずる(タケの決めたルール)姿が目に浮かぶくらいだ。
俺とサンチの別れはどうなるんだろう。
まあ、いいか、今があるから、なあ、サンチ!
服の背中に書かれた文字は、
If you are happyそうなのだ。
I am happy!
サンチはいつだって俺の表情を見守っている。
寝たふりしてても見守っている。
「カツオの刺身」と「アボガドの刺身」。
文藝春秋
ゆっくり暖かい空気に包まれておられますね
あのとき、ぶよぶよの恋人の話をしていました。
彼女の若いころの詩、本音ズバリで、けっこう人気あります。
アボガド、好きです^^
たいていのことはわかるようです。
なかなかの女性だとお見受けしました。
しかも温かい毛布の上とか。