あのスマイリーの末裔はイギリスと戦うのだ ジョン・ル・カレ「われらが背きし者」
2014年 02月 04日
イギリス諜報部の経験もある作家が描く対ソスパイ戦争がリアルに描かれるのが魅力だった。
007などとは対照的に派手なアクションはなく冴えない男が数少ない信頼できる部下と敵の正体を突き止めようとするのだ。
すでに敵はソ連ではない。
むしろロシアも含めてイギリス内部に巣くう政治家・財界人などの大物だ。
コロンビア、コンゴ、アフガニスタン、、文字にするのもおぞましいような虐殺が行われる、そこから汚れた金が何百億と出てくる、真っ黒い金、世界経済の何分の一かといえるオーダーのカネ。
バックにアメリカがいてイギリスも黙ってみている、懐を肥やす連中がいる、汚いカネであろうとロンドンに入ってきたらイギリスは潤う。
ロシアの新興財閥、マネーロンダラー、マフイアと手を組む悪党紳士たち。
30歳目前、スポーツ万能、オックスフォード大学のチューターの職を辞して中学教師になろうと考えているペリーと超美人で有能な弁護士のゲイルはカリブ海のアンティグア島で生涯一度の贅沢な休日を過ごす。
テニスの試合を申し込んできたのはロシアのナンバーワン・マネーロンダラー・ディマだ。
旧ソ連で母親を救うために殺人を犯したディマは苛酷な囚人生活の中で犯罪者たちのボスの仲間に入っていたが新しいトップに命を狙われている。
悪者ディマは魅力的な男なのだ。
その家族も。
ペリーとゲイルはディマのイギリスとの取引の仲介に引き込まれる。
ディマの情報をもとにすればイギリスの巨悪が暴かれる。
だがしかし、諜報部といえども官僚集団なのだ。
うかつに情報をあげると後ろから鉄砲。
イギリス諜報部にも硬骨漢はいた。
変人ともいえる硬骨・反骨の男とチームを組む男二人女一人、そこにペリーとゲイルが加わる。
スマイリー三部作のような緊密なストーリー、細部にわたる臨場感などは既にない。
ただあの三部作の名残を懐かしむことはできる。
諜報部が自国の官僚を含めた巨悪と対峙するのは自己撞着みたいなものかもしれない。
秘密保護法なんてのもあるだろうしな。
上岡伸雄・上杉隼人 訳
岩波書店
笑えるのsaheiziさん、生きてる気力がなくなったときに本で助けてもらいますーーー(笑)。私は一寸体調が下降気味で,昼間から横に成りたい時は本を手にしていますよ。
だから同じ本を2度読みする事、しばしばです。だから原作者と翻訳者と間違えてる事もありです。
スマイリーシリーズはいけますよ。
高村薫も書いてますね。私はもうちょっと肩の力が抜けるのが好きですが。
ショーン・コネリーが格好良かったです。
「寒い国、、」も読みましたが今読み直したら初めてと思うかもしれないです。