読める、食べれる、続けれる、行ける、辞めれる、、ほら別にいいじゃん 永井愛「ら抜きの殺意」

中川安奈が亡くなったことを書いた。
その後もずっとNHKFMの「音楽遊覧飛行」では彼女のナレーションで「映画音楽」を放送している。
生きている人のように語りかけてくる。
ちょっと違和感もある。
ルイ・アームストロングの歌が流れて、彼も故人なのにこっちは違和感はない。
中川さん、まだこのあたりにいるのかな。
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今松の独演会を途中退場して蕎麦屋で読んだ本がこれ。

テアトル・エコー第105回公演の脚本だ。
健康器具の通信販売をしている、ちょっと怪しげな会社の事務所(兼倉庫)を舞台に

お調子者の社長・堀田。「アリゴザ」「チョーザのガンブーのメッシャー」「チョベリバ」、、コギャル言葉を頻発する。
その妻にして副社長・八重子。男言葉とジェンダー的言葉遣いをしない、夫妻ではなく妻夫、男女じゃなくて女男という。女言葉に命令形がないかとずっと探している。

夜間の電話オペレーターとして入社してきた中年男・海老名。「ら抜き」言葉が大嫌い、美しい日本語が乱れていくのを憂い、厳しく咎める。
スーパーバイザーの男・伴。「ら抜き」言葉に染まっているから海老名と激しく対立する。
伴の恋人・遠部。会話をすべて「って言うか」でつなげる。改まるとすべて「お」をつける珍妙な敬語をつかう。
「させていただきます」的過剰な丁寧語・謙譲語を海老名に叱正されて狂いそうになる。

昼間の電話オペレーター・宇藤。謙譲語、尊敬語(自分に使う)、丁寧語の区別がまったくできない。海老名に「ら抜き」言葉を電話中に注意されて狂いそうになる。
宇藤と遠部の会話はオソロシクも愉快、「って言うか」の多用をめぐって険悪な仲になる。

ほかにも話がまだるっこしくて何を言いたいのかわからない若者、こいつも面白い。
楽隠居決め込んでいたらバブルがはじけて金利が下がって早朝アルバイトのオッサン。
クレームつける変なガイジン。
テンポよく笑かせてくれる。

「犬も歩けば棒に当たる」で犬は喜んでいるか?
「気の置けない人」ってどんな人?
「役不足」って能力無いってこと?
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あとがきで永井が
友人に「今度の芝居見れそうもない」などと言われると、それでも来てほしいと思う前に、「見られそうもない」と言ってほしくなる。(略)
「ら抜き言葉」は一時はやって消えてゆくようなものとは違う。多くの人がごく自然に受け入れつつある言い回しの変化である。私は、私の大前提であった東京弁の根幹が変えられてゆく過程に立ち会っているのだ。それは、私自身をも変えられてしまうような戸惑いを引き起こす。私とは、私の発する言語だと言ってもいいだろうから。
と書いている。

俺は基本的には「ら抜き」ではない。
だが「ら抜き」にそれほどアレルギーはなくなっているし、時に自分でも使ってしまう。
考えているとどっちが正しいのか「決めれなく」なる。
俺の大前提は「いい加減」な言葉使い、人間がいい加減だから、遠部に近いのかも。

而立書房
Commented by doremi730 at 2014-11-12 12:33
つい「ら」抜きしている自分がいます。
Commented by saheizi-inokori at 2014-11-12 17:11
doremi730 さん、癖になっちゃうんですね。
Commented by 旭のキューです。 at 2014-11-12 18:22 x
見られそうにない→見れそうにない という感じですか!言葉は、難しい。
Commented by tona at 2014-11-12 20:17 x
私も「ら抜き」は好きではありません。がどちらが正しいかわからなくなることが同様にあります。
言葉は難しいです。この頃、自分で高校生のような悪い乱暴な言葉を使ってしまうことがあって、頬を叩きたくなります。
Commented by j-garden-hirasato at 2014-11-12 21:15
「ら抜き」言葉ということ自体、
全く意識していませんでした。
自然に染み付いている世代かもしれません。
でも、
自分は「見られない」と言うでしょう。
Commented by chaiyachaiya at 2014-11-12 21:39
私は、昔から、普通にら抜きLIFEを送って来た輩です。あなはずかし。改めようと思うのですが、既に、世の中が・・・。
Commented by saheizi-inokori at 2014-11-12 22:29
旭のキューです。さん、言葉は変化していきますからね。意味も変わるし。
Commented by saheizi-inokori at 2014-11-12 22:31
tona さん、乱暴な言葉も時と場合によっては自分の気持ちをうまく現せることもありますね。
そこが言葉の難しさでもあり面白さでもあるような。
Commented by saheizi-inokori at 2014-11-12 22:34
j-garden-hirasato さん、多分、今はら抜きの方が圧倒的に勢力をふるっているのでしょう。
それがこんな劇を生んだのでしょうね。

