とてもこんな風には生きられなかった 稲葉真弓「エンドレス・ワルツ」
2015年 02月 14日
今朝は掃除機をかけた。
90分、今までになく埃が取れた。
いつも、ちょこちょこちょこちょこ後をついて回って激励するかの如く、褒めてくれるかの如く、首をちょっと傾げて見ているサンチが美容院に行ってるのがいささかサビシイ。
稲葉真弓の最後の作品「少し湿った場所」で知った小説。
実在した阿部薫と鈴木いづみを書いた、ひりひりするような小説だ。
「誰もがそんな風に生きられるわけじゃないけど」と題したエッセイ、ジャニス・ジョプリンのことを書き、この二人がそんな風に生きたと書いていたような気がする。
せんじつ紹介した「マルグリット・デュラス 愛の生涯」も、稲葉が憧れた生き方をしたようだ。
平凡そのものの人生を送ってきた俺だが、それでも東京に出てきてすぐの数年間は、平凡であることを嫌い、不良っぽく呑んだくれたりしたこともある。
アルバイトの帰りに小さなオーシャンバーに寄っては、終電の行った後の線路をふらふらと歩いて寮に帰ったり、不規則な生活で不眠症まがいになって、ブロバリンを何錠も飲んだり。
まあ、「ふり」だった。
小市民の根性が油断なくとぐろを巻いていた。
阿部薫は「ふり」ではなくホントに生きて、壊れて死んでいった、とても早い死。
そんなカオルを愛して・憎んで、いづみもさっさと死んでしまった。
稲葉が言うように、たしかに「誰もがそんな風に生きられるわけじゃないけど」、そんな生き方もあったのだ。
新宿で薬とアルコールで一夜を明かした(毎晩のことだった)いづみが代々木公園で初めてカオルに遭遇する場面がとてもイイ。
引用はしないけど。
河出書房新社
寒風をついて世田谷署まで免許証の更新に行って来た。
寒風をついて歩くのは好きなのだ。
90分、今までになく埃が取れた。
いつも、ちょこちょこちょこちょこ後をついて回って激励するかの如く、褒めてくれるかの如く、首をちょっと傾げて見ているサンチが美容院に行ってるのがいささかサビシイ。
実在した阿部薫と鈴木いづみを書いた、ひりひりするような小説だ。
「誰もがそんな風に生きられるわけじゃないけど」と題したエッセイ、ジャニス・ジョプリンのことを書き、この二人がそんな風に生きたと書いていたような気がする。
せんじつ紹介した「マルグリット・デュラス 愛の生涯」も、稲葉が憧れた生き方をしたようだ。
平凡そのものの人生を送ってきた俺だが、それでも東京に出てきてすぐの数年間は、平凡であることを嫌い、不良っぽく呑んだくれたりしたこともある。
アルバイトの帰りに小さなオーシャンバーに寄っては、終電の行った後の線路をふらふらと歩いて寮に帰ったり、不規則な生活で不眠症まがいになって、ブロバリンを何錠も飲んだり。
まあ、「ふり」だった。
小市民の根性が油断なくとぐろを巻いていた。
阿部薫は「ふり」ではなくホントに生きて、壊れて死んでいった、とても早い死。
そんなカオルを愛して・憎んで、いづみもさっさと死んでしまった。
稲葉が言うように、たしかに「誰もがそんな風に生きられるわけじゃないけど」、そんな生き方もあったのだ。
カオルが必死に一音一音を拾い、拾った音を破壊しているのがわかった。私は目を閉じたまま、うずくまった。うずくまらずには聞けない音だった。音はきれぎれに、悲鳴のようにうねり、無の中に沈殿していく。余韻だけが残った。余韻の中に音のかけらだけがわずかに震えながら、亡霊のように漂っていた。その亡霊こそが、カオルの音だった。音が余韻になったあともまだ音が続いている錯覚があった。その見えない音の中で、カオルは硬直していた。高い高い世界の果てで渦巻く風を聞くような姿勢だった。照れ臭くなるような若々しさがある小説。
長い沈黙のあと、カオルは顔を上げ、はにかんだように笑った。再び金色のアルト・サックスを持ち直すと、静かにマウス・ピースを含んだ。冷えた床に「ラバー・カム・バック・トゥ・ミー」が流れた。私にはすぐにわかった。「ラバ・カン」を彼は私と私の腹の中の小さな命に向かって吹いてたのだ。どもるように、不器用に床を這うように、はにかみのために身をよじりつつ、彼は私の前に自分の全てをさらしていた。次には、「アカシアの雨が止むとき」を溶かし込んだきれぎれのメロディ、、、、彼は唐突に私を見た。たった四人しかいない観客の中で私だけにひたと目を据えて。その目に私は震えた。彼は私を愛している、、、。
私が彼のステージを間近に見たのは、それが最初で最後だった。
新宿で薬とアルコールで一夜を明かした(毎晩のことだった)いづみが代々木公園で初めてカオルに遭遇する場面がとてもイイ。
引用はしないけど。
河出書房新社
寒風をついて歩くのは好きなのだ。
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j-garden-hirasato at 2015-02-15 06:26
人生、
人それぞれ。
でも、
壊れて死んじゃうのは、
イヤだなあ。
人それぞれ。
でも、
壊れて死んじゃうのは、
イヤだなあ。
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旭のキューです。
at 2015-02-15 08:01
x
サンチがちょこちょこついてくる。光景が目に浮かびます♪
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saheizi-inokori at 2015-02-15 10:43
j-garden-hirasato さん、多かれ少なかれ、みんな壊れて死ぬのですがね。
カオルは早すぎた。死にたくないと言いながら死んだようです(小説では)。
カオルは早すぎた。死にたくないと言いながら死んだようです(小説では)。
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saheizi-inokori at 2015-02-15 10:44
旭のキューです。 さん、ちょこちょこ、じゃないです。ちょこちょこちょこちょこ、です。
どこまでもついてきます。
どこまでもついてきます。
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蛸
at 2015-02-15 11:30
x
「ジャニス、命!」って時代があったぜ。
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saheizi-inokori at 2015-02-15 12:25
蛸さん、なんも知らんと生きてきよっってん。
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wawa38 at 2015-02-16 11:51
エンドレス ワルツ、若松孝二監督の映画で見たことがあります。
強烈な感覚だったのを覚えています。
若き芸術家なるゆえの、のめり込み方?
私にはとてもできません。平凡に生きてきても、人生には
色々あるから、これで十分です^^
強烈な感覚だったのを覚えています。
若き芸術家なるゆえの、のめり込み方?
私にはとてもできません。平凡に生きてきても、人生には
色々あるから、これで十分です^^
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saheizi-inokori at 2015-02-16 12:05
wawa38 さん、誘蛾灯に吸い寄せられるようにふらっと近寄ったことはありますが、しょせん異次元の世界でした。
by saheizi-inokori
| 2015-02-14 12:56
| 今週の1冊、又は2・3冊
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Comments(8)