林家花は「透明人間」をどう切り抜いたか 末廣亭中席昼の部

友人に誘われて末廣亭に、芸協を聴きたかったので。
月曜日の12時には20人ほどの客だったがだんだん埋まりだして中入り後には椅子席はほぼ満員、芸人たちが何度も『暇な、ありがたい方たち』と。
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(桜新町)
18組の出演者について順に書いてもしょうがないような気がするので、印象に残った人のことだけ。

漫才二組、東京平・京丸東京ボーイズ
どちらも久しぶりだが、みるたびに「年を取ったなあ」と思う。
ということは俺も久しぶりに会う人を驚かせているのかとも。

京平・京丸、ギャグを言っては「ちゃんちゃらちゃらちゃら」と二人でくるっと回る。
始めは受けない、「笑わないなあ、そこの3人連れの後ろからが笑わない、笑ってください」、「お願い漫才だね」といいながら、徐々に笑いを引き出す。
まるで薪で火を熾すときのようだ。
ちろちろと燃え上がるのが快い。

東京ボーイズ、物まねをやると言って、徳川家康を石破茂、織田信長を安倍晋三、秀吉を鈴木宗夫、頼朝を麻生がやる瞬間芸。
なに、石破や宗夫のマネなのだが、麻生の感じがよく出ていた。
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松鯉「河内山宗俊・玉子のゆすり」
生玉子を買いに来た宗俊、ふところに茹で卵を忍ばせて、それをこっそり売り物の上に出したのち、わざと見つかるように懐にしまう。
盗人呼ばわりをされると茹で卵を割って見せて、強請るのだ。

笑三「てれすこ」
誰も名前を知らない珍魚、その名を分かったものには百両の褒美を取らすとの高札、茂兵衛なるずるがしこい男、それは「テレスコ」にござります。
奉行は臭いと思ったが百両をやり、こんどはその魚を割いて干物にして、もう一度百両の懸賞金の高札。
茂兵衛、よせばいいのに(ここを笑三、繰り返してはいろいろギャグを突っ込む)まかり出て「ステレンキョウ」にござります。
尻尾を出しやがった、と茂兵衛は入牢、打ち首を宣告される。
さいごの願いで妻と面会した茂兵衛は「息子が大きくなっても干したイカをスルメといわすな」と奉行に聞こえるように言う。
一本取られた奉行、無罪とし百両をつかわした。

噺は知っていたが高座で聴くのは初めてかも。
大した噺ではない、中にギャグをどうはさむかが腕の見せ所、トイレ帰りの俺は後ろで立ったまま聴いたので笑三が屈んで声をひそめて話すギャグが聞き取りにくかった。

前に紹介した平岡正明「大落語」(下)では、「テレスコ」は「テレスコープ」、「ステレンキョウ」は「ステレオ鏡(立体鏡)」、長崎の噺だろう、噺の作者がつまらない噺を作ったのは江戸が崩壊しつつある兆しだという。
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米丸、今月89才、東西落語会最高齢、膝が痛むからとアナウンスがあって明るいグレーのスーツにピンクのネクタイで立ち高座。
病院点描などの漫談。

林家 花・紙切り
「透明人間」の注文に「性格悪いと言われてないか」「透明人間は男性がいいか女性がいいか?(女性と答えると)あら、残念男性にしちゃった」などと会場との毒舌入りのやり取りが美形とあいまって面白い。
透明人間?なあに足跡を切り抜いた。
歌丸の美点を真面目に三つ挙げて火星人のような歌丸を切り抜いた。

桃太郎・「結婚相談所」
「代書屋」と似た趣向で、結婚相談に来た男がトンチンカンなことばかりいう。
「お名前は?」「オボカタネツゾウ」、「郵便番号は?」「ルート18」、英語が特技と聞き、では「新宿は?」「ニューホテル」、、といった類を無表情に続ける、桃太郎節。
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ぶらぶら歩いて荒木町「ととや」、ここも久しぶり。
伴助サバの干物が健在なりき。

