ムヒカ大統領のグローバリズムへの異議 平川克美「グローバリズムという病」(3)

方言で考えること

それは
権力(政治、メデイア、大企業etc)が、あたかも共通の言葉であるかのように装いながら、じつは特定の事項に焦点をあてることによって、それ以外の事項を視野から遠ざけ、それについての思考を排除するはたらきをもつような国家語=標準語で語りかけることを回避・拒絶して、母から覚えたことばで考えることだ。
と思う。

先日紹介した、平川克美「グローバリズムという病」は、そういう意味での方言で書かれた本だ。

その一つ、2012年6月、リオジャネイロで開かれた「リオ+20 地球サミット2012」におけるウルグアイ大統領ホセ・ムヒカの演説について平川はその一部を引用する。
質問をさせてください:ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持てばこの惑星はどうなるのでしょうか。
息するための酸素がどれくらい残るのでしょうか。同じ質問を別の言い方ですると、西洋の富裕社会が持つ同じ傲慢な消費を世界の70億~80億人の人ができるほどの原料がこの地球にあるのでしょうか?可能ですか?それとも別の議論をしなければならないのでしょうか?

なぜ私たちはこのような社会をつくってしまったのですか?
マーケットエコノミーの子ども、資本主義の子どもたち、即ち私たちが間違いなくこの無限の消費と発展を求める社会をつくって来たのです。マーケット経済がマーケット社会を造り、このグローバリゼーションが世界のあちこちまで原料を探し求める社会にしたのではないでしょうか。

私たちがグローバリゼーションをコントロールしていますか?
あるいはグローバリゼーションが私たちをコントロールしているのではないでしょうか?(全文はこちら

なぜ、この演説が世界に衝撃を与えたのか?平川はこう書く。
経済成長神話から脱することのできない政治家や経済学者やビジネスマンとは異なる視点からなされた、普遍的な問いかけがここにあったからである。その問いは、政治的配慮や、権力への忖度、自己利益から自由であるだけでなく、ごく当たり前のことが、力強い言葉で表現されている。そこには、そのごく当たり前の言葉こそが、人間が生き延びるための本質的な言葉なのだと思わせる響があった。
私たちは、ロジカルであるということは言葉の整合性があるかどうかであると思いがちだが、どんなに言葉が整合的であったとしても、それが部分的なものであれば全体としては不整合であるかもしれないということを疑わなければならない。部分的というのは、一定の時間の中でのみ有効であったり、部分的な空間の中でのみ整合性を持つことができたりするという意味である。

ムヒカ大統領の言葉には、こういった限定がないのだ。それはまっすぐにわたしたち人間の社会全体に照準を定めている。
ムヒカ大統領のグローバリズムへの異議 平川克美「グローバリズムという病」(3)_e0016828_10473218.jpg
(哲学犬、再度登場)

ムヒカは
水源危機とか環境危機が問題源ではない、根本的な問題は、私たちが実行した社会モデルであり、見直さなければならないのは私たちの生活スタイルだ
ともいう。
平川はそれについて、
水源危機や環境危機を問題にするときの問題の立て方そのものがすでに、現在進行中の問題を再生産するシステムが生み出したものなのだ。ムヒカが言ってるのはそういうことだ。地球環境の危機の救済と改善は、絶対の正義である。しかし、この正義はまさに地球環境そのものをコントロールして、これから以後も経済発展し続けようという人々が容易に賛同できる正義でもある。そこにビジネスが入り込み、技術革新で自然をコントロールできるかのような言説が振りまかれる。(略)
わたしたちはより快適な生活というものを、より消費可能な生活というものと見分けができないほど消費病に冒されてしまっていると言ってもよい。
その病から抜け出さない限り、世界の市場化、ムヒカの文脈で言うならば世界の破壊はますます進むことはあっても、それが止むことはあるまい。
という。

ビジネス(およびそれに追随する権力)が振りまく「技術革新で自然を原発をコントロールできる」という標準語の圧制から抜け出して、ムヒカ語=「方言」で考えること。
Commented by j-garden-hirasato at 2015-02-20 06:44
哲学犬、
ピッタリのネーミングです。
どうやって、
頭を出しているのでしょう。
穴でも開いているのでしょうか。
Commented by saheizi-inokori at 2015-02-20 10:42
j-garden-hirasato さん、道路からちょっと高い塀の上、器用に顔をだしてます。
も一頭トイプードルも顔を出して吠えまくってましたがカメラを構えたら消えました。
Commented by at 2015-02-20 10:57 x
私の中は、生まれたとこの言葉で全て回ってます。;p
Commented by saheizi-inokori at 2015-02-20 11:08
蛸さんは骨の髄から方言のかたまりです。
あれ?蛸に骨があったっけ^^。
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by saheizi-inokori | 2015-02-19 10:51 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(4)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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