人生の最後で最大の希望は何なの? トマス・H・クック「ローラ・フェイとの最後の会話」
2014年 10月 14日
人が読んでいると俺も、って子供みたいだ。
この作家は「緋色の記憶」「夏草の記憶」「沼地の記憶」、、記憶シリーズを読んだきりだ。
そこにいたのは場違いと思われる女、20年前にアラバマの「死にかけた田舎町」・グレンヴィルでルークの父とスキャンダルがあった女・ローラ・フェイだった。
ルークの父は彼女との仲を疑った元夫に射殺され母はその心労もあって早世する。
グレンヴィルから脱出して世界を驚嘆させるような作品を書こうとハーヴァードに進んだルークだった。
そんな過去からやって来た女に気づいたルークは
毒蛇の入った駕籠を渡されたような気がした。蛇が這いまわり、籠の破れ目を探している音が聞こえるかのようだった。それなのに「わたしたち、話すことがたくさんあるんじゃないかしら?」といわれて、ホテルのラウンジでピノ・ノワールとアップルティー二というウオッカベースのカクテルを何杯も飲みながら交わす会話、それにつれてルークが思いだす過去のことがこの小説のすべてだ。
懐かしい映画やテレビ番組の名前が頻出する無心奔放とも思える彼女の言葉は20年前の事実に違った照明をあてる。
ルークはいやおうなく自身の過去のさまざまな場面を思いかえす。
(虚栄心ゆえに嘘をついたことを思い出して)そう思うと、わたしは妙に自分が空虚になっていくような気がした。あたかもローラ・フェイにアイスピックで突き刺され、その穴から自分が永久にもれつづけることになったかのように。自分が直視しようとしなかった事実が再提示されると(俺はそういうことの毎日だ)「血液に毒が注ぎ込まれているような感じがして、その焼けつくような一瞬に、人生の現実の厳粛な、妙に人を駆り立てるような感覚に囚われる」、これも俺のことかと思う。
いつもルールを外れた生き方をして、それを正当化してきたのかもしれないとルークはいうのだ。
南部ゴシック。暗い秘密のある家族。父と息子のあいだの戦い。利己主義。貪欲。暴力。過去からの負の遺産。高すぎて払えないのに、どんどん送られてくる過去の請求書ルークが二人の会話を形容した言葉だ。
愚かな選択の長い連鎖が、どっと押し寄せた希望と夢がすべてを押し流してしまったのだ。
人生の最後で最大の希望は何なの?ルークはその答えを見つける。
それが救いだ。
どうもこのところ身につまされる本を読むなあ。
何を読んでもそういうところにひっかかるのかもしれないが。
村松潔 訳
ハヤカワ文庫
ルークの最後の希望は、何だったのか?知りたい。
そしてルークは別れた妻ととともにグレンヴィルに戻ります。
「退屈な教師」と陰口をきかれていた大学教師をやめて、ほんとに書きたかった小説、それは工場の労働者やパルプ材の運搬者、戦争や大恐慌を生き抜いたわが地方のふつうの人たちについてちょっとした回想記を書こうと思うのでした。
潔白だったけれど今は身体を悪くしたローラ・フェイも一緒に暮らすのです。「失われたものの伝説」のDVDをいっしょに見るところで小説は終わります。
読書感想の中のsaheiziさんの一言やつぶやきにsaheiziさんの人間味を感じる時が有ります。近かったり、大きかったり、優しかったり、もろもろ。本を知る事もですがーーーいいね!!
自然と共に生きた縄文人が、今の体たらくを見たら、本当に呆れてしまうでしょうね。
なんで不毛の争いばかりしたがるのだと。
こちらはどうやったらいい終り方になるのか^^。