2015年 03月 14日
親心アレバ犬心アリ 伊藤比呂美「犬心」 |
カミさんとサンチと三人連れで駒沢公園から上馬の古着屋まで散歩。
ときどき行く、せんじつもワインレッドのハンチングを買った店なのだが今月いっぱいで閉店だという。
おしゃれな店主が「ワンちゃんと奥さんを連れてきてください」と言ったのだ。
朝の散歩も済んでいたが、「散歩行くか?」と訊くと飛び上がってくるくる回ってインデイアンダンスをするサンチ。
こっちが仕度に手間取っていると、後をついて回ったり玄関でくるくる回ったりして「ハヤク早く!」。
あまり歩かせすぎてはいけないと先生に言われているので、なんども抱っこしながら連れて行く。

せっかく店主がなぜてやろうとしてもそっけない。
帰りに佐川急便のオジサンがわざわざ車から降りてきて「サンチ~!」と言っても知らん顔してる。
八百屋のオネエチャンが来ると飛びついて行くくせに。

「父の生きる」に描かれていた熊本の父親が亡くなるのと並行して、カリフォルニアの家で飼っていたジャーマン・シェパードの「タケ」が14歳、老衰で逝くまでの看取りの日々のことが、切なくもユーモラスに(この作家の天性だ)描かれる。
アメリカの友人たちは安楽死を勧めるが、犬嫌いの夫(ユダヤ人)も娘たちも最後まで世話をする。
「ニコ」という甘ったれで尻癖の悪いパピヨンと、なんとかこうとかウロコインコも交えて、かつては人間以上に?賢かったタケが日に日に衰えて、うんこもおしっこもめちゃくちゃ、比呂美さんはうんこの始末に追われながら、熊本で亡くなった父の下の世話のことなどを思い出す。
毎日、父と電話で話すと、そのほとんどが「出ない」「漏らした」、、うんこの報告、ご飯を食べている時に子供がうんこの話をしたりすると、厳しく叱った父なのに。
切ない話なのだが、突き抜けた明るさや率直が醸し出すユーモアがあるから、グイグイ読んでしまう。
とくに、賢いタケの若い頃の楽しかったくさぐさ。
タケとニコ、父の死後熊本から連れて行った「ルイ」の仕草やクセ、俺はサンチのそれと比べて「そうそう、そうなんだよな」と頷いたり、でかい犬って大変だろうなと同情したり。
会ったことのないタケが家族とサッカーに興ずる(タケの決めたルール)姿が目に浮かぶくらいだ。
俺とサンチの別れはどうなるんだろう。
まあ、いいか、今があるから、なあ、サンチ!

「どうしたの?いかないの?」俺の表情を確かめるサンチ。
服の背中に書かれた文字は、
サンチはいつだって俺の表情を見守っている。
寝たふりしてても見守っている。
夜は「しらいし」に忘れた眼鏡を取りに行って、軽く一杯。
「カツオの刺身」と「アボガドの刺身」。
文藝春秋
ときどき行く、せんじつもワインレッドのハンチングを買った店なのだが今月いっぱいで閉店だという。
おしゃれな店主が「ワンちゃんと奥さんを連れてきてください」と言ったのだ。

こっちが仕度に手間取っていると、後をついて回ったり玄関でくるくる回ったりして「ハヤク早く!」。
あまり歩かせすぎてはいけないと先生に言われているので、なんども抱っこしながら連れて行く。

帰りに佐川急便のオジサンがわざわざ車から降りてきて「サンチ~!」と言っても知らん顔してる。
八百屋のオネエチャンが来ると飛びついて行くくせに。

アメリカの友人たちは安楽死を勧めるが、犬嫌いの夫(ユダヤ人)も娘たちも最後まで世話をする。
「ニコ」という甘ったれで尻癖の悪いパピヨンと、なんとかこうとかウロコインコも交えて、かつては人間以上に?賢かったタケが日に日に衰えて、うんこもおしっこもめちゃくちゃ、比呂美さんはうんこの始末に追われながら、熊本で亡くなった父の下の世話のことなどを思い出す。
タケの一挙手一投足を見つめて、うんこを漏らしたら拭いてやり、腰が砕けたら支えてやる。朝に夕に声をかけ、食べたらほめてやり、寝ておれば、もしや死んではいまいかと、死に顔のような寝顔の寝息に耳をすます。それこそが熊本で独居する老いた父が私にやってもらいたいことなのではあるまいか。あるまいか、ではなくて間違いなくそれが父の本願であることを、痩せこけたタケの腰や尻を父のそれに重ねて見ながら思うのだ。
毎日、父と電話で話すと、そのほとんどが「出ない」「漏らした」、、うんこの報告、ご飯を食べている時に子供がうんこの話をしたりすると、厳しく叱った父なのに。
こっちの老人や老犬の世話をすることで、あっちの老人に還っていけばいい。辛く切ない願い。