Commented by saheizi-inokori at 2014-11-12 22:36
chaiyachaiya さん、「認められない」は「認めれない」より使いやすいけれど「見れない」「食べれない」「来れない」はもう圧倒的勢力でしょう。
Commented by wawa38 at 2014-11-12 23:39
ら抜き、話すときは意識しないで使っています。
文章では迷います。あまり使いたくなくて。どちらがいいか分からないときは「見ることが出来ない」などとするときも。
今どき、くどいでしょうかねぇ。
Commented by at 2014-11-13 06:50 x
「あんなの(芝居)は見られたもんじゃござんせん」
なんていうのが粋なハナシぶりなんですかね。
古典落語は原則として「ら抜き」厳禁でしょうか?
Commented by ikuohasegawa at 2014-11-13 07:59
書くときは結構意識しています。
話しているときはどうだかなー。
Commented by LiberaJoy at 2014-11-13 08:39
ぼくも「ら」抜きことばは使いたくありませんが……ことばは変化していくものである以上、許容するしかないでしょう。でも、書きことばでは、絶対だめです。
ら抜き以上に、だめなのは、B1Fという表現。Fはフロアの省略形なのだ~ァと、怒鳴りたくなります。辞書を引け!!
Commented by saheizi-inokori at 2014-11-13 09:57
wawa38 さん、「ラあり」が文語化している?そんな傾向もあるかもしれないですね。
「考える」「認める」のような4字には「られる」が自然につけやすいような、逆に「考えれない」が言いにくいような気もします。
Commented by saheizi-inokori at 2014-11-13 09:59
福さん、たしかにその用例で「みれたものじゃない」は「聞けたもんじゃない」です。
落語家の噺ぶり、今度注意してみましょう。
ホリイに調べてもらおうか^^。
Commented by saheizi-inokori at 2014-11-13 10:02
ikuohasegawa さん、私は、話すときって相手に合わせたしゃべりになります。
コギャル言葉や、しり上がりイントネーションなどもときどき、地方の人と方言で話すのも楽しい(向こうはどう思うかはともかく)です。
Commented by saheizi-inokori at 2014-11-13 10:04
LiberaJoy さん、地下一階をB1Fとは案内図に載ってませんか。
喋るときは使わない、たまに「びーわん」というかな。
Commented by sakurapipp at 2014-11-13 11:49
最近でしたが、シャンプーのコマーシャルで
嵐の櫻井君が「からまらない」と言ったのを聞いて
何となく違和感を覚えたので、娘に言ったら「からまらない」は正しく、お母さんが考えてる「からまない」は「ら抜き」でございます!と言われた。
快い音の感じっていうのもあるかな~?難しいですね。
Commented by unburro at 2014-11-13 11:53
永井愛は、凄いというか怖いというか…
二兎社の舞台を見たい見たい、と思いながら未だ果たせずにいます。
Commented by saheizi-inokori at 2014-11-13 12:28
sakurapipp さん、それは、「絡む」の否定だと「絡まない」で、「絡まる」の否定だと「絡まらない」ではないのかなあ。
「新明解」には両方載ってます。
私も「絡み」派です^^。
酔っても絡みませんが。
Commented by saheizi-inokori at 2014-11-13 12:29
unburro さん、本書を貸してくれた方は永井のサインをしてもらっています。
カッコイイなあ^^。
Commented by sakurapipp at 2014-11-13 18:03
ということは「はさむ」「はさまる」とか「つかむ」「つかまる」もそうなんでしょうか?
なんだか、すっきりしました。ありがとうございます!
娘に「どや顔」で言ってみます(笑)
どうやら、こうやってリコメントする私も「絡み」派のようです^^。
Commented by saheizi-inokori at 2014-11-13 20:53
sakurapipp さん、そうですね。
ただ、「はさまられる」とか「つかまられる」などは使いにくい言い方になってるような気がします。
Commented by 熊伍朗 at 2014-11-13 21:00 x
いやあ・・・私は「ら」抜き言葉が気になって仕方ありません。
生徒の前でもそうですが、時々、外国人に日本語を教えていることもあって、常に正しい日本語を話さないといけないという緊張感を持って生活しています。
それはそれで疲れるのですけれどもね・・・。(^^;

Commented by saheizi-inokori at 2014-11-13 21:33
熊伍朗さん、「考えられる」は「考えれる」とは言いにくいのに「食べれる」はついついいってしまうのですねえ。
Commented by poirier_AAA at 2014-11-13 23:26
「ら抜き」は基本的には苦手で「食べれる」なんて絶対に言いたくないのですけど、「行ける」は相手にあわせてひょっと使ってしまうことがあるので、あんまり人のことは言えないのです。
Commented by saheizi-inokori at 2014-11-14 09:46
poirierさん、ぽろっと出がちなのが「来れる」「見れる」あたりかな。
「考えれる」は逆に言いにくいですね。
Commented by ほめ・く at 2014-11-15 17:08 x
永井愛の芝居は好きで出来るだけ観るようにしてます(この脚本は未見)。どんな芝居でも人間を見る目が温かいんです。やはり父親の永井画伯の影響でしょうか。
「ら」抜きは不快ですね。かつてはいちいち注意してましたが、もう疲れるのでやめましたけど。
Commented by saheizi-inokori at 2014-11-15 20:25
ほめ・くさん、注意するのもやってらんない、ですか。
これは「ら」が入ってますね^^。
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by saheizi-inokori | 2014-11-12 11:42 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(30)

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