読み応えありすぎ   「荊の城」(上下) サラ・ウオ-ターズ (創元推理文庫)


「半身」で19世紀後半のイギリス上流社会と刑務所を舞台に二人の若き女性の妖しくも数奇な物語に、うならされた。同じ著者の、同じ時代の、同じイギリスの、同じく二人の若い女性の・・と来れば”同工異曲?”と早とちりするかもしれない。読んでそういう退屈さは全く感じない。著者の腕は一層冴えて”ミステリ”としての謎の面白さを十分に堪能させながら、前作以上の妖しいエロスとスリルに富んだ物語になっている。

今度は下層社会が主な舞台。まるでタイムトラベルをしたように目の前に活き活きと描写される。貧しさのなかで人間性を失ったかのごとく犯罪に手を染めて生きざるを得ない人の中にきっちり残っている愛ー自己犠牲の心。

ストーリー展開が、一本調子ではなく、ハラハラどきどきの場面転換があるかと思うと、これでもか、これでもかと、細密な状況描写・心理描写がある。結構長い。この部分をゆっくりと読み込んでいかないとこの小説の魅力は半減すると思う。短い文章で断片を一つひとつ描いていくことで場面の迫力を感じさせるのだ。


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by saheizi-inokori | 2005-07-17 09:26 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(0)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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