金沢八景アウトレットでヨットを見ながらお握りを食った

カミさんの買い物に付き合って横浜・金沢八景のアウトレットに。
親戚の結婚式によばれたは好いが、着ていくものがない。
あちこち見て歩いたけれど高いか気に入らないものばかり、レンタルも高いうえにあまり種類がない。
そうだ、アウトレットがあった、というわけ。
我が家から４０分、思ったより近い。
マリーナに面したデッキのベンチで持って行ったお握りを食う、そよ風が調味料。
サンチは見るだけ。
連休になると混むのだろうが、今は空いている。
小さな坊やを連れてきたおじいさんがベンチに寝転がったり、お母さんと来た坊や（一歳）がサンチをこわごわ撫ぜてくれる。
さいしょに行った店でドンピシャ、値段は半額、他にも使いまわしが利きそうなお気に入りを見つけてあとは余裕で見て歩く。
俺も踵をつぶして履けるニューバランスのスニーカーを買う。
これは！と食指が動いたジャケットは値札を見ると一桁違う、いくら７０パーセントオフでも手が出ない。
帰りに俺だけ等々力で降りて本屋による。
週刊金曜日とついでに週刊新潮を買う。
「戦後民主主義の終焉、そして人間が侮辱される社会へ」という大見出しで「追い詰められた情況の中で」と題した、辺見庸と佐高信の対談。

田原総一朗をはじめとするいわゆるジャーナリスト、拡大していえば大江健三郎みたいな人も含めた「良心的な知識人」たちが、いや、だれより私自身なのですが、いま、自分で匕首を自分の喉もとにつきつけて話すくらいの覚悟はいると思います（辺見）。

マルクスより魯迅を読むべきだったと思う。戦後左翼のいちばんの欠点を自分にひきつけて言うとね。疎外とか何とか、社会的矛盾が内面化されていない。魯迅は、単純化していえば、報復の論理です。刺し違えるんだと。その意思がないまま、現状分析がどうだとかそういう話になる。それは個の外側にあるものなんですよ（佐高）。

天皇の特集なんかをしている朝日新聞など信用しない、

ひとりで、とことん、やるのか、死ぬ気でやるのか、そこまで追い詰められているはずですよ、今の情況は（辺見）。

と、アウトレットに行ってるバヤイじゃないってか。
（岩手県西和賀、深澤晟雄村長を輩出した沢内村の菓子を近所の店で見つけた）

パン屋によって頼んでおいた食パンを受け取って、「赤いシャツ、似合うじゃないですか」「年寄りは目立たないと危ないからね」などと軽口を叩きあい外に出ると「居残りさん！」と大きな声で呼ぶ人がいる。
宅急便配達のオジサンが車の中から笑って「あまり天気がいいから暑くて参っちゃいます」。

パン屋のオバサンや佐川のオジサンと顔なじみになって声をかけあうって悪くない。

パンのみにあらずだなんて
うそよ。
パンをおいしく食べることが文化だわ。
まずパンね、それからわたしはかんがえる。

長田弘「食卓一期一会」から「イタリアの女が教えてくれたこと」の末尾だ。

さてさて、辺見さんを苛立たせる隠居也。