ヒラメよりサンマが食べたい、昭和天皇の最初で最後の注文 谷部金次郎「昭和天皇と鰻茶漬」

昨日ははあちゃんとパパの誕生祝い、併せてたいちゃんが英検３級の祝いも、あちらの家で。
パパが料理、手巻き寿司がメイン、秋刀魚のナメロウは初めて食った。
赤穂の牡蠣を生で、小ぶりだがぷりぷりして引き締まった味わい、小粋な味。
小学校のサッカークラブで活躍中の写真も見せてもらう。
一年生だが二年生の試合にも出たそうだ。

中二のたいちゃんが、ある子のことを「頭いい」というから、「頭いいってどういうこと？」と訊いたら試験が良くできるってことだと。
記憶力がいいということが頭がイイこととは違うよ、と話してやったが、ご馳走の方に気が取られているなあ。

泊まっていかないの、と不満顔の二人に（とくにはあちゃん）、後ろ髪がひかれたがサンチも待ってるから、マタネ。
行きの電車の中で読み始めて着くまでに読んでしまった。

渡辺誠「昭和天皇のお食事」は洋食、こちらは和食、谷部の方が渡辺より先輩だが仲がいいらしく、どっちの本にもその名が出てくる。
渡辺は谷部の結婚披露宴の司会をしたとも。
そして二人とも昭和天皇の人柄に魅せられて深い尊敬の念と愛情をいだいていることがよく分かる。

どちらの本もＭさんから”おまかせ”で借りた本だ。
彼女、皇室に興味があるのか、それとも料理の方か。

来客のあったときとか公式の宴席はともかく、日常の昭和天皇皇后の食事は質素といってもいいかもしれない。
ただし食材は那須の御料牧場のものが多い。

せんじつテレビでちらっとカリフォルニアのアリス・ウォータース（スローフードの普及で有名）が高くても有機食品を使うのは大地を育てていると思うから、みたいなことを言ってた。
俺もその趣旨には賛成だが、高いことにはかなりマイリンタンカンパニーだ。
その点、御料牧場があるってことは、やっぱり天皇は恵まれている。
とはいえ、はあちゃんたちのように「これは炙って！」なんて生意気言っちゃあ、イカやらイサキやらサーモンをパパにバーナーで炙ってもらって塩とレモン、胡椒でウマイウマイと食うのは、断固オレッチのほうが恵まれている。

青魚や鰻が好物でも自分からは何を出してくれとは云わなかった（云えなかった？）天皇。
昭和６２年の手術の後、医師団から尋ねられて「白身の魚より、さんまやイワシが食べたい」といい、「中秋はいつか。団子を食べたい」とも言ったと書いている。
同年、九月十九日に谷部が作った夕食が昭和天皇の最後の食事であったが、不思議なことにこの日の献立の記憶がまったくないとも書いている。
昭和天皇の御大葬が済むと谷部は宮内庁を退職している。
次の職場を見つけて、ということではない、四十過ぎて五歳と三歳の子供、家のローンも残っていた。

やるべきことをやって、誠心誠意お仕えして、そしてそれ以上に有形無形の大きなものを陛下からいただいたのですから、悔いはありませんでした。

まさに本書の肩書に「陛下一代の料理番」とある通りだ。
本を貸してくださったＭさんはここを読めということかな。
文春文庫