寒いって?なに言ってんだか ゲイブリエル・ウォーカー「命がけで南極に住んでみた」

朝日の夕刊に「人生の贈り物」というコラムがあって、いまはなかにし礼の連載。
昨日の記事で、なかにしが昨年「天皇と日本国憲法」という本を出したことに触れて
国民の象徴である天皇陛下が、よろこびをもって御名御璽を記されたということの重さをね、(自民党の連中は)どう考えているのかと。現在でも天皇陛下は機会あるごとに語られている。天皇陛下を無視する天皇制だったらね、天皇制そのものも存在しえない。
と語っている。
「ブレーキのとれた暴走列車になった安倍政権」、もう誰も止められない、祖父の怨念を引きずって、「この道しかない」で、なんでもOKになってしまう。
なかにしは「絶望の中にあってどういう抵抗の方法があるのか」、いっときでも長く戦争のない時間を延すことが最低限の知性であり、抵抗である、正直にものを書くしかない、と語っている。
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寒気に凍えるボストンの市民も本書を読んだら少し気がまぎれるかもしれない。
めったにマイナス50度以上にならない、長く暗い冬の南極の生活を想像してみたら。

ユーモアたっぷりに精力的に南極暮らしをリポートするのは、ケンブリッジ大学で化学の教鞭も取った、女性ジャーナリスト。
南極には5度も出かけた。

アメリカのマクマード基地とフランスの基地の違い、かたややかましい規制、かたや気楽な歓待、かたやセルフサービスでアルコール禁止、かたやワインのピッチャーがおかれて8人のテーブルに一人のウエイターがついてコース料理を運んでくる。「この方が、文明化しているからね」とフランス人、南極は人々の個性をさらに強めるのだ。
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(「わ、パン屋さん、神保町にはパン屋が亡くなっていたの、うれしいな」と通りすがりの会話)

エンペラーペンギンの観察。
メスが産んだ一個だけの卵をオスの脚の上に置いてメスは開氷面までいって貪り食う。
体力を回復したメスがもどってくるまでに2か月かそれ以上、オスは卵を脚で抱えてひたすら待つ。
次第に濃くなる夜の闇、気温は下がる一方、募る嵐、オスは絶食のまま耐える。
メスたちが食事旅行から戻ってきたときの様子、
(メスたちは)オスの大集団のそばまで来ると立ち止まり、鳴き声を立ててから聞き耳を立てて反応を待ち、また歩きはじめる。三回か四回は鳴き、何千羽のなかからなつかしいパートナーの答えを聞き分ける。メスは喜び勇んで、首をもたげる。オスもうれしそうに、脚に卵かヒナを乗せたまま、にじり寄る。二羽は、文字通りハグし合う。人間と同じだ。胸を合わせ、相手の頭を軽く叩き合う。
メスに何かがあって戻ってこれない時に、オスは諦めて自分の食事を採りに出かけなければならない。
その時期をペンギンはどうやって判断しているのか、副腎皮質ホルモンの一種のせいではなかろうか。
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ドライヴァレーは何百万年も雨が降らず、雪もごくわずか、その結果、地上でもっとも寒く、最もドライで、最も裸の岩だらけ、という地相ができた。
つまり最も火星によく似た場所・光景だ(観たいなあ、写真がないのが残念)。
科学者たちはこの地球の極限状態において微生物の存在を確認する。
何十億年か前に、火星に生命があったころは、このような状況じゃなかったのかな。火星の最後の生命は、このように凍った水の中で泳いでいたんじゃないかな。
火星から飛来したとみられる隕石の中に生物の痕跡がみつかる。
もしかしたら人類の祖先は火星人なのかもしれない。
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極点に越冬して天体観測を行い、大気の分析を行い、地底深く地球の核に向かって地震を観測する。
分厚い氷床の3000メートルを越す深さから80万年前の氷を引き揚げて地球の歴史を探る。
氷の下の海に潜って生物たちを観察する。
どの実験も読んでいるだけでドキドキする。
平地では想像もできないような困難と創意工夫が求められる。

そこに働く人たちの、人柄、動機、人生観、ドラマだ。

現代の南極物語の間にアムンゼン、スコット、シャクルトン、バードなど先駆者たちの探検物語をいくつも挿入することによって、彼らの苦闘・チャレンジへのリスペクト。
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南極の氷河の下にはおよそ400個の氷底湖があって、それは互いにつながっていて、水が満ちたり涸れたりしている。
滝が崖を遡る。
南極の氷の下にある水量は、地上のすべての河川、湖沼、池を合わせた総量を上回る。

南極に見られるさまざまな変化は地球の未来の何を告げるのだろうか。

仙名 紀 訳
柏書房
Commented by hanamomo06 at 2015-02-13 21:56
先日の大嵐のとき、秋田の上空にはマイナス50度くらいの寒気があったようです。
それが陸の上でそれ以上にならない暮らしか・・・・・ちょっと想像できませんね。
エンペラーペンギンの生態はテレビで見たことがあって、『へ~』と感心したことを覚えています。
ペンギンのメスって大胆ですね。
Commented by sora at 2015-02-14 01:37 x
南極の本、おもしろそうですね 
ペンギンさん夫もいいです~ 
皇后陛下が「五日市憲法草案」について思いを語られ
憲法論議を憂慮のご様子だったのが、約2年前でしたか。
今や、野蛮な者達が土足でどんどんですね!

Commented by unburro at 2015-02-14 01:57
小学生時代の私のヒーローは、アムンゼンでした。
探検家に憧れて、南極とか、北極、アマゾンとかの本ばっかり読んでいました。ロビンソン・クルーソーなど暗記するほど読みました。この本も探します!

朝日の「人生の贈り物」、読んでいます。
なかにし礼を、再発見です。


Commented by saheizi-inokori at 2015-02-14 11:36
hanamomo06さん、寒さ、極地であること、南極にはワクワクさせるものがありますね。
ペンギンのメス、でも体力の限りを尽くして産卵して、オスに預けて、食を摂ったあといそいそとオスのもとに帰る、どちらも健気で、読んでいてちょっとジンときました。
私もテレビで見たような記憶もあるのですが、本の方が想像力を刺激するのかもしれないです。
Commented by saheizi-inokori at 2015-02-14 11:39
soraさん、昨日は自民の連中、グレーゾーン問題でオーストラリアの船も対象にするなんて、閣議了解をさっさと拡大する提案、盗人猛々しいという感じです。同じ日本人なのか、アメリカ猛禽類のような顔立ちになってきました。
Commented by saheizi-inokori at 2015-02-14 11:47
unburro さん、長ずるに及んで「エンデュアランス号、シャクルトンの冒険」(表題は不確か)を読んで感動しました。
本書にも登場します。
Commented by quietrose at 2015-02-15 08:18
おはようございます。
ペンギンの話、すごいですね。
何千羽の中から、自分のパートナーを見つける・・・。
わかるんですねぇ・・・好きな人のことは、ちゃんとわかるって、すごい。
Commented by saheizi-inokori at 2015-02-15 10:46
quietrose さん、人間はどうなんでしょう。
何千人もの大ホールで相方の叫びを聞き分けられるか。大丈夫かな^^。
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by saheizi-inokori | 2015-02-13 12:51 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(8)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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