とくに、賢いタケの若い頃の楽しかったくさぐさ。
タケとニコ、父の死後熊本から連れて行った「ルイ」の仕草やクセ、俺はサンチのそれと比べて「そうそう、そうなんだよな」と頷いたり、でかい犬って大変だろうなと同情したり。
会ったことのないタケが家族とサッカーに興ずる(タケの決めたルール)姿が目に浮かぶくらいだ。
俺とサンチの別れはどうなるんだろう。
まあ、いいか、今があるから、なあ、サンチ!

服の背中に書かれた文字は、
If you are happyそうなのだ。
I am happy!
サンチはいつだって俺の表情を見守っている。
寝たふりしてても見守っている。

「カツオの刺身」と「アボガドの刺身」。
文藝春秋
by saheizi-inokori
| 2015-03-14 11:43
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
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Comments(16)
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命の触れ合いを感じ,生きて行くことが喜びであり、幸せなのだ。えっへん!
なんだかほっこりなsaheijiさん
ゆっくり暖かい空気に包まれておられますね
ゆっくり暖かい空気に包まれておられますね

サンチ君の表情は無表情な人と違ってずっとずっと人間らしいです。愛おしいし、本当に可愛いですね。
伊藤比呂美には、20年ほど前ですが詩人の会で会ったことがあります。あちらは絶対に覚えておいでではないと思いますが。
あのとき、ぶよぶよの恋人の話をしていました。
彼女の若いころの詩、本音ズバリで、けっこう人気あります。
アボガド、好きです^^
あのとき、ぶよぶよの恋人の話をしていました。
彼女の若いころの詩、本音ズバリで、けっこう人気あります。
アボガド、好きです^^
蛸さん、おっしゃるとおりでんなあ。
jarippe さん、いろいろありますが、ナントカそうやって生きていきたいと思ってます。
tona さん、ほとんど一日中話しています。
たいていのことはわかるようです。
たいていのことはわかるようです。
wawa38 さん、禿でデブで歳をとった男がイイみたいなことを書いてます。
なかなかの女性だとお見受けしました。
なかなかの女性だとお見受けしました。
関東は、
春の花でいっぱいですね。
散歩するには気持ちのいい季節。
長野ももうすぐです。
ようやく寒さが緩んできました。
春の花でいっぱいですね。
散歩するには気持ちのいい季節。
長野ももうすぐです。
ようやく寒さが緩んできました。
j-garden-hirasato さん、その冬の長野に行きたいと思いながら毎年かなわずにいます。
長野の友人は4月中旬過ぎがいいというのです。
雪国では冬を見せたいとは思わないのでしょうね。
長野の友人は4月中旬過ぎがいいというのです。
雪国では冬を見せたいとは思わないのでしょうね。
さへいじさんのお写真は、ほっこりといつも温かいですね。画も綺麗。アボガドの載ってるお皿もピカピカ。いい感じ。サンチちゃんとの触れ合い。・・これはもう縁ですね。出会い。会えて良かったね。サンチちゃん。お父さんと。
sheri-sheri さん、今朝はまた寒くなったせいか、サンチは「帰ろうよ帰ろうよ」と、、もう年なのかな。

サンチと会話していますね。のさし座敷犬は、俺を見ると吠える。相手にしないせいでしょうか?
旭のキューです。さん、曲者と思われているんじゃないだろうか。蟹の臭いとか強過ぎたりして^^。
犬って、寒がりだという話らしいです。猫が普通炬燵で丸くなるかと思えば、我が家のシェリーも良く炬燵の脇で丸くなっています。
sheri-sheri さん、日向ぼっこが好きですねえ。
しかも温かい毛布の上とか。
しかも温かい毛布の上とか。