ゆるゆる寄席にゆるゆる酒、許されて幸せ。
Commented by 小言幸兵衛 at 2014-04-15 12:55 x
おや、末広亭はお久しぶりですよねぇ。
米丸、座れませんでしたか。
そう考える笑三は凄い。
桃ちゃんのトリだったんですね。あのネタは可笑しい。
「ととや」、ぜひそのうちご一緒したいものです。サバの干物大好物!
Commented by unburro at 2014-04-15 13:20
最近、寄席の番組を見ないな、と思って調べてみたら、西の方では三重テレビだけが放送しているらしいです。見られないはずだ・・・。
子どもの頃、「お茶の間寄席」とか、祖母と一緒によく見ていました。
紙切りが好きで、真似をしては紙を切り刻んで怒られていました。
立ったままで、紙を回して切る様子が、カッコよく見えたものです。
Commented by at 2014-04-15 13:21 x
サバ三昧、やってみたい!
Commented by saheizi-inokori at 2014-04-15 15:43
小言幸兵衛さん、やっぱり寄席空間としては末廣は抜群ですね。
「ととや」ご存知でしたか、懐メロのBGMもイイですよ、よっしーが喜ぶかも。
Commented by saheizi-inokori at 2014-04-15 15:46
unburro さん、機智頓智が手先の器用さと両立してないと紙切りは面白くないですね。
寄席番組中継をラジオできいた少年時代です。
Commented by saheizi-inokori at 2014-04-15 15:47
蛸さん、しめ鯖もイイですが、脂の乗った干物は酒のつまみにはもってこいです。
Commented by maru33340 at 2014-04-15 18:49
末廣で昼の芸協というのは、なんともゆるゆるしていて良いですね。
紙切り気になります。
Commented by tona at 2014-04-15 19:44 x
>久しぶりに会う人を驚かせているのかとも
そうなのですよね。大学のクラス会は毎年あるのでみんな昔の儘ですが、高校の方は昨年10何年振りで、男性に「凄い婆になったね」と言われそうで躊躇してしまいました。結局日にちが指定される大病院優先でしたから行きませんでしたが、次の80代では出かけられそうにありません。
Commented by saheizi-inokori at 2014-04-15 22:53
maru33340 さん、花、未見ですか、面白いですよ。
紙切りそのものはいまいちかも。
鼎という店を憶えていますか。
Commented by saheizi-inokori at 2014-04-15 22:55
tona さん、私も同窓会とか同級会とかでなくなってしまいました。
それは「すごいジジイになったね」といわれるのを恐れるからではなく面倒になっただけですが^^。
Commented by reikogogogo at 2014-04-16 06:13
花見に、寄席、荒木町で一寸一杯、いいな〜。
同行したい1日コースの道行き。
Commented by maru33340 at 2014-04-16 07:49
花(花子ではなく)気になりますね。鼎覚えています。また行きたいです。
Commented by saheizi-inokori at 2014-04-16 09:59
reikogogogo さん、はとバスならぬ梟歩きです。
Commented by saheizi-inokori at 2014-04-16 10:00
maru33340 さん、東京にいらしたときにでも?
Commented by maru33340 at 2014-04-17 06:04
さへいじさん
是非「末廣」帰りに行きたいものです。
Commented by saheizi-inokori at 2014-04-17 09:29
maru33340 さん、いいですね、ってどっち?鼎orととや?^^。
Commented by ほめ・く at 2014-04-17 09:58 x
米丸の入門翌年に真打昇進という記録はこれからも破れません。
私服は常に白っぽいスーツにピンクのネクタイで、仕立ては全て伊勢丹とか。今でもダンディですね。真似は出来ないなぁ。
Commented by saheizi-inokori at 2014-04-17 11:07
ほめ・くさん、スリムだし立ち姿もいい。
粋ですね。
Commented by 創塁パパ at 2014-04-20 08:25 x
あれま。ととやですね。最近行ってないけど。昔は常連でした((笑)
Commented by saheizi-inokori at 2014-04-20 12:12
創塁パパ さん、破れかけた提灯がぶら下がっていた前の店は独特の名店でした。
懐メロは今でもやってますがちょっと雰囲気は変わりました。
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by saheizi-inokori | 2014-04-15 12:33 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(20)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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