池上彰vs佐藤優「イスラム国との新・戦争論」&芥川賞「九年前の祈り」@文藝春秋

例によって芥川賞受賞作品の載っている文藝春秋を買う。
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「イスラム国との『新・戦争論』」と題した、池上彰との対談で佐藤優が、
一月七日のフランスで起きた連続銃撃テロ事件で局面が大きく変わった。この事件をもって、「イスラム国」は戦争を始めた。(略)イギリス情報局保安部長官が一月八日に記者会見し、英国でも同様の事件が起こる可能性を指摘し、「シリアのアルカイダ系グループが、西側に対する無差別攻撃を計画している」と発言した。これは、今回のテロがフランス特有の問題やムハンマドのカリカチュア画を書いたから引き起こされたわけではなく、実は戦争が始まっていて、彼らは世界中で標的を探しているから警戒するようにという意味合いがあった。世界のインテリジェンスコミュニティに対する、かなりはっきりした声明でした。
そういう認識は日本に限らず世界中で弱かったから、日本の外務省が後藤さんたちの人質事件が起きることを読めなかったとしても(だから身代金要求を総理にまで上げていない可能性がある)、仕方がないと言っている。

そうだろうか?
もし8日のイギリスMI5長官の発言でイスラム過激派の新動向に気がついたとしても、16日からの中東訪問まで一週間があった。
国際信義上、日程の急な変更は無理としても演説内容などにはもう少し慎重な配慮があってしかるべきだったと思うが。
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今後の展開について、佐藤は「イスラム国」をめぐる現状は、初期のコミンテルンに似ている、「イスラム国」も、今後国家ができて、その後ろでイスラム革命を輸出する組織が生まれる(旧ソ連化)。
そしてイランの地上部隊の参戦が必要となったら、それを黙認・頼りにする欧米、そこからイランの核開発の歯止めがなくなる。
さらにパキスタンの支援によってイスラム国が核を持つ可能性もある。
イランが核を持てばイスラエルは対イラン戦争に踏み切る?レバノンは?
、、、次から次へと恐るべきドミノ倒しの展開がありうべし。
だからイスラム国との対話などを考えずに徹底的に解体しなければだめだと佐藤。
(日本の)政治家も国民も、今回の人質事件で気付かされた「イスラム国」の標的になっているという自覚を持ち、さらには自分の覚悟がどこまであるのか、見つめ直さなくてはいけない時がきたようです。
と池上が言って対談が終わる。
やれやれ。
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さて、芥川賞だ。
小野正嗣の「九年前の祈り」。

九年前のカナダ旅行の途次、モントリオールの教会で、同行した「みっちゃん姉(ねえ)」がいつまでもぬかづいて祈っていた。
たぶん子供の問題だ。
その頃のみっちゃん姉のすぐ後ろには悲しみが立っていた。

