おせちに飽いたら 珍味と酒と人生と 杉浦日向子「ごくらくちんみ」
2015年 01月 03日
20年も前、社内駅伝大会にチームを率いて参加したことを思いだす。
自分だけのことじゃないと思うとふだんとは次元の違う走りができた。
一緒に練習しタスキをつないだ仲間、応援してくれた仲間とは今でもたまに飲む。
いぜん、目の前を走り抜ける選手の、あまりの美しさに驚いたことがある。
彼らも一生の宝物を得たのだろう。
だからというわけじゃないが、目で味わう珍味の数々。
「青ムロくさや」に始まり「たてがみさしみ」まで、67品目の珍味をイラストとショートショートのような情景入りで並べる。
男と女、女どうし、親子、、珍味は人生の難所に似合うのかもしれない。
「たたみいわし」には静岡の純米冷酒を手吹きの極薄グラスで。
「塩納豆」はざる豆腐と一緒にスプーンでしゃくって頬張る、そこへテキーラを一口含むと、大豆の甘味が草いきれのように、むわっと蘇える。野を疾る犬になった気分。さらにレモンスライスを皮ごとかじるとクールダウン。
「きんつば」は辛口の本醸造の熱々燗を湯のみにたっぷりそそいで。
「またたび」はカルバドスを口腔内で転がしながら。
「ふぐこぬかづけ」はドブロクを土ものの肉厚の湯のみに注いで。
「つくだに」は炊きあがったごはんを吹き冷まして。
酒と珍味と、どっちが主役でどっちが脇役か、お互いに引き立てあって、、まるで駅伝チームだ。
「うばい」「リエット」「ラルド」「もうかの星」「いぬごろし」「黒いブーダン」、未体験ゾーンの珍味がここまでおいでとさしまねく。
生と死について考える噺もあった。
日向子さん、今頃「ごくらく」で呑んで食って語っているのかな。
新潮社
こちら、雪に埋まっておりやすっ。
杉浦日向子は、家人くんがファンで、いく冊かは読みましたが、ご紹介のこの本、初めて知りました。
数分後には、家人くんと、Amazonへ捜しにゆく模様です。
今年もよろしくお願い致します。
話せる家人君ですなあ。
私もこの本は借り物、自分では買わなかったような本に思いがけない楽しみを見つけます。