今、「引きちぎられたミミズのようにのたうつ」以外、何一つ自分を表現する方法を持たない幼子を後ろから腕に抱いて立つさなえ。
いま悲しみはさなえのなかになかった。それはさなえの背後に立っていた。振り返ったところで日の光の下では見えないのはわかっている。悲しみが身じろぎするのを感じた。それは身をかがめると、さなえの手の上にその手を重ね、慰撫するようにさすった。不安は消えなかった。息子の手はひんやりと冷たかった。だからさなえは手に力を込めた。
障害を持って生まれた子のシングルマザー、大分の限界集落の両親のもとへ出戻ったさなえ。
カナダ人との離婚。
「よだきい」「そげえムキにならんでもいいじゃねえか」「子供っちゅうもんは泣くもんじゃ。どんぶん泣いて、疲れて、寝るんじゃ」「まこと、まこと」、、方言の力・親の力。
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世界は悲しみで満たされている。
でも悲しみの言うことに耳を傾けてはならない。
よだきいけれど、生きていくのだ。
Commented by ジュ at 2015-02-12 12:53 x
同じく読み終わったところです^^
Commented by tona at 2015-02-12 13:38 x
早速買われたのですね。ご紹介ありがとうございます。
イスラム国のことはもっぱらテレビで見るのみでした。
今度読んでみます。
梅と水仙ときれいですね。春がすぐそこまで来ています!(^^)!
Commented by sheri-sheri at 2015-02-12 14:35
こんにちは。植物は、もう駄目だろうと思っていても、また芽を出して再生、落ち込んでいた人間を驚かし、かつ励ましてくれます。動物もそう。健気に生きています。絶望することはすぐ出来ますが、立ち直り立ち上がり希望をさがすのです。悲しみにひきずられないように。
Commented by saheizi-inokori at 2015-02-12 17:35
ジュ さん、小説のほうですか?
ご感想は?
Commented by saheizi-inokori at 2015-02-12 17:39
tona さん、 内藤正典「イスラム戦争 中東崩壊と欧米の敗北」http://pinhukuro.exblog.jp/22739966/
又は 国枝昌樹「イスラム国の正体」http://pinhukuro.exblog.jp/22741967/
などがお薦めです。
Commented by saheizi-inokori at 2015-02-12 17:41
sheri-sheri さん、ほんとですね。
悲しみの言いなりになってはダメですね。
Commented by at 2015-02-12 20:33 x
結局、昔の戦争の検証もせんと、臭いもんに蓋的社会を作って、で、どんぶり勘定がぜんぜん合わんで大事になっても、知らぬ存ぜぬ、そんで、マスコミで人を洗脳して、自分の血が流れん限り、痛みを感じん限り理解不能人間作成。
何もかも同じ構造。おおこわ、
それにしても この事件、とてつもなく深いかも、
Commented by tona at 2015-02-12 21:14 x
ありがとうございます。
Commented by saheizi-inokori at 2015-02-12 21:22
蛸さん、深いですとも。
世界史の始まりからの噺ですから。
Commented by unburro at 2015-02-13 00:16
〈世界は悲しみで満たされている。
でも悲しみの言うことに耳を傾けてはならない。
よだきいけれど、生きていくのだ。〉

そうですね。
悲しみにとらわれてはいけない。
怒りにとらわれてはいけない。
深い息をして、空を見上げる。
あゝ、めんどくさいことばっかりだけど、生きています。
Commented by sora at 2015-02-13 05:56 x
「徹底的に解体しなければ」
「標的になっているという自覚を持ち、自分の覚悟が....」
14年前から戦っても泥沼の米国を見ればわかるはず。
胡散くさい言葉です。 何を覚悟せよというのでしょうか。
 
きょうOCSから届いたので読みたいと思います。
「よだきい」けど 生きていく。 いい言葉ですね!  
 
Commented by saheizi-inokori at 2015-02-13 10:28
unburro さん、ストレッチをしていぬの散歩をしてきたら少し元気になりました。
イヌのためにもう少し生きてやろう。
Commented by saheizi-inokori at 2015-02-13 10:31
sora さん、まことに胡散臭い、根拠も無しに断定してみせるのがオカシイです。
イギリス情報部も怪しい。
Commented by ikuohasegawa at 2015-02-13 11:56
文春読みました。世界入手中です。
Commented by saheizi-inokori at 2015-02-13 12:52
ikuohasegawa さん、本屋の回し者みたいで恐縮です。
Commented by ジュ at 2015-02-14 11:26 x
全部です^^ 雑誌は人生の参考書でしょうか・・・。
Commented by saheizi-inokori at 2015-02-14 11:50
ジュ さん、たまにしか買わないけれど芥川賞よりも面白い記事があることが多いですね。
塩野七生のエッセイも示唆に富んでいました。
Commented by quietrose at 2015-02-15 08:21
おはようございます。文芸春秋買おうと思っていました。
賞をとった作品は、前は避けていましたが、今は、好んで読んでいます。中村文則さんや桜木紫乃さん、お勧めですよー。
Commented by saheizi-inokori at 2015-02-15 10:49
quietrose さん、私は習わしとして芥川賞の時だけ買うのですよ。
なんか時流を知るような気がします。
中村、桜木のときも読みました。
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by saheizi-inokori | 2015-02-12 12:36 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(19)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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